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予定外の来客

 食事の席は、大らかなダグラス老の人柄もあってか楽しい席のまま終盤を迎えた。今は大人組にはコーヒーが、双子にはミルクたっぷりのココアが供されている。

 食後のまったりとした時間の中で、カイルがあっ!と声を上げた。それからうずうずとした様子でダグラス老を窺い見る。

 どうかしたのかい? と穏やかな声で尋ねられて、カイルはうっすらと頬を上気させながらも口を開いた。


 「あのね、父さんが、ここにはオレの好きそうな物があるって」


 ふむ。ダグラス老が顎に手を当てて思案する。数拍の間を置いて、納得する物を思いついたのか自慢気に口角を上げた。


 「確かにあるよ。早々お目にかかれん代物が」

 「! それって、見せてもらえるっ?」


 カイルの声が俄かに弾む。素直な反応に、ダグラス老は勿論と満面の笑みで頷いた。

 --その時だ。

 不意に、ホールの外から人の話す声が聞こえた。使用人たちの声かとも思ったが、ダグラスの様子を見る限り違うらしい。

 優しく和まされていた目が怪訝そうに細められる。控えていた給仕係が、状況を確認すべく退室した。


 「今日は来客は無いはずなのだがなぁ……」


 そうは言うけれど、話し声はだんだんとホールに近づいてきている。ダグラス老は渋々重い腰を上げた。

 ダグラス老がドアに足を向ければ、図ったかのように開け放たれる。人を伴って現れた影に、瑞希はあら、と小さく零した。


 「ああ、ダグラス殿、此方にいらしたのか。急な来訪で申し訳ないけれど、少しいいだろうか」


 伺うような言い方ではあるが異議を拒む口ぶりに、はぁ、とダグラス老が溜め息に近い気のない返事をする。


 「なら、せめて場所を変えて頂けますかな。あいにく今は来客中でして」

 「来客? ----あれ、君は……」


 ようやく気付いた彼は、華やかな顔立ちをふわりと綻ばせた。

 ダグラス老を通り過ぎ近づいてくる彼に、瑞希も立ち上がり数歩歩み出る。


 「ミズキじゃないか。まさかこんなに早く会えるなんて思ってもみなかったよ」

 「えと、シドさん……でした、よね? 先ほどぶりです。あの時はありがとうございました」


 瑞希が微笑を貼り付けて応じる。

 シドはどうしてか一瞬目を丸くしたが、すぐに喜色満面と目を細めた。


 「母さん、知り合い?」


 声さえ強張らせて警戒態勢に入ったカイルが問う。ライラも、声こそ出さないが落ち着かなさそうに忙しなく目を動かしていた。

 ダグラス老も、アーサーとルルも少なからず驚いてはいるのだろう。関係性を探ろうと眇められた目に、瑞希は妙に気まずいものを感じた。


 「コンテストの時に、少し助けて頂いたのよ」


 言い訳のように早口で答えれば、カイルは観察するような目をシドに向けた。対するシドは、大したことはしていないと戯けるように肩を竦めている。

 悪人ではないのだろう。母の対応からもそれは伺える。けれど、けれども。


 「なぁんか、…………チャラいわねぇ」


 姉のはっきりした物言いに、カイルは全面的に同意した。

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