第13話 次元要塞攻略戦
【アクシオム帝国暦2847年 午前6時00分】
古代文明の遺産を手に入れてから3時間後―― プリモーディアル星系の最深部では、史上最大の作戦が開始されようとしていた。
【混沌の次元要塞発見】
「天水、見て。あれが敵の本拠地よ」
レンが指差した方向には、想像を絶する構造物が浮かんでいた。
それは要塞というより、現実そのものを歪める巨大な異形の存在だった。常に形を変え続け、時には球体に、時には立方体に、そして時には人間の理解を超えた多次元図形になる。
『あれが混沌の次元要塞「ヴォイド・シタデル」だ』
パヤナークの声に、これまでにない緊張があった。
『混沌の皇帝カオス・エンペラーが直接統治する、宇宙で最も危険な場所だ』
要塞の周囲には、無数の混沌の戦艦が配置されている。それらの船も常に形を変え続け、まるで悪夢の中の艦隊のようだった。
【皇帝アクシオム様の最終作戦指令】
星間要塞アクシオム・プライムの作戦司令室では、皇帝アクシオム様が最後の作戦会議を主催していた。
『諸君、ついに最終決戦の時が来た』
皇帝様の声が、全艦隊に響いた。
『混沌の次元要塞を攻略し、カオス・エンペラーを打倒する。これにより、宇宙に真の平和が訪れるのだ』
『天水よ、汝の力が最も重要だ。創世の間で得た「時空操作能力」を使い、要塞の防御を突破せよ』
「はい、アクシオム様。必ずや成功させます」
天水が力強く応えた。
【アクシオムお姉様の戦術指導】
私は作戦司令室で、ユリアナに最終指示を与えていた。
「ユリアナ、お前の『現実改変能力』は今回の作戦の鍵となる。混沌の要塞は常に形を変えるが、お前の力でその変化を固定化するのよ」
「はい、アクシオムお姉様。この新たな力を完全に制御してみせます」
ユリアナの背中の卍のタトゥーが、血のように赤く滲んでいる。それは彼女の力が最高レベルに到達していることを示していた。
「パヤナークの『次元移動能力』と合わせれば、要塞内部への侵入が可能になる。失敗は許されないわよ」
私の機械的な首飾りが赤く脈動し、絶対的な命令の重さを表現していた。
【帝国艦隊総攻撃開始】
『全艦隊、攻撃開始!』
ガラクシア提督の号令と共に、1万隻を超える帝国艦隊が一斉攻撃を開始した。
量子魚雷、次元砲、時空兵器――帝国の最新兵器が次元要塞に向けて発射される。
しかし、要塞の防御は予想以上に強固だった。
混沌のバリアが攻撃を吸収し、逆に帝国艦隊に向けて反射してくる。帝国の戦艦が次々と撃沈されていく。
「このままでは艦隊が全滅してしまう!」
ステラリス元帥が絶望的な報告をした。
【天水の時空操作発動】
『今だ、天水!』
皇帝様の指令と共に、天水が創世の間で得た新たな力を発動した。
「時空操作――『時間停止』!」
天水の額の卍の印が激しく光り、戦場全体の時間が停止した。
混沌の攻撃も、帝国艦隊の動きも、全てが静止する。
しかし、天水とパヤナークだけは時間停止の影響を受けずに行動できた。
『素晴らしい、天水。この隙に要塞に接近するのだ』
【要塞内部への侵入】
パヤナークが次元移動能力を発動し、天水と共に次元要塞の内部に瞬間移動した。
要塞の内部は、外部以上に異常な空間だった。
上下左右の概念が存在せず、重力が複数の方向に働き、壁と床と天井が常に入れ替わる。まさに混沌そのものが支配する空間だった。
「こんな場所で戦えるの?」
天水が困惑していると、突然巨大な影が現れた。
【混沌の守護者たち】
『侵入者め!よくぞここまで来た!』
現れたのは、混沌の四大守護者だった。
カオス・ナイト――混沌の騎士。常に形を変える甲冑を纏い、現実を切り裂く剣を持つ。
ヴォイド・ウィザード――虚無の魔法使い。存在しないものを存在させ、存在するものを無に帰す。
ディストーション・ビースト――歪曲の獣。時空を歪めて敵を別次元に飛ばす。
カオス・エンジェル――混沌の天使。美しい外見とは裏腹に、精神を破壊する力を持つ。
『我らが主カオス・エンペラーに会いたくば、まず我らを倒してみせよ!』
【四大守護者との激戦】
天水とパヤナークの戦いが始まった。
パヤナークが巨大な龍の姿となり、カオス・ナイトと剣戟を交える。現実を切り裂く剣と、龍神の爪が激突するたび、空間に亀裂が生じた。
天水は時空操作能力でヴォイド・ウィザードの魔法を防ぎながら、卍の力で反撃する。
「『時間加速』!」
天水の動きが超高速になり、ディストーション・ビーストの攻撃を回避しながら近距離攻撃を仕掛ける。
しかし、四対二では分が悪い。
【ユリアナの現実改変】
その時、ユリアナが現実改変能力を発動した。
「『現実固定』――この空間の物理法則を地球標準に統一する!」
ユリアナの力により、混沌に支配されていた要塞内部の空間が、通常の物理法則に従うようになった。
上下左右が明確になり、重力が一定方向に働き、時間の流れが正常化した。
「これで戦いやすくなったわ!」
【救世主親衛隊の突入】
12名の救世主親衛隊も、ユリアナの能力で開かれた次元の裂け目から要塞内部に突入してきた。
クリスタリアが精神攻撃でカオス・エンジェルと対戦し、機械戦士が完璧な計算でヴォイド・ウィザードの魔法を予測する。
生体戦士は自己修復能力で何度でも立ち上がり、ディストーション・ビーストの攻撃に耐える。
【愛犬ジェットの活躍】
戦いの最中、愛犬ジェットが重要な発見をした。
『ジェットが、カオス・エンペラーの居場所を見つけた!』
パヤナークが興奮して報告した。
要塞の最深部に、カオス・エンペラーの玉座の間があることを、ジェットの特殊な嗅覚が察知したのだ。
「ジェット、よくやった!」
天水がジェットを褒めた。
【四大守護者の撃破】
救世主親衛隊の加勢により、戦況が一気に変わった。
パヤナークの「次元龍神砲」がカオス・ナイトを貫き、天水の「時空卍斬」がヴォイド・ウィザードを消滅させる。
クリスタリアの「精神支配」がカオス・エンジェルを操り、機械戦士の「完全計算砲」がディストーション・ビーストを正確に撃破した。
『ぐあああああ!まさか我らが敗れるとは!』
四大守護者が次々と倒れていく。
【カオス・エンペラーの玉座の間へ】
守護者たちを倒した一行は、ついにカオス・エンペラーの玉座の間に到達した。
そこは要塞の中で唯一、完全に静寂が支配する空間だった。
玉座には、想像を絶する存在が座っていた。
カオス・エンペラー――混沌の皇帝。
その姿は常に変化し続け、時には人間の姿を、時には悪魔の姿を、時には抽象的な概念そのものの姿を取る。唯一不変なのは、その存在から発せられる圧倒的な混沌の力だった。
『よくぞここまで来た、秩序の使者たちよ』
カオス・エンペラーの声が響いた。
『だが、汝らの旅もここで終わりだ。この宇宙を混沌に返し、全てを無に帰してやろう』
【最終決戦の開始】
『我こそが混沌!我こそが絶対!この宇宙に秩序など不要だ!』
カオス・エンペラーが立ち上がると、要塞全体が激しく震動した。
『天水よ、これが真の最終決戦だ』
パヤナークが戦闘態勢を取った。
『汝の全ての力を解放する時が来た』
天水の額の卍の印が、これまでで最も強く輝いた。古代文明の遺産、創世の間の力、そして仲間たちとの絆――全てが一つになろうとしていた。
「みんな、行くよ!宇宙の平和のために!」
【宇宙創造vs宇宙破壊】
天水とカオス・エンペラーの戦いは、まさに創造と破壊の究極の対決だった。
天水の「創造の光」とカオス・エンペラーの「破壊の闇」が激突し、その衝撃波で要塞全体が崩壊を始める。
『無駄だ!秩序など所詮は幻想!全ては混沌に帰るのだ!』
カオス・エンペラーの攻撃が天水を襲う。
しかし、その時――
【皇帝アクシオム様の真の力覚醒】
『天水よ、私の力を受け取れ』
突然、皇帝アクシオム様の声が響いた。
天水の体に、宇宙創造神としてのアクシオム様の力が流れ込む。
「これは...アクシオム様の真の力!」
天水の卍の印が金色に輝き、その光は要塞全体を包み込んだ。
『馬鹿な!宇宙創造神の力だと!?』
カオス・エンペラーが動揺した。
【最終奥義「創世卍光」】
『今だ、天水!最終奥義を放て!』
「『創世卍光』――宇宙に永遠の平和を!」
天水が最終奥義を発動した。
金色の卍の光が宇宙全体に広がり、混沌の力を浄化していく。
『ぐあああああ!我が混沌の力が...消えていく...』
カオス・エンペラーの身体が光に包まれ、徐々に消滅していく。
『しかし...これで終わりではない...混沌は...永遠に...』
カオス・エンペラーの最後の言葉と共に、次元要塞全体が崩壊を始めた。
【脱出と勝利】
『急げ!要塞が崩壊する!』
パヤナークが次元移動能力で全員を要塞の外に脱出させた。
崩壊する次元要塞を背景に、一行は安全な宇宙空間に到達した。
「やった...ついにカオス・エンペラーを倒した」
天水が安堵の表情を浮かべた。
『よくやった、天水』
皇帝アクシオム様の声が響いた。
『これで宇宙に真の平和が訪れる。混沌の脅威は完全に排除された』
【宇宙の変化】
カオス・エンペラーの消滅と共に、宇宙全体に大きな変化が起こった。
混沌に支配されていた星系が正常化し、歪んだ時空が修復され、破壊された惑星が再生されていく。
そして何より、宇宙のあらゆる場所に卍の印が現れ、帝国の栄光が輝いた。
「美しい...」
レンが感動の声を上げた。
「これが真の平和なのね」
【帰還の準備】
『諸君、帰還の時だ』
皇帝様の命令で、帝国艦隊が帰還準備を始めた。
しかし、真の戦いはまだ終わっていなかった。次章では、さらなる試練が待ち受けているのだった。
愛犬ジェットが何かを察知したように、遠い宇宙の彼方を見詰めている。
そこには、まだ見ぬ強大な敵の気配があった...
【続く】