恋人は大人気配信者です。
『どうもー!リンゴです!』
『バナナです!』
『アボカドです。』
『『3人合わせてフルーツバスケットです!』』
今女子中学、高校生から注目浴びる大人気男性配信者グループ【フルーツバスケット】、登録者は100万人を超えており、平均再生数は100万とかなりの再生を誇っている。
大学の時に動画投稿し始め、約四年である。メンバーは皆同じ26歳だ。
グループのメンバーはそれぞれ個性を持っている。
【バナナ】は茶色の髪に黄色のパーカー着ており、3人の中では背が1番小さい。笑顔を絶やさないいつまでも少年心を忘れない弟みたいなムードメーカータイプでグループを引っ張っている。
【アボカド】は黒色の髪に緑色の目をして眼鏡をかけてる。クールな感じをだしているが天然でそこがギャップを感じるタイプ。
そしてフルーツバスケットのリーダーであり3人の中で1番人気がある【リンゴ】。
癖のある赤い髪にすらっとしたスタイル、親しみやすいその性格と容姿、そしてトーク力が目立つタイプ。
『今日は何するんだリンゴ?』
『今日は今流行りの激辛ラーメンを食べきったら一万円貰える企画をやりまーす!』
各メンバーが激辛ラーメンを食べてそのリアクションの動画だった。
コメントでは[マジ面白すぎる][涙目が可愛かった笑笑][天才だ!ww]といったものが流れてくる。
実際ただラーメンを食べてるだけだというのにここまで再生回数にするのは才能であろう。
とまぁここまでフルーツバスケットの紹介をしてきて自分の紹介はしていなかったな。
俺の名前は【一吾】、一般サラリーマンで今年で30歳になった。身長は175cmで黒髪に眼鏡をかけている。
仕事は忙しいが会社がホワイトというのもあって待遇は良いので満足はしている。
そう、仕事は。
問題はプライベートの方だ。俺には同棲してる年下の恋人がいるのだが仕事がめちゃくちゃ忙しくてなかなか一緒にいる時間が無いと言ってもいいぐらいない。
まぁこっちも社会人だし付き合った時は相手はまだ大学生でむしろこちらに合わせてもらった時のことを考えればまだ耐えれる。
が、問題はその恋人が動画配信者だということだ。
「ん?あいつ帰って来てるのか?」
窓には電気が付いていた。
帰宅し部屋に入るとリビングの明かりが付いていた。
「ただいま。」
リビングに着くとソファでコンビニのおにぎりを食べていたリンゴ、いや、【鈴】と目が合う。
「あっ、いちふぉさんほかへり。」
「飲み込んでからでいい。帰ってたんだな。」
そう、恋人はあの大人気配信者のリンゴだ。彼が大学を卒業してから一緒に住んでいる。
俺はネクタイを外す。
「ゴクン、そうなんだよ。いやー疲れたなぁ。」
「まったく、言ってくれれば早く帰って夕飯2人分作ったのに。」
呆れた感じでため息を吐くが本心では嬉しかった。歳上の意地もあってなかなか素直にはなれないのだが。
「オレ19時から配信あるからどっちにしろ食べられないや、あっやべもうこんな時間!」
そう言って自分の部屋にこもってしまった。
俺は配信の邪魔にならないように物音立てないように静かに移動する。
鈴の部屋からは笑い声がする。視聴者と楽しく配信してるんだろうな。
「今日鈴ちゃんの配信日だってわかってたことでしょ?」
俺は移動して行きつけの小さなバー、ピーチに行き、そこのマスター(オネェ)にそう言われる。
「うるせぇ…期待した俺が馬鹿だっただけだ…」
「もう、情けないわねぇ。そんなに鈴ちゃんと過ごしたいならちゃんと本人に言いなさいな。」
「無理だろ…あいつ忙しいんだぜぇ、そんな仕事と私どっちが大事とか言いたくねぇよ…」
シクシクとテーブルの上に顔を置く。酒とマスターが絡むと俺は途端に弱々しくなる。
「まぁわかるけどね、鈴ちゃんすっかり人気配信者だもの、でもねぇ、だからこそ恋人である貴方がしっかりしないと、最近天狗になってきてるわよ、鈴ちゃん。」
そう言って水を出してくれる。
「天狗ぅ?まぁあいつ昔から調子乗る奴だけど事務所入ってるしもう大人だ。むしろ俺が色々言ってもうるさいだけだろ。」
俺は水をがぶ飲みする。
マスターはそんな俺を見て呆れている。
「…それに、ぶっちゃけあいつの動画見てない…」
「え?!!見てない?!」
「いや、ちょっと嘘ついた。正確には見なくなった。今日休憩時間に久しぶりに見たけど、正直その、面白く感じなくなって…」
休憩時間というのもあるけど最近広告とかやらで動画時間が長くて飛ばし飛ばしで見た。しかもフルーツバスケット含めて若者ターゲット層から外れたのかいまいち面白みを感じなくなってしまった。昔の方が面白かったというのはその動画がつまらなくなったのではなく、自分に合わなくなっただけなのだ。
むしろなぜ昔はラーメン食べてる動画でも面白く感じたのだろうか。
「まぁ、鈴ちゃん聞いたら泣いちゃうわよ。配信者として。」
「俺が好きなのは鈴であって配信者のリンゴではありませーん。」
「もう、そんなんじゃいつ浮気されるかわからないわよ。鈴ちゃん女の子に人気らしいじゃないの。」
そうは言ったって、動画のことなんて全くわからない。最初はそれ以外のことでサポートしていくつもりだった。家事だって忙しいあいつのために全部引き受けてるし、配信とかの邪魔しないようにこうして移動したり。
でも、それも疲れ始めてきた。忙しいのはわかる。けど俺だって仕事をしているんだ。
その上全くもって一緒にいる時間もない。
「…なぁマスター。あいつにとって俺はなんなんだろうな。」
そもそもリンゴは恋人がいることを隠している。これは事務所に言われたかららしい。実際フルーツバスケットのマネージャーにバラさないようにお願いされた。
元々バラすつもりはなかったし別に隠すのはいい。ゲイとか以前にアイドルと同じ理屈だろう、それ自体は不満に思わなかった。
「…はぁ。もうそこまで来たら無理に付き合う必要もないでしょ。あんまり言いたくないけど、我慢してまで関係続けるぐらいなら別れた方がいい時もあるわよ。」
「…」
マスターの言うとおりだ。もし俺が第三者だったら同じことを思ったり言ったりしていただろう。
「でも好きなんだよ~~」
「まったく…」
結局俺は酒を理由に愚痴を吐いて深夜までバーに居座った。
「ゔ、飲み過ぎた…」
やけ酒ほどではないがバーの雰囲気とマスターの人柄に甘えて飲み過ぎた。多少ふらつきながらも流石に配信も終わってるだろうということで家に帰る。
部屋は暗かった。寝室に行くとそこにはもう寝ている鈴が確認出来る。
無理もない。今日は朝6時には家を出ていったし何時に終わったのかわからないが夜の配信までしていたのだ。多分明日も早いんだろう。
「…はぁ…」
俺は情けない。恋人のスケジュールさえ把握出来ていないとは。まぁそこまで把握する必要はないんだろうけど。
とりあえずシャワー浴びて俺もそのままベッドに入って寝入った。
いつまでこの生活が続くのだろうか…




