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事の顛末

 「昨日の領兵共だがな、ヒューイットの若造と、薬売りの連中が手を組んで起こしたらしい。ヒューイットの狙いは、アーサーだったようだがな」


 ロバートの話に瑞希はただただ驚いていた。一方で、アーサーは不穏な動きがあると前もって耳にしていたから、やはりそうかと思っていた。

 薬屋 《フェアリー・ファーマシー》は、よく効く薬を安価で販売している。薬草園で自家栽培していることもあり、供給量も安定しているからとリピーターが多かった。

 ほとんどの薬屋は薬草を問屋から卸しているため割高だったが故のことなのだが、顧客がどんどんと《フェアリー・ファーマシー》に流れていく事態に焦燥や鬱憤(うっぷん)を溜め込んでいたらしい。

 そこに、アーサーに返り討ちにされフラストレーションを抱えたマース=ヒューイットが現れた。ヒューイットは金に物を言わせて領兵の下っ端を抱え込み、アーサーに一泡吹かせてやろうと薬屋達と結託した。

 その結果、昨日の騒動にまで至ったらしい。

 あまりにも身勝手なヒューイットに、激怒した父親は領主に厳罰を願い出、領主には平身低頭で謝罪したそうだ。

 そして瑞希達にはこれ以上怖がらせないようにと謝罪文を(したた)め、知己であると聞いたロバートの許を訪ね、深く頭を下げて手紙を託したらしい。事の重大さをよく理解した上での行動なのだろう、受け取った手紙には謝罪と悔恨の言葉が連綿と綴られていた。

 すでに事の次第を知っていた領主はすぐさまヒューイットを含めた煽動者や領兵らを投獄し、現在は審問がおこなわれているそうだ。

 瑞希は驚きすぎて、ぽかんと惚けてしまった。怒濤の如く、とはこういうことを言うのだろうか。


 「今後は領主様が自ら差配するらしい。気休めにもならんだろうが、知っといた方がいいと思ってな」

 「わざわざ悪かったな」


 呆然とする瑞希の代わりにアーサーが礼を言う。ロバートは何のこれしきと軽く笑った。

 ロバートがじっとアーサーを見る。アーサーは立ち上がり、瑞希に子供達を任せて玄関に向かった。

 リビングから少し離れたところで、ロバートが神妙にして口を開く。


 「アーサー、わかっとるとは思うがな……」

 「ああ。今夜にでも」


 皆まで言い切る前にアーサーが言うと、ロバートは渋面を作りながらも頷いた。

 ロバートには双子こそが心配の種だったが、考えが浅かったと反省していた。

 無自覚ということは、とかくタチが悪い。言葉通り、自分が極限状態にあるということを知らないのだ。

 やれやれと溜息を吐いたロバートに、世話をかけるとアーサーが肩を叩いた。


 「お前さんがいてくれてよかったよ」


 よろしく頼む、と頭を下げたロバートに、アーサーは確かに頷いた。

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