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未来へと吹き抜ける風

奴ら―――カヘン団との闘いは、間を少し置いてやってきた。前回、3人を軽々飛ばしてしまった敵・壱宮達と、3人はまた戦うことになった。壱宮は、前回と比べモノにならないほど、弱くなっていた。特徴であったきれいなテンパはほつれてしまっている。おそらく、体調不良だったのだろう。

だから、すぐに倒せてしまった。残った部下たちは、レミが弱気で殴っただけでも、奇声をあげて倒れてしまうほどだった。

「あれ・・・壱宮って、こんなに弱かったかな・・・?」

レミは、首をかしげた。ショウとレイも、首をかしげていた。しかし、壱宮達が倒れているところから、細い体―――レミよりもさらに細い体の男が、やって来ていた。

「アンタ、誰だよ?」

「あ、俺?俺は、弐部にぶ。第3ランクボスだけど・・・ったく、壱宮って弱いだろ?2日に1回はこんな感じだよ。・・・んで、こいつはカヘン団から追放されたから」

だるそうに耳をかきながら、細い男―――弐部は言った。その言葉に、テンッパーが反応した。

「お待ちください、弐部様!私が・・・追放!?そんなこと・・・必ずや、成し遂げてみせますので・・・もう1度、チャンスを・・・!」

瞳孔を開いたその瞳は、おそろしかった。しかし、その瞳に動じないボス・弐部。相変わらずだるそうに、ギロリと壱宮を睨みつけた。

「残念、あの方がそういったんだ。さぁ、お前はもういらない」

そう言われると、壱宮は1人でとぼとぼと歩いて行った。その姿を、3人は止めなかった。止めるつもりもなかった。



「ったく、めんどくせぇ。・・・あ、こっちが自己紹介したんだからさ、そっちもしてよ」

やっぱりだるそうなポッキーが、鋭い目で3人の方を向く。代表して、ショウが口を開いた。

「俺らは、Messiah。・・・そのな、お前らの敵だよな、うん」

あやふやな自己紹介の後、弐部が何かぼそぼそつぶやいた。その次の瞬間、弐部が走りだした。そして、今度は聞こえる大きな声で、こう叫んだ。

「ゲームスタートだ!」

弐部の足は、長くしなやかだ。その足が、ひゅんひゅん言いながら風を切る。足が速く、到底追いつけなさそうだった。その時、レイが動いた。

「俺に任せろ」

そういうと、勢いを付けて屋根に飛び乗る。そして、その上を風を切るように走って行った。

その光景にポカンとしたレミとショウだったが、すぐに走りだした。レミの来ているポンチョの先が、ひらひらと揺れる。ショウのまいているスカーフも、蝶が舞うごとく柔らかく舞う。遠くで、レイのつややかな黒髪が、汗を振り散らしながら揺れていた。

しかし、弐部は汗1つかかずに、遠く遠くへと逃げて行った。そしてとうとう、姿が見えなくなってしまった。少し先から、レイが2人の元へとかけてきた。

「ごめん、逃げられてしまた・・・」

「ううん、いいよ。レイ、ありがとうね」

悔しそうなレイを慰めるように、ショウがポンと肩をたたいた。そして、3人はアジトへと帰った。



「第3ランクボス・弐部かぁ・・・はやかったよね・・・」

アジトに帰ってすぐ、レイは倒れ込むようにしてベットに横になった。今は、レミとショウの2人きりだ。シャワーを浴びたレミの髪が、不思議な生き物のようにうねっていた。

「はやいもなにも、俺らじゃ到底追いつけないさ・・・レイなら、少し特訓すれば追いつけるかもしれないけどな・・・」

悔しげな表情のショウが、こぶしを強く握りながら言った。その時だった。ショウの横から、すぅーすぅー・・・という音が聞こえてきた。横を向くと、レミが寝ていた。まだ火照っている体は、暖かかった。ショウは優しく微笑むと、そぅっとレミを抱き、ベットまで連れて行った。

「おやすみ、レミ。お疲れ様だ」

そして、ショウも自分の部屋へと行った。



ぴゅぅぅ・・・と、未来へと吹き抜ける風が、爽やかに吹いた。



それからも、カヘン団との闘いは、厳しいものになって行った。それでも、3人は力を合わせ、戦ってきた。

結局決着がつかないまま、時は驚くほど速く流れ、1年の歳月が過ぎていた。



「ショウ、レイ、ユウキ?朝ご飯、出来たよー?」

―――1年たった時、Messiahに新たな仲間が加わった。

ユウキ・レオグランド。3人より1つ年下の10歳の少年で、3人との出会いは、町中で偶然ぶつかり、偶然旅に出ていることを知り、偶然仲間になった・・・と言う、偶然の出会いだった。

ユウキは、輝くブロンズの髪を持っていた。瞳は漆黒、黒いTシャツとカジュアルなカーゴパンツをはいている。下はこげ茶のブーツだ。

戦闘能力は、かなり優れていて、最近の戦いには大活躍していた。今戦っているのは、第2ランクボスの三和みわ。怪しげな気配を漂わせる女性で、それなのに戦闘能力が高く、厄介な敵だった。



「わぁ、今日はマドレーヌがある!しかも、俺の大好きなショコラだ!レミ、ありがとう!」

「ったく、ユウキはすぐはしゃぐな」

「そうだな。でも、それが魅力でもある」

「私も、そんな風に言ってくれると、嬉しいの!」

―――すこし大人びた印象になった3人。

レミは腰くらいまで伸びた髪を、藤色のシュシュでポニーテールにしている。胸には、輪のついている首飾りも映えていた。服装は、シュシュと同じ藤色のニットワンピースを着ていて、明るい茶色の編み込みのロングブーツをはいていた。

ショウは相変わらずの短髪。胸元には、父親からもらった缶バッチが輝く。ライムグリーンのロンTに、ジーパンをはいている。靴は同じライムグリーンのひも靴で、動きやすそうだった。

レイも相変わらずのロン毛。無造作に結んだ髪を、いつもレミに注意されている。白いTシャツに黒いカジュアルジャケット、下にはジーパンをはいていて、胸元に十字架のチョーカーが映えている。



まだまだ3人・・・いや、4人の戦いは続きそうだった。




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