表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/478

初めての冬

 瑞希の朝は早い。今日も陽が昇り切るより早く目を覚ました。

 店は朝の九時開始だからまだまだ時間はあるのだが、それまでにやることはたくさんあるのだ。

 この世界にやってきて初めて迎える冬は、とにかく寒いの一言に尽きる。なにせ、地球では散々お世話になった暖房器具がないのだ。

 今日も、一番に起き出した瑞希は分厚いブランケットに身を包んで、一階のリビングへと降りていく。夜に焚いたままにしていた暖炉も、夜中のうちにすっかり燃え尽きてしまっている。

 ランプの火を移し分けて暖炉を焚き直し、瑞希はひんやりとしたキッチンに立った。寒い時期こそ温かい朝食が大事なのだと、地球で母に再三言われてきたのだ。

 ブロッコリーととうもろこし、ベーコンを角切りにして炒める。それから鍋に移して牛乳を加え、コンソメで味を整える。

 スープを煮込んでいる間にはパスタを茹でてていく。程良い硬さになったら湯上げして、玉ねぎたっぷりのミートソースと絡めながら炒めた。

 キッチンからふんわりと美味しそうな匂いがし始めて、ようやく他の家族達が起き出してくる。


 「おはよう、アーサー」

 「おはよう、ミズキ。今日も早いな」


 しっかりと身支度も整えてやってきたアーサーはあくせくと動いている瑞希を認めると少しだけ目元を和ませた。

 それから思い立ったようにキッチンへと入り、食器棚からティーセットを取り出した。


 「ストレートでいいか?」

 「わ、ありがとう。えっと……うん、アーサーにお任せするわ」


 特に希望もないのでそう言うと、アーサーは迷いなく茶葉を手に取った。汲みたての水を沸騰させて、丁寧に準備を整えていく。

 瑞希もよく紅茶を飲むのだが、アーサーの淹れた紅茶は格別美味しくて大好きなのだ。


 「何度見ても不思議だわ。淹れ方は同じはずなのに……」


 ひょっこりとアーサーの手元を覗き込むが、やはり自分との違いは見つからない。頭上で、くすりとアーサーの笑う声がした。


 「ひとつくらい、敵うものがあってもいいだろう?」

 「ひとつどころじゃないと思うんだけど……」


 瑞希が少しだけ拗ねたようにすると、アーサーはまたくすくすと笑った。

 その時、階段を下る軽い音がした。キッチンから顔を覗かせてみると、思った通り子供達の姿があった。


 「ミズキ、おはよー」

 「おはよう」


 陽気なルルと、物静かなライラの声に、瑞希は穏やかな微笑を浮かべながら挨拶を返す。

 ライラのすぐ後ろには半分寝ているカイルがいて、その足元には冬毛でもふもふ度割り増しになったモチがいた。


 「カイル、モチもおはよう」

 「ぅ〜…………ぁ、よぉ…………」


 カイルはなんとか口を開くも、ほとんど声になっていない。双子なのに、寝起きは全然違うなぁと瑞希は笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ