似た者同士
ダートンの言った通り、オーウェンは確かに器用な手先をしていた。みるみるうちに願った通りの網が目の前で完成させられていくのを見て、見事なものだと思いながら見守った。
手渡された完成品をしかと受け止め、細工が機能するかを確かめる。
「……確かに。ありがとうございます」
深々と顔を下げる瑞希に、一仕事終えたオーウェンはやりきったと晴れやかな顔で頭を下げ返した。
「初めは驚いたが、望み通りに仕上がったようでなによりだ……いえ、です」
取って付けたような敬語に、思わずくすりと小さな笑みが零れる。
ダートンは呆れた目でオーウェンを見ていたが、瑞希としては変に肩肘張られる方が嫌だった。
「もし次がありましたら、是非自分に」
あははと笑いながら自分を売り込んだオーウェンに、ダートンがいよいよ拳骨を食らわせにかかる。ごちんと良い音がして、それが本気のものではないと知りながらオーウェンは大袈裟に痛がってみせるものだから、瑞希は堪らず声を上げた。
「ダートンさん!オーウェンさんも、落ち着いてください!」
ぴしゃんと声を張って窘める瑞希に、二人は揃って体を跳ねさせた。そして、そろそろと瑞希を窺い見る。
瑞希は、いつも大きな目を和ませて微笑んでいるのとは真逆に、きっと眦を釣り上げて二人を見ていた。
「ミ、ミズキ……」
すっかり勢いをなくしたダートンの声にもう一度目に込める力を強くして、それからまったくとぼやきながら上げていた肩を下ろした。
「お二人の仲の良さは十分にわかりましたから。拳じゃなくて言葉で語り合ってください」
さっきはそうしていたように、と言って言葉を結べば、今度はダートンの顔が真っ赤に染まる。
オーウェンも思い出したのか、赤い顔を下向けてそわそわと落ち着きをなくした。
結局、この二人は本質的なところで似ているのだ。
師弟揃って機嫌を伺うような、申し訳なさそうな眼差しで見上げてきて、瑞希は内心苦笑を禁じ得ない。
「さて、この話はここまでです。お二人とも、お忙しい中本当にありがとうございます。もしお店にいらした際にはお勉強させて頂きますね」
にっこりと笑みを浮かべて話を切り替えると、二人はあからさまにホッとした様子で勿論だと大きく頷いた。
頼んだ網と、細工代として幾らかを上乗せして支払う。自分はまだ見習いだから受け取れないと主張するオーウェンに、瑞希は笑顔のまま頑として聞き入れず、しっかりと握らせた。
困り果てた様子のオーウェンの隣でひらひらとダートンが手をひらつかせる。
「気ぃ付けて帰れよ」
そう見送られる言葉に会釈して応え、瑞希は鍛冶場を後にした。




