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太陽のようなお姫さま

話し終わって、一息つこうとしていた時だった。ガシャンっ!・・・下で、何やら大きな音がした。ショウとレイが、同時に叫んだ。

「奴らだ!」

「あいつらが来るよっ!」

その一言で、レミも全てを悟った。

―――いよいよ、3人でのカヘン団との闘いが始まるのだ。最悪最凶の極悪軍団と、その軍団から世界を守る救世主の戦いが、今始まったのだ。



下にいたのは、全身黒タイツの変な奴らだった。ショウとレイは、マジな顔をしていたが、レミはと言うと、笑いをこらえるのに必死だった。まるで、何かのアニメに出てくるような下っ端だった。

しかし、そんな状況はすぐになくなった。黒タイツ野郎が、一斉に膝まづいたのだ。そしてドアの方を見てみると・・・くるくるの天然パーマのピエロのような人が、こちらに向かってやって来ていた。容姿は突っ込みどころが満載なのに、その瞳には何か恐ろしいものがあった。その瞳を見ていると、金縛りにあったようだった。

「ハーイ!みなさぁんご機嫌よー!あら、あらっ、かわいらしいnewmemberがいるわー!私は、カヘン団第3ランクサブボスの壱宮いちみやですーぅ。以後、お見知りお・き・をっ!」

しゃべり方も気持ちが悪いのに、なぜか笑えなかった。その真っ赤な瞳から、今にも炎が出てきそうだった。そして、恐ろしいほどの殺気が放たれていた。

その瞬間だった。壱宮の瞳がカッと開かれ、こっちに向かってものすごいスピードでこちらへと近づいてきた。そして・・・

「グワッ!!」

「ショウッ!?」

壱宮はものすごい形相のまま、ショウを蹴り飛ばした。ショウはそのまま、壁に激突。そのまま倒れこんでしまった。その瞬間、レミの表情も変わった様に、レイには見えた。

「アンタ・・・よくも私の大切な仲間を・・・こんなことして・・・許されるとでも・・・思ってるっ!?」

大きく見開かれたレミの瞳から、大粒の涙があふれてきた。しかし、壱宮はそんな事には動じない。今にも裂けそうな口を横に開き、目を大きく見開いて、そのままレミの事を殴った。しかし、レミはそのこぶしを、一生懸命抑え込んだ。そのおかげか威力は少し弱まったが、やはりそのこぶしは、レミの体に直撃・・・。軽いレミの体は、一気に飛んで行った。そして、壁に激突した。いくら胆が据わっていたって、いくら強くったって、やはりレミはか弱い女の子。そのダメージは大きく、立ちあがることができなかった。そしてそのまま・・・

「ウッ!!」

・・・レイまで、飛ばされてしまった。しかし、レイとショウのダメージは、あまり大きなものではなかった。すぐに2人はたちあがったが・・・

「ちっ、くそ・・・」

「逃げられたか・・・」

―――気がついたときには、壱宮一味はいなかった。遠くから、

「じゃあ、ご機嫌よーっ!」

という声が聞こえてきて、嫌に部屋に響いた。



その響きが消えたころ、ふとレイが思い出したように後ろを向いた。そこには・・・

「レミっ!しっかりして!!」

ぐったりとしたレミが、壁にもたれかかっていた。レミは、気を失っていた。ただ、真っ青になった顔を下に向けて、脱力していた。そんなレミをレイは背負い、そのままエレベーターに乗った。後ろから、ショウも追いかけて来て、3人は再び20階に戻った。



―――あっという間の出来事だった。



部屋についた3人は、とりあえずレミをベットに寝かす。そして、ショウが傷の手当てをしてから、毛布をかぶせてそっとしておいた。

「・・・ふぅ。・・・レミ、無理をしすぎだぜ・・・」

「あぁ、無理をしすぎている」

ショウがソファに座った時、後ろからアップルティーを持ったレイがやって来て、向かいのソファに腰掛けた。

そして、ショウはレイに向かって悲しげな口調で尋ねた。

「レイ・・・俺がレミを誘っていなかったら、レミは楽しい冒険の旅に出れていたのかもしれねぇな・・・」

珍しく弱気なショウを、レイは珍しそうに眺めた。そして、首を横に振りながら言った。

「確かにそうだったかもしれないけど・・・レミは、それを望んだだろうか?・・・いや、きっとこういう運命だったんだ。だったら、レミは幸せだよ。だって、こんなにも心配してくれる仲間がいるんだからな。ショウ、君の決断は間違えてなどないよ」

優しいレイの言葉に、ショウは励まされた。そして、もう幸せそうな顔をして眠っているレミを、2人で眺めながら言った。

「レミは、太陽だ。その太陽を守るのが、俺らの仕事ってわけだ」

「あぁ。その太陽―――お姫さまを、共に戦っていきながらも、俺らは守るんだ」

そして顔を見合わせた2人は、ぷっと吹き出して笑った。



レミは、もちろんその言葉を聞いてはいなかった。

しかし、その言葉を聞いていたように、レミの顔は、より安らかな表情になった。




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