第29話 毒の粘液と、包丁一本の距離
こんにちわんこっ
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予定はあくまで予定なので。。。。。
粘液モンスターは、ぬるぬるとした身体を揺らしながら迫ってきた。
蓬は後退しない。
五感強化のスキルが、わずかな空気の振動さえ伝えてくる。
ただし、強くなったわけじゃない。視えても、感じても、反応できなければ意味がない。
「……近い」
包丁の刃が、粘液を反射して鈍く光る。
ナメクジに似たそのモンスターは、ゆっくりと、だが確実に間合いを詰めてくる。
蓬は一歩だけ踏み込み、様子を見る。
そして――
「っ!」
斬った。
刃が粘液に触れる。だが切れない。
むしろ、刃が“絡め取られた”。
「うわっ、なにこれ……!」
粘液が刃にまとわりつく。
攻撃が、封じられる。
しかも包丁は、ふつうの料理用のものだ。強くも鋭くもない。
「まずい……!」
後退。だが遅い。
足元に、ぬるっとした感触――
「しまっ――」
滑った。
尻餅をつき、体勢を崩した。モンスターはその隙を逃さず、粘液を全身からぶちまけてくる。
「っ、くそっ……!」
蓬は反射的に身をよじり、ダンジョンの壁際へ転がり込んだ。
その瞬間、壁に突き出た“金属片”が視界に入る。
「……あれ、使える?」
迷っている時間はなかった。
手に取ったそれは、かつて誰かが落としたと思われる、細い鉄の棒。
鋭利ではないが、長さは包丁の倍以上。
蓬は呼吸を整える間もなく、それを握りしめて跳ね起きた。
「距離をとる、距離……!」
間合いを活かし、突き出す。
鉄棒の先が、粘液モンスターの身体を貫いた。
「……効いた?」
モンスターの動きが一瞬止まる。
が――すぐに粘液が棒を這い上がってくる。
「やっぱ、毒……!」
蓬は棒を振り払う。粘液を振り切ったその瞬間――
モンスターの身体に“ヒビ”が入った。
「え……?」
粘液が流れ落ち、崩れるようにその身が地面に広がった。
「……勝った?」
確信はなかったが、敵の気配が消えた。
蓬はゆっくりと息を吐き、壁に背を預けた。
「包丁、持ちかえた方がいいかもな……」
そう呟きながら、モンスターの残骸を見下ろした。
ふと、気づく。
さっき滑って、少しだけ粘液が腕についていた。
それなのに、皮膚はまったく異常がない。
「……毒、だったよね?」
粘液の強烈な臭いは、今でも鼻につく。
「普通、こういうのって……ピリピリしたり、かゆくなったり……しない?」
だが、自分には何も起こらなかった。
「……いや、まさか。そんな都合よく……」
頭では否定しても、身体は違和感を覚えていた。
――何かが、おかしい。
「でも……ちょっとは、慣れてきたかも」
毒、粘液、異形。
それでも恐怖に足をすくませることなく、目を背けず戦った自分。
蓬はまた、少しだけ前に進んでいた。
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