一緒に
朝食のあとは、子供達と共にアーサーの見送りだ。
小屋から出るのは久しぶりだからか、馬が嬉しそうにアーサーに擦り寄っている。アーサーの馬は賢く、瑞希や子供達に対しても大人しく振る舞うのだが、やはり主人は別格らしい。
アーサーは何度か鼻面を撫でてから、ひらりと身軽に馬に跨った。
すると、わあっとカイルの目が輝いた。戦隊モノのヒーローを見るような眼差しに、男の子なのねと瑞希が小さく笑う。
アーサーはきらきらとした目を向けられて気恥ずかしい様子だったが、どこか自慢げでもあった。
「今度、教えようか」
「ほんとにっ!?」
やりたい!と頰を紅潮させたカイルに、アーサーは間を置かずに頷いた。
親バカ、と肩に乗ったルルのぼやきに、瑞希は全力で素知らぬふりをする。
「気をつけてね」
「行ってらっしゃい」
アーサーはああと短く返して、馬を走らせた。
馬を駆るその姿が見えなくなると、名残惜しいながらも瑞希は仕事だと切り替えて店に出る。ここ暫くはずっとアーサーに頼りきっていたから、いつも以上に気合を入れなければならないのだ。
まずは開店前の準備。昨夜作った薬を補充して、その間にルルに床を掃除してもらう。
ひゅるりと風が止んだのを確認してからサービスティーを定位置に置いて、ついでにウェルカムボードをひっくり返す。開店時間より少し早いが、馬車が来る時間は決まっているから問題ない。
ぱたぱたと四人で動き回っていると、馬の鳴く声がして、馬車の来訪が告げられた。
瑞希はカウンターに立って会計の準備、双子は来た客にサービスティーを渡していく。
ほとんどの客が常連なので、何がどこにあるか把握されているのだが、彼らは時に双子に欲しい物の場所を尋ねることがある。すると、二人はぎこちないながらも可愛らしい笑みを浮かべて、目的の場所へと案内する。
「そう、これこれ。ありがとうね」
にっこりと礼を言われて、緊張で強張っていた表情がふにゃりと嬉しそうにほころんだ。双子はすっかり薬屋のアイドルになっていた。
普通の人には見えないながらも、ルルとて陰ながらのサポートはお手の物だ。
双子もお手伝いには慣れてきたが、大柄な男性客には萎縮してしまう。そんな時にはルルが傍へと飛んでいくのだ。
「大丈夫よ、一緒に頑張ろう!」
自分より小さいながらも姉として認識しているルルの存在は、双子に大きな安心感を与えてくれる。
多少びくびくしながらも頑張って対応する幼子達に、客はほっこりと目尻を下げたし、ルルも全力で双子を褒めた。すると、やはり双子は嬉しそうにはにかむので、周囲も微笑ましいと心を温めた。




