case1-2:桜色
一夜明けて、朝が来た。
昨日は何だか眠れなかった。だってドキドキしてしまって。
彼が来るのが待ち遠しい。
早く私のところへ来てほしい。
私の頭はそんなことしか考えられなくなっていた。
ガチャ――
数分後、私の期待通り病室のドアが開き、杉村先生が入ってきた。
「おはよう、水沢さん。具合はどうですか?」
私に微笑みかける彼の顔は、日の光を浴びてキラキラと輝いて見えた。
神様なんて見たことないけどきっとこんな感じの人なんだろうな、そんな事を考えずにはいられない。
「はい、大丈夫です…。」
顔が上げられないのは相変わらず。
でも、こうしてると何も言わなくても彼は頭を撫でてくれた。
今日一日、幸せな気持ちで過ごせそうだわ。
こうして、また一日、一日と過ぎてゆく。
相変わらず、病気の方は回復していないみたいだけど、それでも別に構わなかった。
だって、回復してしまったら退院しなきゃいけないし、そうしたら先生の顔だって見られないから。
だから、ずっとこのままで良かったの。
でも、そんなある日――
「君にプレゼントがあるんだ。」
そう言って彼は私に小さな箱を渡した。
突然のことに私が戸惑っていると、彼は私に箱を開けるように促した。
私は丁寧に箱にかかっているリボンを解き、そっと蓋を開けた。
中に入っていたのは、赤いベルトの可愛らしい時計。
彼は私の手首に優しく時計をしてくれた。
「私が貰ってもいいんですか?」
「はい。それに僕…ずっと貴方に言わなきゃと思ってたんです。」
「言わなきゃいけない事…?」
彼は一呼吸間を置いて、何時に無く真剣な…そのくせ照れくさそうに話を切り出した。
「僕は、水沢…いえ、正美さんのことが好きです。付き合ってもらえませんか?」
え?私のことが、好き?
頭の中は混乱状態。でも、でもね――
「わっ!」
私は杉村先生…隆志さんに抱きついた。
それは言葉にするより、率直な感情表現。
少し勇気はいるけれど、せっかく貴方も照れながら好きって言ってくれたんだもの、私も頑張らないと。
「隆志さん…私も好きです。」
耳の近くでそう言うと、彼は私を抱きしめ返した。
きっと人生で一番幸せな瞬間。
大好きな貴方に、好きって言われたんだもの。
「だから、早く元気になってくださいね?」
「はい!!」
今までは、退院して隆志さんの傍を離れてしまうのが嫌で、病気を治す気なんて無かったけれど、退院しても貴方がいてくれるというのなら、私早く元気になるわ。
早く元気になってずっと貴方の傍に居たいから――。




