最悪の再会
一方、同じころ。
「ありがとう、長い間・・・本当に、助かったよ」
「いや、俺も楽しかったんだ」
「それは良かった。それじゃあ」
レイはそういうと、スカイタウンを後にした。友人が、スカイタウンに帰ってきたのだ。
港へ行き、レイはふと南部を見た。そこには、スカイ一族が住む。
スカイ一族―――そう言われると、どうしてもレミを思い出してしまう。
―――・・・甘くて、危険で、苦い、そんな思い出がよみがえる。どうしても、もう1度・・・後1度でいいから、レミと会いたい。
「ここにいたり・・・なんてな」
そんなことを言ってみて、ふっと笑い、船に乗り込んだ。
船の反対側にて―――
水色の長い丈のポンチョを着て、フードを目深にかぶって、船の端の方に座る影があった。―――レミだった。
ポンチョの中には、サナがいる。サナを抱きしめ、窓の外を眺めていた。
荷物は横に置き、顔を隠すようにした。ミナトタウンで、大方の人を占めるスカイ一族といえ、外に出ることはめったにないため、ほんの少しの一般人で占めている。
そのため、目立たないようにしていたのだ。
船にはだれよりも早く乗り込み、誰よりも遅く下りる。
「サナ、お願いだから・・・泣かないでね?」
優しくそういうと、サナをそっとなでた。サナは今、すやすやと寝ている。
レミは知らない。―――正反対の端の方に、レイがいることを・・・。
10歳の時に聞いた、同じしわがれた声が聞こえた。
「カヘンシティー、カヘンシティー」
レイは、その声で目を覚ました。かばんを持ち、他の人と一緒に船から降りた。
船から下りる途中、レイの耳に赤子の声が聞こえた―――様な気がした。
「なんで・・・こんなに気になるんだろうな。赤子の声に」
クスッと笑い、レイは船から降りて、南部のホテルへと向かった。
船から降りるとき、サナが泣き出して、レミは焦った。
しかし、そこときにはすでに、ほかの乗客は降りていたので、とりあえず一安心。
「長旅で、疲れたのね・・・」
サナをいつものようになでて、落ち着かせて、レミは船から降りた。
金髪ごとポニーテールにして、シュシュでくくり、ポンチョを脱いだ。その下には、ひざ下の7分丈のワンピースを着ていた。
―――18歳のとき、時々着ていた大人っぽいものだ。別に、20歳なのだから大人なわけではないが、母親になると、老けた気分になると思った。
他の人がそう言っていたが、本当にそうだとレミはそう思った。
レミは東部のほうへと向かった。ホテルは決まっていないが、今は10アース持っている。
東部は物価が安く、一番高い南部が1泊5アースなのに対し、東部は2アースだ。レミは5泊6日で、仕事を見つけるか住むところを見つけないといけない。
乳飲み子を抱えるレミに、それは辛いことだった。
ホテルに入り、部屋の中に入った瞬間、サナが激しく泣き出した。
レミは一瞬動揺して、しかしすぐにまたなでてやった。するとサナは、少し落ち着いたようだった。
「ごめんね・・・あなたを・・・何の罪もないのにね・・・本当、私もコウ様も・・・親失格かもね・・・」
レミは浮かんだ涙を指で拭き、ベットの中に入った。
「ほぎゃぁ・・・ほぎゃぁ・・・」
「・・・ごめんね・・・サナ・・・本当にごめんね・・・」
翌日―――・・・。
レミは、ホテルを出た。空きがたくさんあるホテルだから、夜に帰ってきても部屋はとれるだろう。
サナを抱え、レミは町をうろつく。
―――そこには、懐かしい光景があった。物価が安い分、治安も若干悪く、サナと一緒に歩くには最悪だった。
「しょうがない・・・北部に行こうかしら・・・」
サナを抱え、レミは北部へと移動した。―――北部には、カヘンヘンカへの入口がある。
ユウキの婚儀とともに、カヘンヘンカへ行くことはやめた。でも、あそこなら安心できる。住むところもある。元の貯えが、まだ少し残っているはずだ。
「・・・バカよね・・・行かないようにしよう、って言い出したのは私なのに・・・その約束、一番最初に破るなんて」
失笑しながら、レミは歩く。
―――しばらく歩くと、さすがに足が辛くなってきた。サナも泣き出し、レミは路地に入った。
入った路地には、幸い人がいなかった。そして、今までの疲れが出てきたのか、レミはその場で寝てしまった。
レイは、ホテルを出た。
住む当てはないけれど、とりあえずショウのところへ行くことにした。その途中、ふと思い立った。
「カヘンヘンカ・・・」
レイの止まっていたホテルから、カヘンヘンカまでは近かった。
「・・・レミとの約束は破ってしまうことになるけど・・・行ってみるか」
荷物を持って、レイはカヘンヘンカへと向かった。
―――その途中だった。赤子の泣き声が聞こえた。
「ほぎゃぁ・・・ほぎゃぁ・・・」
レイもさすがに無視できず、その声のもとを探した。そして、人気のない路地を見つけた。
「ここか・・・」
レイが見つけた所には、泣き叫ぶ赤子と、水色の変わったポンチョをはおり、フードを目深にかぶった女性だった。
「すいません・・・あの・・・」
レイは、その女性の方をしばらく揺らした。そして、その女性が目を覚ました。
「あ・・・起きた・・・っ!?」
「っ!?」
レイとその女性が言葉を失ったのが、同じタイミングだった。
―――そこにいたのは・・・
「レミ・・・!」
「レイ・・・ッ」
その女性はレミだった。
レミは驚いた。
いつのまにか寝ていた自分を起こしたのは、レイだった。驚きで声が出ず、次の瞬間、レミは泣いていた。
「なんで・・・」
「レイ・・・レイ・・・レイ・・・!」
レイの服をつかみ、レミは泣いた。サナは、いつのまにか寝ていた。
―――なんでこんなところで、レイに会うんだろう・・・。こんな心だと、レイにすがってしまう・・・。
レイは、レミを抱きしめた―――。




