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旅に出て・・・

グラス王国洋領土ミナトタウン―――。

この小さな町から、今日、1人の少女が旅立つ。彼女の名前は、レミ・レナルド。このミナトタウンの4分の3を占める先住民・スカイ一族の1人だった。しかし、今日でその一族としての生活も終わり・・・。今日からレミは、10歳になったため旅に出るのだ。



「お姉ちゃん、おはよー!」

ご機嫌で布団から出たレミは、台所にいる姉を呼んだ。

「おはよう、レミ。今日からね・・・まだ、時が来るまでここに残って、時が来たら嫁ぐという手もあるのよ・・・?」

聡明なこの少女は、レミの姉であるジュリである。姉の心配発言を聞き流しながら、レミは笑った。

「あははっ、ホントにお姉ちゃんは心配性だなぁー。大丈夫!それに、小さいころからの夢だったんだもん!今さらだよ?」

「でもねぇ・・・レミ・・・」

心配そうな声を上げる姉の背中を押しながら、2人は最後の食事についた。この姉妹のこの生活は、今日で本当に終わる。レミは旅に出るし、ジュリは、ドクツタウンのタク・カナシトのところへ嫁ぐのだ。―――1分1秒を大切にしている姉妹の朝だった。



ぶぉぉぉぉぉん・・・

大きな船が、離れ小島であるミナトタウン唯一の港に着いた。船の行き先は、このグラス王国で断トツで大きい巨大都市、ネオンや巨大ビルの光がまぶしいカヘンシティである。ふと後ろを向いたレミの目に映ったのは、涙を流すジュリの姿だった。

「お姉ちゃん・・・今までありがとう・・・」

両親の代わりをしてくれた姉に対して、レミは小さくでもはっきりとした声で、感謝の気持ちをたくさんたくさん込めてつぶやいた。

そんな船に乗り込んで、しばらくレミは眠りについた。



「まもなくー・・・カヘンシティー、カヘンシティー」

しわがれた声によってレミは目を覚ました。着いた時はすでに夜だった。あちらこちらでネオンが輝き、高いビルの光がまぶしかった。レミは、とりあえず予約しておいたホテルへと急いだ。街ゆく人々は政府の役人なのか、はたまたただの会社員なのかよくわからないが、黒や灰色のピシッとした服を着ていた。レミのいたスカイ一族は、こんな服を着ている人はいなかった。



予約したホテルは、27階建ての結構大きなホテルだった。レミが泊まるのは、そんなホテルの20階のそこそこの部屋だった。部屋にはベットが1つ、32インチのTVとその目の前にテーブルと2人掛けのソファがあった。バルコニーも付いていて、バスルームも付いていた。そのバルコニーに出たレミは、南の方―――ミナトタウンのある方向を向いた。

「お姉ちゃん・・・私、やっていけるかな・・・ううん、行けるよね、絶対っ!」

そうネオンの光る街を見下ろしながら、レミは姉に誓った。そして、今日の疲れがどっと出たのかベットに横たわった瞬間、深い眠りについた。



「皆さん、おはようございます!朝市が始まるわよーっ!」

どっしり構えたような女性の声が聞こえてきた。その声で、レミは目覚めた。

窓からは、柔らかな日差しが注いでいた。その日差しに誘われるように、レミはバルコニーに出てびっくりした。―――そこに広がっていたのは、昨晩見た景色とは大きく違うものだった。昨日の夜は、スーツを着た偉そうな人が多かったのに対して、今朝はエプロンを付けたままの女性や、ふわふわの寝癖をまだつけたままの子供たちでにぎわっていた。レミとしては、そういう環境で育ったからこっちの方が見慣れていた。ふっと下から声が聞こえた。

「ちょっと、そこのアンタ、ここの人じゃないよね?ちょっと下に降りて、朝市においでよ」

びっくりしたレミは、

「はぁい!じゃあ、ちょっと待ってねー」

とだけ言うと、急いで身支度をした。そして、気がついた。―――自分の恰好は、この街とはマッチしていないということに。何よりあっていないのは、横から伸びている金髪だろう。この街に来て、誰もこんな髪形をしていなかった。だからレミは、髪をポニーテールにして、下まで降りて行った。



「すいません、遅くなっちゃって・・・」

はぁはぁ・・・と息を切らしながらレミは下に降りて行った。そこにいたのは、藍色の髪が綺麗な女性だった。どうやらさっきの声は、この女性だったらしい。

「いや、大丈夫だよ。それにしても、見慣れないねぇ・・・髪の毛も服装も」

そう言われて、尚更そうだと思った。

「そうでしょ?私はレミ・レナルド。実は私、スカイ一族で・・・ほら、あの先住民の。だから、全く町のこと知らなかったの」

「なるほどねぇ~。でも、可愛い衣装だ」

そう褒めてくれて、レミは顔を赤らめた。

「レミ、可愛いねぇ。あ、そうそう、私はリカ・タムロン。普段は“ザ・ワールド学園”の寮母をしているんだよ。もしかして、レミもザ・ワールド学園に入学するのかい?」

ふと、リカがよこの教会のような豪奢な建物を指しながら言った。レミが首をかしげたから、違うと理解してくれたらしい。

「これは、まぁ、このclearworldの全土からやってくる生徒たちが通ってるんだよ。様々な言語や人種、民族もいるよ。まぁ、レミは旅に出るんなら関係ないか。でも、いつでも会いにおいで」

ニカっと笑ったリカに対して、

「ありがとう、リカ。じゃあ、私急ぐから。また会えたらいいね」

とだけ言って、部屋に戻った。後ろでリカが何か言っていたが、レミはそれが聞き取れなかった。ただ、時折振り返って手を振った。



そして、レミは今日、人生の仲間と出会うことになる。




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