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第8話 フリーズ(凍結)

A級都市の管理局でプログラムエラーのせいで何も表示しなくなったモニターを前に

スリーは、セブンに事の成り行きを説明した後に管理局を後にした。

この成り行きを説明するという出来事もプログラムにない事だ。

それを思い、この世界で何か特殊な事件が起こってる事を直感した。

今日は、シアターと呼ばれる物語を映像で見れるスポットでデートする約束になっているが、

プログラムは、どうなったのか?暗い顔で自動道路に乗り、流れる景色をぼんやりと眺めた。

自動道路が十字に交差する場所で約束の相手、ファイブが現れた。

スリーが彼女の存在に気づくのは、決まって彼女の甘い香りを感じてからだ。

「俺の好きなこの香りは、、、」

つぶやくと、ファイブが答えた。

「最近流行ってるコロンよ?他にも同じ香りのする女性は、多いと思うけど?」

「いや、、なんていうか、、君だけが俺の好きな香りを発してくれてるんだ。」

「早速口説いてるの?」

言われてスリーは、赤くなった。

「いや、そういうわけじゃないけど、、いつもその香りで君が現れた事に気づくんだ。

他の女性とすれ違う時にその香りを感じた事は、ないんだ。

なんていうか君だけ、、特別に素晴らしい香りがするんだ。」

「やっぱり口説いてるじゃない?」

言いながらファイブが嬉しそうに微笑んだ。

「そうだね、、確かに口説いてる。どうやら君の事が好きで好きで仕方ないようだよ。」

照れながら言うスリーの言葉にファイブも顔を赤くして微笑んだ。

しばらく二人は沈黙したまま手をつないで自動道路の上で流れる景色に視線を漂わせた。

別の女性と付き合ってた頃は、沈黙の時間が苦手だった。

今、何を考えているんだろう?話題の少ない冴えない男とでも思っては、いないか?

などと、妙な疑念にあせって無理やり会話した憶えもある。

だがファイブとは、違った。沈黙の時間さえおだやかな気分でいられる。

「なんだか不思議な気分だ。何年も前から君と一緒にいたみたいに、、、

君がそばにいると気持ちが落ち着くんだ。」

「不思議ね。私も今、、、同じ事を思ってた。今夜のシアター楽しみ、、、星って見た事ある?」

「星?ああスクールに通ってた頃に教材で何度か見たことあるけど、、、」

「今夜のシアターは、星の物語なの、二人っきりで大きな星空が見れるのよ。」

「それは、凄い、、、二人っきり、、、」

ファイブが意地の悪い笑みを浮かべてスリーの顔を覗き込んだ。

「二人っきりが凄いのかしら?」

「え?あ、いや、、その、」

スリーがあわてたがファイブは、優しく微笑んでから、、つないだままの手にぎゅっと一度だけ力をこめた。

そんな二人をよそに動かなくなったままの管理局のモニターの前で、やる事が何もないセブンが、

一人退屈しながらコーヒー片手に苦い顔をしていた。

モニターは、いつまで凍結したままでいるのか?時間が経つほどにセブンの苛立ちが募った。

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