誕生日
江霜納雅は主人公ではありません
納雅の視界に広がるのは、階段の下にあるとは思えないほどの大きな空間であり、その中央には四角い6人用の机が置いてあり、座ってくださいと言うかのように椅子が一つ引いてあった。
何故か部屋の奥に或る扉からあの少女の声が聞こえる。
「ようこそ。早速ですが、どうぞおかけください。」
納雅は言われるがままに席に着いた。そしてその少女はドアを開けて向かいの椅子に座った。
「自己紹介をさせてください、私は掛須と申します。お気軽にいろいろと質問してくださってもかまいませんよ?」
納雅は言われた通り質問をした。
「休まないと、ってここでどうやって休むの?」
まぁ焦りなさるな、と言わんばかりの憎たらしいジェスチャーをしてから少女は言った。しかしそれはあまりにも突飛的な発言だった。
「おねえさん、誕生日は今日だよね。お祝いしよ?」
納雅は恐怖で声が出なかった。何しろ、面識のない小さな子供が自分の誕生日を知っていた、そのうえ今いるのが階段下の亜空間とも思えるような場所だからだ。
納雅にかまうことなく、少女は指をパチンと鳴らす。するとドアの奥から三角形のケーキが二つ飛んできた。片方はフルーツが多く乗ったいかにも子供が好きそうなもの、そしてもう片方は納雅の好物のいちごのモンブラン。
納雅の意識は大人らしからぬ行動ではあるがそのケーキに向かっていた。まるで操られていたかのように。
そしてそのモンブランは納雅の目の前に置かれる。いつの間にか彼女の手にはフォークが握られており、それを見て掛須と名乗る少女は「どうぞ、私からのプレゼントです。」と言った。
二人は束の間のデザートを楽しんだ。
納雅の口は軽くなったようで、彼女は今の愚痴を吐き捨てる。
「同僚は!私に期待ばかり重荷ばかりを押し付けて!!手伝いもしないで毎日を気楽に過ごしてる!!なんで!!!!手伝ってくれてもいいじゃん!!!」
「どうしたいの?どんなふうにしてほしいの?」と少女は言った。
「もちろん手伝っては欲しいんだけど、自分でやりたい、というか手伝うそぶりを少しでも、ほんの少しでも見せてほしい。」
仕事は辛い?と優しげな声でささやく。
「疲れるしストレスがたまるよ。でも、それでも、終わった時、完成した時には圧倒的な嬉しさがあるの。」
それを聞いて少女は言った。
「特別だよ?本当は大人相手ならものすごい額を請求しているところだけど、100円。100円頂戴。これで欲しいケーキをもう一個買ってきてあげる。それに100円くれたら、私もっと良いものをあげられるよ?きっと気に入るはずだよ?」
何だセールストークだったのかと思いながらも納雅は自棄になっており、めちゃくちゃなことを言いながら100円を手渡した。
「じゃあこれで苺の乗ったホールケーキを買ってきて。」
いいよとうなずき少女は一度席をたち、10秒もたたないうちに望みの品を携えて席に戻った。そのうえ、これはお釣りだと言って19円返した。
そして彼女は話始める。
「さてと、良いものをあげましょうか。先に言いましょう。私は魔法売りです。魔法売りなんです。驚きましたか?自慢してもいいんですよ。あ、ちなみにそのケーキを好きに食べながら聞いてください、なんなら持って帰ってくれてもかまいません。」
ふぅ、と一息つき、続けた。
「切り替えまして。今から言う3つの中からどれか一つを選んでください。それがあなたの欲しいものになります。」
読んでいただきありがとうございます!!!
長くなってしまいました…。
なんならこれからもこのくらいの長さになるかもなのでご覚悟を。




