給付金VS減税 どちらが良いのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は参議院選挙の経済対策では給付金と減税が与野党で対比されていると思います。
同じ額を使うとするのであれば給付と減税どちらが良いのかについて議論していこうと思います。
質問者:
私の印象では選挙のたびに「給付金」を与党は言っている気がするんですけど……。
筆者:
実際のところ国政選挙では5選挙連続で給付を公約に掲げているようです。
現実の政策としても2020年から6年連続で給付がなされています。
20年 特別定額給付金10万円(全国民に支給)
21年 10万円給付(住民税非課税世帯のみ)
22年 10万円給付(住民税非課税世帯のみ)
23年夏 3万円(住民税非課税世帯のみ) 23年冬7万円(住民税非課税世帯のみ)
24年春 7万円(住民税非課税世帯のみ)
24年定額減税(実質全国民への給付)4万円(住民税非課税世帯は7万円+18歳以下の子供1人に月+5万円)
25年 子供1人に2万円、住民税非課税世帯に3万円
ただし、全世帯への影響があったのは20年と24年だけだったので普通の世帯の方は恩恵はあまり感じなかったのかもしれませんけどね。
質問者:
住民税非課税世帯が中心とはいえ、こんなにも給付されていたんですね……。
ところで、どうして住民税非課税世帯ばかりが給付されているんですか?
筆者:
住民税非課税世帯は「困窮世帯である」と言う認識が強いからです。
それに加え、住民税を納付するかどうかは市町村で把握しているために非常にやりやすいと言った性質があります。
そのために、給付の場合では住民税非課税世帯OR全世帯と言う2択であることが多いのです。
今回の自民党の2万円の一律給付+子供に追加給付案は2兆円規模と言われています。
質問者:
なるほど……。
筆者さんは住民税非課税世帯への給付についてはどう思われますか?
筆者:
住民税非課税世帯はお住まいの市町村によって少し異なりますが、目安としては前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合、年収204万4,000円未満)
となります。
しかし、年収200万円以上でも苦しい生活の方は多くおられますよね? そうなると給付をするのであれば一律による給付の方が適切であると僕は考えます。
質問者:
例えば年収300万円の方が裕福とはとても思えませんからね……。
因みに予算規模としては給付にどれぐらいお金がかかってきたのでしょうか?
筆者:
給付金は住民税非課税世帯10万円給付で1兆円ほど、給付費用に毎回500億円(ただし定額減税は給付費用はかからなかったものの経理が複雑だったので実務者が涙をした)、
24年の定額減税は5兆円、
20年の特別定額給付金は12兆8000億円かかったようです。
因みに減税をしたらどの程度の規模のものが実行できるのかと言いますと、
ガソリン税の暫定税率を廃止すれば1.5兆円、
所得税の壁を178万円に上げるのに7兆円、
消費税を一律5%にする10兆円(0%は20兆円以上)、
といったところです。
質問者:
給付金は実際のところちゃんと国民の生活を救えているんでしょうか?
筆者:
特別定額給付金について家計簿アプリ『マネーフォワード ME』の約23万人のユーザーの実態調査によると、
支出全体を見た広義の指標で27%ほどが給付金を生活費として使用したそうです。
つまり、結局給付しても7割以上は「将来の不安のため」に貯金をしていると言えるのです。
ただ、収入が低いほど生活費に使う割合は4割、5割と上がっており全く無意味では無いようですけどね。
◇国民が減税を求める理由
質問者:
大体の給付と減税の様相は分かってきたんですけど、
結局、同規模の給付と減税をするとなったらどちらの方が良いのでしょうか?
例えば2万円給付ですとガソリンの暫定税率の廃止、5万円の給付ですと178万円の壁引き上げなどが比較されると思うのですが……。
筆者:
確かに石破首相が言うように制度改革を行い法律として施行してから、
実際に反映されるまで時間がかかります。
更に言うのであれば消費税やガソリン税であれば減税額がそのまま価格引き下げに繋がるとは限りません(法人側が利益に一部組み込むため)。
しかし、よくよく考えて欲しいのですが、「国民を救いたい」と心の底から思ってきているのであれば通常国会の予算で組み込んですぐさま給付する方向にもっていくでしょう。
秋の国会が開いたと同時に成立しても12月末に給付が間に合うかどうか? のレベルのようですからね。
この給付は「選挙対策」だと国民側が見透かし、「給付分以上をどうせ増税してくるんだろ?」と嫌気が差しているのだと思います。
質問者:
確かに本当に救いたいのならどうして、通常国会の予算で決めなかったのかと……。
筆者:
こういったことは世論調査でも出ており、
共同通信社の25年7月の与党が掲げる現金給付と野党の主張する消費税減税のどちらが望ましいかの調査では、
「消費税減税」が76.7%、「現金給付」は17.9%
更に年代別で見た回答では、若年層(30代以下)で消費税減税が92.1%
とあります。
質問者:
すぐに反映されるのが給付なのに減税をそこまで求めているのはどうしてなんでしょうか?
筆者:
政府の「お金の使い方の信頼度」が下がってきているのだと思います。
少し前の話ではありますが2008年~12年には「消えた年金」問題などがあり、再調査をしても結局のところ5000万件中2000万件は解明困難と言う事で調査打ち切りになりました。
最近では政治家が裏金を作って懐に入れていることが発覚しましたよね?
このように政治家はお金を隙あらば懐に入れようと躍起になっている状況ですから、
「政治家は信用ならん! 自由に使わせてくれ!」
と国民は訴えているという事です。
実際のところ国民に給付するたびに500億円~1000億円ほど給付費用がかかりますから減税の方がロスが少なくて色々なことにその分使えて有効だと思います。
◇「恒久減税」を望んでいる
質問者:
去年の定額減税は一応は「減税」の名前が付いていたのにもかかわらず、凄く不評だったのはどうしてなんでしょうか?
筆者:
まず定額減税は1回のみの減税であり、金額は定額だったものの所得税や住民税が少ない場合は一括で手取りが増えないなど「給付より悪い」状況でした。
しかも事務手続きを経理に押し付ける格好だったので、
僕がコンサルタントとして関与しているクライアントさんも、
「定額減税についてどうしたらいいの?」
と言うお問い合わせが去年の4月ぐらいからかなり多かった状況でしたね。
問い合わせが多すぎたので調べまくって短期間で詳しくなりました(笑)。
24年の定額減税は完全に「減税ニックネーム」であり、
国民が求めているのは「財源無き恒久減税」なのです。
質問者:
なるほど、実態として「給付金の劣化」では不満だという事なんですね……。
筆者:
現状は国民負担率が増え続け、更に物価高で
「生活に見通しが立たない」
状況です。
日本の現役世代のGDP成長率はアメリカよりも上であるというデータまで存在するほどで、それでも現役世代が豊かになっていないというのは
「税金・社会保障の取り過ぎ」
であることは明白であると考えます。
どうしても、「財源」が欲しいのなら法人税から取るべきでしょうね。
個人は限界に近いと思います。これ以上負担を増やすようなら更なる少子化や社会不安が加速していくと思います。
質問者:
なるほど……。
しかし、減税の際に必ず言われることとしては「所得が多い人の方が減税額が多い」と言う事ですが……。
筆者:
逆にお聞きしたいのですが、頑張りに比例して減税額が増える(手取りが増える)ことが「良くないこと」とされている報道や政治家が蔓延っている状況は「地獄」と言わざるを得ないと思います。
一方でマスコミや政治家は生産性を上げろ、社会として効率を上げなくてはいけないと言っているわけです。これほどの矛盾があって良いでしょうか?
また、減税の金額ベースで見た場合は所得が高い人の方が多いですが、所得に対する「割合」で見た場合は所得税の壁引き上げでも消費減税でも所得が低い人の方が恩恵が高いとされています。
高い給料を得ているだけで「社会的にプラスの生産性が無い」と言えるのがマスコミと政治家だと思うんですけどね。
質問者:
そ、そこまで言うのはどうかと思いますけど……。
でも「ダブルスタンダード」の印象はありますよね……。
筆者:
基本的には物価高又は最低賃金に応じて自動的に所得控除が増える(税金が減る)ような仕組みづくりをしなければ恒久的に日本国民は苦しみますし、
控除を引き上げる際に永遠と無駄な議論を交わし続けることになります。
また、トランプ大統領は日本の消費税を非関税障壁だとしています(アメリカ側に消費税が無い州が多いために、利益が増える又は価格競争に有利になるため)。
消費税を廃止し、財源と言うのなら法人税をその分上げることでその障壁を薄めつつ、
消費税の最も悪い「賃下げ税制(給料が控除につかえない)」である要素を無くすことが可能になると思います。
まぁ、そもそも給付か減税か? と言う話では無く「両方やれ」と言いたいですけどね(笑)。
こうした考えが広まるように全力を尽くしたいですね。
今後もこうした政治経済について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。