四-1・奇祭 ――六歳。幼稚園年長
曾祖父は宮ノ訪という場所に住んでいた。ここは大昔から相撲が盛んで、宮ノ訪町の中心には立派な神社があり、そして当然のように相撲に所縁を持っている。
確か、宮ノ訪に伝わる昔話――テレビの昔話を流すアニメで一回あった気がする。するだけだけど――に則って、神社の周りにいくつかある幼稚園からそれぞれ選ばれた代表が相撲を取って神社の神様に捧げるだのなんだの。そんな神事というか催しがあって、私は六歳の時にたった一度だけ、この祭の見物をした。
その時私と同い年の琥太が、その中の一つの園の代表だったから、是非それを見においで、と曾祖父、それと私の祖母の弟である琥太の祖父の二人から揃って誘われたことがそのきっかけだった。
祭は陰祭と本祭とに別れていて、私が見たのは陰祭の最後の一番と、最終日の本祭だった。琥太は、その最後の一番に出た。
その勝負では琥太が自分よりも少しだけであるが体の小さな子に、一本背負いで後頭部から体の後ろをしたたかに打ちつけられる醜態を晒した。しかもそれだけではない。この祭には相撲だけでなく、相撲に負けた子どもの全裸を晒して神に捧げる、なんていう馬鹿馬鹿しいことこの上ない慣習があった――これが宮ノ訪に伝わる昔話の肝だ。実に馬鹿馬鹿しい伝承もあったものだと思う――。ということで琥太はここで所謂すっぽんぽんにさせられて、大泣きに泣かされていた。
おまけに本祭では、陰祭の際の相撲の成績が一番悪かった子どもが代表として丸裸になり、生贄として神様に対し、悪い事はしないだとか、親の手伝いをちゃんとするだとか、嘘吐かない、だとか。そんなありふれたことを約束させられる役回りを担うことになる。
今回の生贄、それが琥太だった。まさかまさかの全敗だったという。うわだっせー。私は子供心にそう思った覚えがある。