町での出会い
「えっと、ザ・ワールド学園、ザ・ワールド学園っと・・・」
「何さっきからつぶやいてんだ、レミ?」
カヘンヘンカから、カヘンシティにやってきたレミとショウ。レミは、どこかで聞いたような学園の名前を、ただ連呼していた。その様子を、ショウは不思議そうに眺めた。
「あ、ここ、ここ!」
レミは、とある大きな建物の前で立ち止まった。それはカトリックの教会のような華やかなものだった。窓にはステンドガラス、その様子はお城のようだった。見た目こそ古くからあるようだったが、まだ歴史は短いようで、新しい建物でもあった。
「・・・レミ、ここは・・・?」
眼をまんまるに見開いたショウが、レミの方を向く。レミはと言うと、顔を輝かせていた。そして、門番のような強面のおじさんのところへ、何のためらいもなく行き、何か質問をした。そして、頭をペコリと下げ、再びショウのところへと戻ってきた。
「ショウ!寮へと行くよっ!!」
戻って来てそうそう、レミはショウの腕を引っ張る。ショウは、何が何だかわからなかった。
「すいません、リカ・タムロンさんは・・・いらっしゃいますか?」
寮に着くなり、レミはショウの聞いたことのない人の名前を、漆黒のショートヘアーの寮母さんに尋ねた。その寮母さんは、右の方を指差した。そこには、“調理室”と書かれた粗末な看板が飾られていた。またレミは、頭をペコリと下げた。そして、そのドアを開けた。その中には、藍色のブルネットの女性がいた。その女性を見た瞬間、レミの瞳は最高に輝いた。
「リカ!」
「・・・レミかい!?あの可愛いレミなのか?」
その女性―――リカとレミは、どうやら知り合いらしい・・・とショウは感じた。リカは14~15歳くらいの、まだ若い女性・・・と言うよりは、少女だった。
そんな少女のリカは、レミの後ろにいたショウを見つけ、顔をしかめた。
「レミ、その坊やは誰だい?」
坊や、という言葉に、今度はショウが顔をしかめた。レミは苦笑しながら、ショウをこちらに呼んだ。
「リカ、この人は、ショウ・ドーズル。私の最高の仲間よ!あ、ショウ。こちらは、リカ・タムロン。この豪奢な建物である“ザ・ワールド学園”の寮母をしているんだよ」
「そうかい、ショウって言うのか。宜しくね。私は、さっき紹介したように、リカっていうんだ」
「俺は、ショウ。レミの友達なんだな。じゃあ、宜しくな、リカ」
2人が知り合ったことに、レミは喜んでいるようだった。ショウとリカは、あくしゅをした。その風景を、レミはより嬉しショウに眺めた。
その後、ザ・ワールド学園から出たレミとショウは、町へと行った。明るい商人たちの声が、道いっぱいに響いていた。
「レミ、これは何だ!?」
「これは、パッションフルーツって言ってね、南の島で良く取れるんだ。生産地としてよく知られているのは、このグラス王国の、真反対にあるといわれる国・ヴィクド帝国が有名かな」
町に行くと早々、ショウはパッションフルーツに興味を持った。断面に、大量の種があることが気になったらしい。レミは、パッションフルーツを2つ買い、近くの休憩所に入ってショウと食べた。追熟されたものだったから、とても甘かった。
「うめぇ!こんなの、初めて食った!」
「私は、ミナトタウンの市場によく並んでいたから、たくさん食べたなぁ。でも、美味しいけど、においがきついよね・・・でも、美味しい!」
追熟されたパッションフルーツは、とても甘くって、レミとショウの心を奪った。その後、ホワイトチョコレートで作られたブラウニーを食べながら、2人は町をぶらついた。
時はあっという間に流れ、いつの間にか夕暮れとなっていた。
「時間が流れるのって、早いなぁ!」
「だな」
町との別れを惜しむように、2人は町を眺めた。その時、レミがあっ、と声をあげた。
「どうした、レミ」
ふところから、レミはきれいな便箋を出した。表には、何か文字が書いてあった。
「それは・・・?」
ショウが不思議そうな顔をしているのに対して、レミの表情は穏やかだった。
「・・・あのね、これはお姉ちゃんへの手紙なんだ。お姉ちゃんは、私が旅に出たのと同時に、ドクツタウンのタク・カナシトさんに嫁いだの。それでね、私が町に着いたら手紙ちょうだいって・・・でも、2日も遅れちゃった」
苦笑いをしたレミを見て、今度はショウが、穏やかな顔になった。
「いいな、家族・・・あったかい」
少し哀しげな顔をしたショウを、レミは心配そうに眺めた。しかし、そんなショウの表情も、すぐに優しいものに変わった。
「さぁ、さっさと手紙出して、カヘンヘンカに帰るぞ?レイが待ってるからな」
レミは、太陽のような笑顔で言った。
「うんっ!」
真っ赤な夕日が、2人の事を優しく照らしていた。