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case1-4:緋色

隆志さんから貰った薄紅色のワンピース。

彼が昨日話してくれた場所に行く時には絶対に着ていこうと決めたの。

だけどね、私…重病なんだよね。

何時死ぬか分からない病気なんだよね、多分。


だったらこのワンピースを着る機会は今しかないんじゃないかなって思う。

だから、彼が来る前にワンピースを着て、びっくりさせてやろうかな?

きっと驚くだろうけど、『似合う』って言ってくれるかな?


素早く着替えて、布団に潜り込む。

きっと、彼は喜んでくれるに違いない。


キィ――


病室のドアが静かに開いた。

彼が近づいてくる。

だけど彼の様子は何時もと何かが違う。

目の下に隈が出来て、何だか顔も青ざめているみたい。


「どうしたの?」


彼を脅かす事なんかより、彼の体調のほうが心配だった。

そんな状態でも彼は私に微笑んで見せた。


「何でもないよ、大丈夫。」


そう言って、彼は私の頭を撫でた。


「今日から薬を一つ追加するんだ。これは今飲んでくれるかい?」


彼は私に薬をくれた。

白い錠剤とコップに入った水を私は言われるがままに飲んだ。



――突然

意識が遠くなる。

視界がぼやけて…。

そんな中で、何か唇に柔らかいものが触れた気がした…。





ガチャ、ガチャガチャ――


目を覚ましたとき、私の体は鎖で固定されていた。

病室ではない、見知らぬ部屋の見知らぬ台の上。


「先生!先生!助けて!!」


私は咄嗟(とっさ)に彼を呼んだ。

何度も鎖を揺らして逃れようとするも私の力ではどうにもならない。


ガチャガチャガチャガチャ――


「誰か居ないの?ねぇ!誰か!!先生!!!」


キィ――


ドアが開いた。

其処に立っていたのは私の思い人。大切な彼。

きっと彼は私のピンチに駈け付けてくれたのだ。


「先生!!助けて!!これを外して!!」


そういっても彼は黙ったまま私を見つめていた。

どうして?

何で助けてくれないの?


「どういう…こと…?」


私の問いに彼は優しく微笑みを浮かべた。


「君は僕のことが好きかい?」


「えぇ…好きよ…愛してるわ…」


「僕には君が必要なんだ」


「えっ……」


こんな状況で彼が何を言っているのか理解できなかった。


「それって……どういう…」


『どういう意味なの?』そう言おうとした私の言葉を遮り彼は自らの主張を続けた。


「言葉のとおりさ。僕には君が必要なんだ。君の健康な臓器が――」


彼はそう言うなり白衣のポケットから注射器を取り出した。

目の前で起こっている事に思考がついていかない。

ただ、自分に身の危険が迫っている事だけは分かった。


「何も恐がる事は無いんだ。ほら麻酔もあるし痛くしないから。それに臓器を取り出されている君なんて誰にも見られたくない。大丈夫、実行するのは僕一人だから。」


狂気に満ちた言葉を更に彼は続けた。

大好きな彼の顔が何故か歪んで見える。

この時彼のことを初めて恐いと思った。


「いや…来ないで……い…だ……」


「大丈夫、この針さえ刺されば、痛みも何も君は感じなくなるんだから!!」


「イヤーーーー!!!」


私の悲鳴は彼には届かず、私の皮膚に針が刺さった。

意識が遠くなる。

感覚がなくなってゆく。

だけど、自分の腹から生温かいものが流れている事だけははっきりと感じた。


―ドウシテ…センセイ…ド…シテ…―






この世界だけで十分だったの。

この病室だけで私の世界は十分だった。

そう、貴方がいてくれるのなら、

外の世界なんて知りたくなかったのに…







外ノ世界ナンテ……





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