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闇への案内人

最近、色々な人に自分の麻雀人生を聞かれ話すと、「なぜそんな世界に入ったの?」と聞かれることが多くなった。思い返せば自分でもよく分からない。今のように、始めたときから楽しい娯楽として麻雀をすれば良かったと思う。ただあの時は、恐怖感と言うより復讐心のほうが勝っていたのが欠点だったのだろう・・・・・・。


 中学受験になんとか成功した僕は小学校時代から体は人一倍大きかったのに、気が弱くイジメられっ子だっので、中学に入学した早々からまたもやその惨劇を繰り返すことになった。僕は今も昔も顔が悪い、というか老けている。後々のことになるが中学三年でコンビニでタバコや酒が普通に買えたほどだし、同級生と居たら親子に間違えられたこともある。中学生はまだガキの時分なので女子であれ男子であれ顔は結構気にする。ましてや、顔が悪い上に老けていると悪いことしか無かった僕は真っ先にイジられる対象となった。そんなこんなで入学早々からストレスが溜まりっぱなしだった。勉強、特に数学や英語は見るも無惨な成績を連発し、親や教師にも怒られて、大好きな釣りも行けなくなってしまった。ストレスを発散する場がどこにも無い状態で、僕は中学生初の夏休みに突入した。


 あの日はとても暑い真夏の昼下がりだった。空には雲一つ無く、太陽の光がさんさんと輝く典型的な夏の午後、僕は公園の木の下にある、ベンチに座っていた。母親は弟と子供会のキャンプに行っていて、一週間程帰ってはこない。父親は家にいるが仕事以外は寝ているので、僕が家に居るかどうかも確認しない。だから僕は家を黙って何日も外に居ることができる状態だった。私立の中学校の宿題は公立の倍近くは出る。こんなものできるわけがない、と初めから思っていた僕は夏休みが半分過ぎた今も手を付けずにいた。自分が何をしているのかがさっぱり判らなくなっていた。学校に行けば同級生や教師がいるし、家には親がいる。どっちに行こうがストレスが溜まることにはかわりなかった。だからよく公園のベンチに座って、無気力な男になっていた。いやそれを演出していたのかもしれない。ともかくあの時は軽い鬱状態だったと思う。この日もベンチに座って無気力な男を演出していた。暑さで髪の毛から頬へ一筋の汗が流れた。が、それを拭おうともしない。目は虚ろで、口を半開きにした状態の、はたから見るとちょっとイッてしまった男にしか見えなかっただろう。


 何も考えずにぼんやりと座って、何時間経過しただろうか。ふと僕を呼ぶ声がした。顔を上げると帽子をかぶった、少しハンサムな男が立っていた。他には誰もいない。その男は見覚えのある顔だった。


 「やっぱり、一樹かずきか。さしぶりだな~、こんなとこで何してんだ?」


 小学生時代の同級生だった後藤勇治ゆうじだった。


 「ああ、勇治か。いや別に、日なたぼっこをね・・・・」


 自分がストレスが溜まりまくっていて無気力になっているなんて言えるはずもなかったし、言ったところでどうにもならないから嘘を言った。すると勇治は笑いながら、


 「お前は爺さんか?なにやってんだよ」


 と肩をポンポンと叩いてきた。小学校時代勇治とはあまり話したことはない。彼は真面目で静かでいつも本を読んでいた経験がある。つい数ヶ月前まで持っていた印象と全く違うことに僕は戸惑いを隠せなかった。勇治はコーラのボトルを口にしながら言った。


 「なあ、一樹。今から暇か?」


 「特に何も無いけど・・・・」


 「なら一緒に遊ばないか?」


 「良いけど・・・・・・・何して遊ぶの?」


 「ふふふふふ」


 勇治は不敵な笑みを浮かべて言った。


 「麻雀さ」


 それを言われたとき、なぜ麻雀=賭け事と思い浮かばなかったのだろう。そしてなぜ断らなかったのであろう。それらを思う前に僕の気持ちの中に好奇心が芽生えていた。中学に入って早々母がパソコンで麻雀をしていたのを見たことが何度かあった。僕は興味を持ち、自分なりに調べて役や点数計算こそ覚えれなかったが、ゲームの進行やリーチ等を覚えて一端の麻雀打ちを気取っていた。成績や人間関係のストレスで離れていたが、勇治から麻雀の話を聞いてまた始めてみようと思い、そのまま勇治と麻雀を打ちに行くことになった。


この時からだ・・・・・・・。このときから僕の麻雀の歯車があらぬ方向に回り始めたのは・・・・・・・・・・。




(第二話へ続く)

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