二・初対面 ――三歳
例の初曾孫、――名前は琥太――と初めて会ったのは互いに新生児の時だったそうだが、流石に記憶に無い。ある訳が無い。
(親戚には一人だけその記憶を有している人がいたりするが、それはどうでもいい。)
記憶がある初対面は幼稚園に入る一年前の三歳の時。といいつつ、私ははっきりとした記憶はない。だからかなり周囲の言い分に影響された記憶ということにはなるか。
私と琥太にはとにかく大きな体格差があった。私は標準的だったのだが、如何せん向こう側が大きいのだ。四、五歳、いや、六歳といっても通じるくらいには大きかったという。
私の記憶は、その琥太の巨体が、三歳児としては標準サイズであった私のことを、
「ぎゅー!」
と言いながら抱きしめてきた、という強烈な思い出だ。父親や祖父、そして曾祖父といった成人男性以外に抱きしめられることなど今まで体験した事もなかった訳で。私は相当驚いた覚えがある。
けれども私は泣かなかった。むしろ、ばきぃっ、とその面を思いっきり握り拳でブン殴ったのだ。
びーびーびーびー。ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃんと泣き喚く琥太を見て、流石に怒られるか、まずいことをしたか、という気持ちにもなったし、父は琥太の祖父に対してえらく謝っていたが、琥太の祖父が、
「…………」(何と言っていたのか、流石に覚えていないし、当時の私は理解出来なかったはずだ)
何か私を庇うようなことを言って、事なきを得た。まぁ当然の事だ。
しかし琥太の妙ちきりんなところは本当に当時から今まで変わらない。三つ子の魂百まで。まさしくだ。
次に会うのは三年後、幼稚園の年長になってから。この後すぐに産まれた貫太が三歳になり、そして当時から琥太が本格的にやり始めていた相撲にまつわる奇祭を私が見に行った時。私が相撲を生で見たのは、その時が最初で、今の所最後だ。