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お店のイメージ

 最早恒例となった宴は、瑞希が薬屋として店を持つと決めたことで一段と賑やかなものになった。気の早いものは善は急げとばかりに早速家を作り変えようと言い出したりして、みんなが瑞希の開業を喜んだ。あまりにも諸手を挙げて祝われるものだから、あんなに悩んでいたのが馬鹿みたいだと瑞希でさえ思ったほどだ。


 ちびちびとワインを飲みながら、店をどんな風にしようかと瑞希は考えていた。

 薬草を干したりするから、棚や机は多めに用意しなければならない。高齢者や身体を痛めてしまっている人が店まで来るのは骨が折れるだろうから、時々は露天商も必要だろう。

 思いついたことを次々と箇条書きにしてまとめていく。今だけでもこれだけあるのだから、まだまだ改善する箇所は多そうだ。


「ねえミズキ、ミズキはどんなお店にしたいの?」


 メモを覗き込んでいたルルが瑞希に聞いた。

 どんな店だろう。瑞希はメモに視線を下ろした。

 瑞希にとって薬屋は病院などの処方箋(しょほうせん)を受け付けるところだ。それ以外にも健康促進食品だとかも置いている。あまり病気に(かか)らない瑞希には馴染みのない場所だった。


「ルルは、どんなお店がいいと思う?」

「アタシ? そうだなぁ……明るくて、風通しの良いお店がいいわ」


 なるほど、と一つ頷いてルルの要望もメモに(したた)める。

 瑞希は一度、客の立場として店を考えてみた。


 ルルの言う通り、明るくて風通しが良いというのは大切な項目だと思う。陰鬱(いんうつ)な店に入りたくないと思うのは誰しもだろう。それが薬という苦味の強いものを売る店なら余計に、雰囲気だけでも明るい方がいいだろう。

 となると、混雑した時に休める長椅子(ながいす)だとかもあった方がいいだろう。街から離れているから来客者は疲れているだろうから、サービスとしてお茶を出すのも良いかもしれない。至れり尽くせりなイメージではあるが、遠いのにも関わらず来て貰うのだからそのくらいしたって罰は当たらないだろう。


 少し視点を変えただけでメモはあっという間に文字に埋め尽くされた。書き出したことを全て実現するのは難しいだろうが、できることも少なくないはずだ。


「お店、楽しみね」

「そうだね、きっと忙しくなるよ。ルル、これからも手伝ってくれる?」

「もちろんよ!」


 任せなさい! と張り切るルルに瑞希は柔らかく相好を崩した。

 これからたくさんの準備をしなければならない。それは大変だろうけど、その分期待も多い。

 頑張ろう。瑞希はもう一度誰にともなく呟いた。

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