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第15話 ロックゴーレムの謎



「はい……蓮さんが私を助けてくれた時に戦った――ロックゴーレムについてのお話です」


 唯は勿体ぶった様子で、そう言った。


「ロックゴーレムの話?」


 花火は、不思議そうに首を傾げる。


「花火さんは、知りませんよね。だって私と蓮さんしかあの場にはいませんでしたし!」


 唯は勝ち誇った表情をする。


 ……なんか、隣からゴゴゴゴって音がするんだけど?


 あれ? これ、修羅場終わってない感じ?


「そ、それで! そのロックゴーレムがどうしたんだ?」


「あのロックゴーレム……何かおかしくありませんでしたか?」


「そういえば……」


 確か、本来、ロックゴーレムの弱点であるはずの赤い石が有り得ない程に硬かったんだっけ。


 あれには、一瞬、肝を冷やされたな。


「花火さんにわかるように、説明すると……私は上層の探索をしている時に他の探索者にロックゴーレムを押し付けられました。そんな絶体絶命な私の元に蓮さんが駆けつけ、見事、ロックゴーレムを討伐して助けてくれたんです! いやぁ、あれはかっこよかったです……!」


「それ、あなたが蓮君に助けられたことの説明と感想じゃない? 私はロックゴーレムの説明が聞きたいんだけど……?」


「おっと! 失礼しました! 私としたことが、あまりにも助けられた時が印象的過ぎて想いが溢れてしまいました」


「っ……! 蓮君、なんかこの子、めちゃくちゃムカつく!」


 意地悪なことを言う唯に、花火は眉間にシワを寄せていた。


 不味い、そろそろ花火が爆発するぞ……!


「コホン……そ、それで! そのロックゴーレムの弱点が異様に硬かったんだよな?」


「弱点って……あの赤い石だよね? あれが硬い……?」


 花火は眉を顰めた。


「本来は子供でも武器があれば簡単に壊せるほど、脆いはずなのですが……今回は蓮さんが何度、剣を突き刺しても無駄だったんです」


「ふぅん……」


 花火は興味深そうに、顎に手を当てる。


「それに関して、少しわかったことがあるので共有しようと思いまして」


「そうなのか?! それはありがたい」


 あのロックゴーレムのことは少し気になっていたのだ。


「では……まずはこれを見てください」


 そう言って、唯はカバンから1つの石を取り出した。


 石は、手のひらサイズで、紅玉のような鮮やかな赤色をしていた。


 俺は、この石に見覚えがあった。


「これってもしかして……ロックゴーレムの弱点の石か?!」


「ビンゴです! 流石は蓮さん、一目でわかってしまうなんて……」


 まあ、実際にロックゴーレムと戦ったからな。


 しかし、唯はどうやってこれを回収したのだろうか?


 普通、ロックゴーレムは弱点の石をドロップしないし……ドロップしていたとしても、いつ回収したんだ?


 すると、花火が興味深そうに顔を赤い石に近づけてきた。


「へぇ……これがロックゴーレムの弱点の石? それにしては……やけに色が濃いような……」


「色が濃い……?」


 赤い石を凝視してみると、確かにいつも見ているロックゴーレムの弱点の石よりも色が濃いような気がした。


「す、凄い! よく気づきましたね……」


「まあ、伊達に5年以上ダンジョン探索してないからねー」


 5年……そういえば、花火は中学生の頃からダンジョン探索をしていたんだっけ?


「それで、この石の色が濃い理由はどうしてなの? こんなの、見た事ないんだけど……」


「それは……この石が人工的なものだからです」


「人工的……?!」


 俺は自分の耳を疑った。


 待て待て待て……この石はロックゴーレムから取ったものじゃないのか?!


「ど、どういうことだ? ……誰かがこの石をロックゴーレムに嵌め込んだってことか?」


 すると、唯はこくりと頷いた。


「誰かが、元々ロックゴーレムの背中に嵌っていた石を取り出し、それを改造することで硬くし……そして、また戻したのだと思ってます」


「っ……加工? また戻す? ……ごめん、俺にはよくわからないんだけど……」


 そもそも、ロックゴーレムの赤い石は、ロックゴーレムの動力源。

 それを取り外せば、その時点でロックゴーレムは死んでしまうだろう。


 それに、加工って何だよ。

 モンスターの一部を加工する技術なんて……聞いたことも見たこともないぞ?


「でも、本当なんです……昨日、私はこれを《《とある会社》》で見てもらったところ、そのような結果が出たんです」


「会社?」


 すると、唯は何か思い出したかのように、カバンから一枚のパンフレットを取り出した。


「クロノテクノ社という、ダンジョンで産出されたドロップアイテムの研究やドロップアイテムの武器への加工をしている私のお父さんの会社です」


「へ?」


 クロノテクノ社……俺はその名前を知っていた。


 なにせ、今、俺の使っている剣はクロノテクノ社によって作られたものなのだから。


 知らない人はいないのではないか、というレベルで有名で大企業……それがクロノテクノ社だ。


 唯がそこの……令嬢?! 凄いな……!


「それはそうと、どうやってロックゴーレムの石を改造したの? 普通、そんなことは無理なはずだよ?」


 花火がそう質問すると、唯は申し訳なさそうな表情をする。


「それが……全くわからないんです」


「あのクロノテクノ社がお手上げなのか……」


 となると、この赤い石にはクロノテクノ社ですら知らない未知の技術が使われているのか……。


「で、でも……! もっと時間をかければ、何か手掛かりが得られるかもしれない、とのことでした!」


「じゃあ、いずれ、真相がわかるかもしれないんだな?」


「はい……」


 しかし、唯の顔はあまり明るくなかった。


「どうかしたのか?」


「もしかしたら……証拠隠滅のために、ロックゴーレムの改造を行った人が蓮さんに危害を与える可能性がありまして……」


「っ……?!」


「実際に、クロノテクノ社は昨日……何者かに襲撃されたらしいんです」


 嘘だろ……。

 調査を開始した当日に襲撃!?


「ちなみに、大丈夫だったのか?」


「はい……なんとか、追い払う事ができたそうですが……襲撃者には逃げられてしまったそうです」


「――じゃあ、次は私たちの番ってこと?」


「はい……すみません、こんなことに巻き込んでしまって……」


 唯は伏し目がちにそう言った。


「いや、仕方ないだろ……全部悪いのは、ロックゴーレムを改造した奴なんだから」


 モンスターを改造して、それを上層に放つ……そんな最低なことをしてきた奴が一番悪いのだ。


 巻き込まれてしまうのは……まあ、もう慣れた。


「本当にすみません……また、何かの時のお詫びさせてもらいますね……!」


 そう言いながら、唯は赤い石をカバンにしまう。


 その時、一枚の紙がするりとカバンから、机の下へ落ちた。


「……? 何か落としたけど……」


 俺は机の下に潜り、その紙を拾い上げる。


「これは……?」


 その紙は何かのチケットのようだった。


 紙には『日本探索者バトルアリーナ参加券』と書かれていた。


 日本探索者バトルアリーナ……通称、『探索者バトアリ』。

 確か、モンスターの討伐数や探索者同士の直接対決によって、日本で最も強い探索者を決める大会だったはず。


 その参加券?


「唯は、『探索者バトアリ』に参加するのか?」


「そ、そういうわけではなくて……『探索者バトアリ』はクロノテクノ社が協賛しているので参加券をお父さんがくれたんです……まあ、私なんかが参加したところで予選敗退がオチなんですけどね……」


 あははっと、唯は苦笑した。


『探索者バトアリ』か……。

 まあ、最強とかあまり興味はないし、俺たちには関係のない世界だろうな。


 そう思っていた時――


「ねえ、蓮君……これ、参加しない?」


 花火が何か悪い考えを思いついたように、そう言った。


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