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第6話 あり得ない出産

特権階級都市で黒衣を纏う男達の群れの中、同じく黒衣を纏うゴリラのような片目の男が、地響きのような唸り声をあげた。

「ダイは、どこだあああああああああああ?」

周りの黒衣の男達は、皆、首を横に振った。

「くそっ、舐めやがって、、俺達は、敵じゃないって言いたいのか?」

片目の男が忌々し気に舌打ちした。

「でも、、、ウォルフ、、あんたならダイを削除できるのか?」

ウォルフは、一つしかない眼を問われた方に向けて眉間に皺を寄せた。

「この世界にデリーター全員で削除できない男がいるとでもいいたいのか?」

そう言った直後にウォルフは、人差し指の指輪から赤い光を放ち、

弱気な台詞を吐いた男を削除し、獣のように吠えた。

「うぉおおおおおおおおああああああああああああっ」

荒れるウォルフに誰もが恐怖した。

「よおウォルフ、お前なら俺を退屈させないでくれるか?」

宙に浮かび口元に笑みを浮かべるダイの姿にその場の空気が凍った。

「ダイ!」

ウォルフは、咄嗟に指輪から赤い光を放った。だが、それは、空を切るだけだ。

「削除しろおおおおおおおおおおお。」

幾つもの赤い閃光が空を切り裂いた。空のみを。

全ての都市を瞬時に行き来できる空飛ぶ乗り物に乗るダイが姿を消した。

「くそっ、全階層の都市を探せっ」

ウォルフは、叫んだ直後に瞬間移動した。


A級都市の管理局では、いつものようにスリーがモニターを眺めながらコーヒーを飲んでいる。

知り合って間もない女性、ファイブの事を想った。今日また会う事になっている。

彼女は、これまで出会ったどの女性とも比べられない。

なんと言えばいいか、右手と左手を重ね合わせた時に全く違和感がないように、

彼女と一緒にいるのは、自然に感じられる。そう思っていた。そう、これは、運命なんだと。

スリーは、ここのところ先のプログラムを見ない。

次に彼女がどう動くのか?それを知らない事でドキドキする事が楽しい。

前日の食事中の彼女の艶やかな唇を思い浮かべながら、、、今夜あの唇を奪えるだろうか?そう想い、、生唾を飲んだ。

と、その時にモニターに次々にバグが発生した。

「何だ?」

スリーが慌ててモニターを覗き込むと、、、あちこちの都市でバグが発生していた。

都市を映すモニターには、宙を飛び交う黒衣の男達が罪のない人々に接触している。

何やら問いかけているようだがバグを削除する役目の男達が、一般人と接触するプログラムは、組まれていない。

次々にプログラム上にバグが報告されている。

「何が起こっているんだ?」

ダイを探す黒衣の男達の行動が大量のプログラムエラーを作り始めていた。

100,,, 1,000 ,,, 10,000 モニターが異常警告を発動した。

「緊急修復作業の為、システムを停止します。」

それからしばらくモニターは、何も映さず真っ黒のままだ。

1時間経っても遮断されたままのプログラムにスリーは、不安を募らせた。

今夜無事に彼女と会えるだろうか?



物凄い形相で宙を飛ぶウォルフは、失った方の目に手をあてて、片目になったその日の事を思い出していた。

ウォルフがまだダイと対等に成績を競えた頃の事を。

成績だけじゃ勝負がつかずにイラついていたあの日、

互いに削除しあう事でどっちが上かハッキリとさせようとダイに持ちかけた。

その直後にダイがウォルフの左目に人差し指を突き立てた。

悲鳴をあげるウォルフに対してダイは冷ややかに問いかけた。

「まだ続けるなら消してあげるよ?どうする?」

必死で詫びた忌々しい過去、、消したい過去を想いウォルフは、吠えた。

「絶対消してやる、、、うおおおおおおおおおおあああああああああああああっ」



時を同じくして地下層にあるO級都市では、不思議な事が起きていた。

異性との接触など一度もないマリアのお腹の中に生命が宿ったのだ。

勿論マリアには、身に覚えのない妊娠だ。

男性に唇さえ触れられた事もないのに、突然お腹が膨らみだしている。

それは、尋常じゃない速さで膨らんでいる。

妊娠というものは、ある日突然女性の腹を膨らませるものなどでは、ないのに、

マリアの腹は、1時間に10センチほど大きくなっている。

周りの人々は、この異常な現象に奇跡と騒いだ。

天使のようにこの都市に突然現れて人々に幸せを与えたマリアの異常な妊娠に、

「きっと神の子が生まれるんだ」と誰もが騒いでいる。

そんな騒ぎの中で、何故だかマリアだけが落ち着いた顔で優しくお腹をなでている。

「お腹の子が大丈夫だから心配しないでって語りかけているわ。」

周りの皆につぶやいて微笑むマリアの体は神々しい光に包まれている。

この世界で初めて遺伝子操作で創られてない純粋な血を持つ子は、この後、あり得ない出産で誕生した。

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