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〝悪役令嬢〟ですが逆行転生したのでヒロインの代わりに世界を救ってきます!

作者: 下菊みこと

私は悪役令嬢だった…らしい。


エウローパ大陸の中でも最も偉大な国、リュキア王国。


その筆頭公爵家ペイナイト家の娘として生まれたのが私ゾエ・ペイナイト。


銀の髪に赤い瞳のグラマラスな美人…と婚約者は言っていた。


私には生まれながらの婚約者がいた。


王太子クロヴィス・アモリ・リキュア殿下。


優しくて、いつも一生懸命な人だった。


銀の髪に緑の瞳が美しい人だ。


私たちは仲が良くて、切磋琢磨してお互いを高め合ってきた。


そこには穏やかな愛もあったと自負していた。


けれど、あの女が現れてからおかしくなった。


精霊の愛し子、リリス。


ピンクのふわふわの髪に、金色の瞳の女の子。


彼女は自分を「ヒロイン」と称して、私を「悪役令嬢」だと言った。


私が悪役令嬢だから、「メイン攻略対象」であるクロヴィスと仲良くなるのはおかしいと。


私をバグだと言い放った。


そして好感度アップアイテムなるものを使って、クロヴィス殿下を誑かした。


洗脳したのだ。


洗脳されたクロヴィス殿下は突然おかしくなり、国王陛下と王妃殿下が国外へ出ている時に私をありもしない罪で断罪した。


聖女である「精霊の愛し子」を虐めた罪だ、もちろん冤罪である。


そして国王陛下と王妃殿下が帰ってくる前に、裁判もせず公衆の面前で私を吊し上げた後そのまま処刑させた。


本来のクロヴィス殿下ならしないような越権行為だ。


そして私は、一度死んだ…のだが。


「幼い頃に、戻ってる…」


私は何故か、二度目の人生が与えられたらしい。















私はゾエ・ペイナイトとして二度目の人生を授かった。


なのでその意味を考えてみる。


おそらく、「世界」は〝あの〟精霊の愛し子では人類を滅びの運命から救えないと判断したのだろう。


そこで、あの精霊の愛し子の本性を知る私の記憶を保持して時間を巻き戻した…?


ならば、私がやることは一つ。


あの精霊の愛し子を待たずに、つまりは魔王復活の前に世界を救う。


………魔王封印の強化だ。


魔王があのタイミングで復活するのも、その時にあの女が精霊の愛し子として覚醒するのも、知っているのは私だけ。


だから、私が何とかしないと。


魔王封印を強化できれば、魔王は復活してこない。


そしてあの女が精霊の愛し子として覚醒することもないから、あの女が平民なのに貴族社会にちょっかいをかけてくるということも起きない。


世界を救えるし、クロヴィス殿下を救える。


私は、幸い生まれた時から「光の魔力」を待っている。


非常に希少な魔力で、この魔力を焚べれば魔王封印の結界を強化できる。


ただ問題は…魔王封印の結界を張った魔王の霊廟の在処がわからないこと。


魔王の霊廟の場所は初代精霊の愛し子の遺言により伏せられているのだ。


悪しき者たちが魔王復活を目論んだりしないためだ。


そこで私は、幼い…七歳の身体で、使用人たちや護衛の隙をついて出奔した。


魔王の霊廟を探すためである。


今回の人生では、こんなことをしたのでクロヴィス殿下とは婚約破棄になるかもしれない。


あるいは、前の人生のようにクロヴィス殿下から愛されることはないかもしれない。


だって、いつ帰ってこれるかもわからないから。


でも。


それでも、世界を救えるのなら。


―…貴方を救えるのなら、なんだってできる。

















それからは、世界中を一人で旅した。


幸い、出奔する時にへそくりしていたお金を持ち出すことができたのでお金には困らない。


また私は「悪役令嬢」だからなのか、体内の魔力量が多いので常に結界を張っていられるため悪い人が私を害そうとしても無理。


だから安全に旅を続けられた。


…のだが、私はもう十七歳になってしまった。


魔王封印の時は近い、早くなんとかしなければ。


そんな時だった。


「ねえ、貴女かしら」


「え」


「魔王の霊廟を探し続ける少女って、貴女?」


「貴女は…」


「私はソフィア。魔王の霊廟を管理する一族の末裔よ。もう、私しか管理者はいなくなってしまったけれど」


…見つけた!


魔王の霊廟を管理する一族がいるなんて初耳だけど、場所を知っている人がいるなら助かった!


緑髪に青い瞳の不思議な雰囲気の少女は言う。


「ねえ、貴女は何故魔王の霊廟を探しているの?」


「私はリキュア王国の筆頭公爵家の娘、ゾエ・ペイナイトとして…私の希少な光魔力を魔王封印の結界に焚べて魔王復活の兆しを閉ざすために、魔王の霊廟を探してきました!」


「そう…魔王復活の時は近い。貴女が本当にその目的で光魔力を溜め込んできたのは、その身に宿す魔力でわかる。いいわ、案内します」


「…ありがとう!!!」


そして私は、魔王の霊廟に案内された。


案内は転移魔術で行われたので、場所は把握できない。


けれどそれで問題ない。


私はこの十年間溜め込んだ光魔力を、全て魔王封印の結界に焚べた。


「ありがとう。貴女の高純度な光魔力のおかげで、今後五百年は魔王の復活はなくなったわ」


「よかった…」


「貴女が何故そこまで世界に献身したのかは知らないけれど…よく頑張ったわね」


「えへへ…一つは、世界を救うためです。もう一つは、好きな人を助けるためです」


「そう…素敵ね」


彼女は私に微笑んだ。


「それでこそ、本来私がなるはずだった気高い公爵家の娘だわ。…まあ、貴女も本来なら〝精霊の愛し子〟になるはずだったわけだし色々巻き込まれ事故だけど…貴女という素敵な〝悪役令嬢〟に免じて〝世界のバグ〟もなにもかも、許してあげる」


「え、え?」


「私も今、婚約者に恵まれて幸せだしね。じゃ、さようなら。ああ、そうだ、世界は救われたからその証明にこの〝星の水晶〟を授けます。これに魔力を込めれば、貴女が魔王封印の結界を強化した証明が現れます」


「ちょっと待って、貴女何を知ってるの、色々説明を…」


私はそこまで言ったところで、彼女に転移魔術で転送された。


転移した先は、生家だった。


「…え?」


「な、侵入者!?」


「いや、まさか…そのお髪と瞳は…ゾエ様!?」


「え?ええ、そうよ。ただいま」


「…旦那様ー!奥様ー!」


突然の私の帰還に、みんなが騒ぎ出す。


これは面倒なことになりそうだ。















結局私はその後すぐに現れた父と母に魔術で血の繋がりを確認されて、本物のゾエだと証明されるや否や母にほっぺを叩かれた。


その後母に思いっきり抱きしめられて、泣かれてしまった。


心配かけたからなぁ。


「ごめんね、お父様、お母様」


「私こそ早く見つけてあげられなくてごめんね、ごめんね…!でもどうして急にいなくなってしまったの…!心配したのよ!」


「いや、これは全部お父様とお母様が悪かった。ごめんな」


「あ、いや、違うの、私が悪いの!世界を救うためとはいえ、何も言わずに出てきてしまったから」


「ん?」


「え?」


「世界を?」


その後は色々詰問された。
















「つまりは貴女が魔王封印の結界を強化して、世界は救われた…のね?」


「う、うん。でも内密にしてほしいの…」


「大事にはしたくないから?」


「う、うん。だめ?」


「そりゃあダメだろう!君は僕の婚約者兼恋人兼世界を救った乙女として大々的に発表されるんだから!」


「…え?」


その声は。


その愛おしい声は。


「やあ、僕の可愛いゾエ。久しぶりだね。待ってたよ」


「クロヴィス、殿下…?」


「うん」


「クロヴィス殿下ー!」


私は思わずクロヴィス殿下に思いっきり抱きついた。


クロヴィス殿下はそんな私を軽々と抱き止める。


「おかえり、ゾエ。あの日からずっと、君の帰りを待ってたよ」


「うう、クロヴィス殿下、クロヴィス殿下…」


「世界を救うなんて大それたことをやってのけるなんて、さすがは僕の婚約者!父と母に懇願して、婚約をそのままにして待っていた甲斐がある!」


「クロヴィス殿下…どうして、待ってくれてたの…?クロヴィス殿下にあるのは、幼い頃の思い出だけですよね…?」


「そうだねぇ、君と違ってその一度目の人生とやらの記憶はないけど」


「待ってどこから盗み聞きしてたの?」


「君との幼い頃の思い出だけでこの歳まで待てるくらい、君への初恋を拗らせていたのさ。幼い頃から、ずっと君を想っていた。忘れられなかった。愛してるよ、僕の姫君」


「………クロヴィス殿下ー!好きー!」


「僕も好きだよ、愛してる。君が想うのは〝僕じゃない僕〟なのが癪だけど…すぐに思い出を塗り替えてあげるよ」


「クロヴィス殿下…っ」


「愛してる。これからはずっと一緒にいよう」


「はい!」


こうして私は今更ながら、旅する少女から公爵家の姫君に戻りクロヴィス殿下の婚約者に戻った。


「けれど、世界を救った証明はどうしようか」


「あ、この星の水晶が証明してくれるらしいです」


「へぇ?」


クロヴィス殿下が水晶に魔力を込める。


すると、私が魔王の霊廟で魔王封印の結界を強化するところが一部始終映像で流れた。


「うん、立派な証明になるね」


「よくやったな、ゾエ」


「母はゾエが誇らしいです」


「えへへ」


ということで、私はそのままの足でこの星の水晶を携えて教会に連れて行かれた。


そして無事、世界を救った乙女として「聖女」認定された。


聖女認定された私は無事貴族社会に戻れて、クロヴィス殿下の婚約者にも相応しいと国王陛下と王妃殿下から無事認められることとなった。


そしてその日からクロヴィス殿下と少しずつ色々な思い出を積み重ね、デートをしたり贈り物をし合ったりして距離を縮めてラブラブカップルと言われるほどに仲良くなった。



















今日は私とクロヴィス殿下の結婚式直前ということで、平民たち向けにパレードが行われる。


…のだが、向こうがなんか騒がしい。


遠視の魔術でちょっと覗き見してみる。


そこには、リリスがいた。


「私が精霊の愛し子として覚醒するはずだったのに!原作ブレイクなんて信じられない!この!この!」


「だから暴れるな!何バカなことを言ってる!聖女様が魔王封印の結界を強化したんだからありえないだろう!」


「だから、それが原作ブレイクだって言ってるのよ!人の男を盗るなんて、ドロボー!!!」


「…こいつを不敬罪で捕まえた!牢獄にぶち込め!」


「うわぁあああん!私の逆ハー返してよぉおおおおおおおお!!!」


…すごいものを見た。


「あれが精霊の愛し子かぁ。絶対選ばれちゃいけない人間だと思うけど」


「ですよね」


ということで無事リリスにも投獄という天罰が下ったようなので、全ての問題に片がついた。


後は、幸せになるだけ。


「これで後は君が幸せになるだけだね」


「クロヴィス殿下…」


「愛してるよ、可愛いゾエ。ずっとそばにいてね」


「はい、もちろんです。愛しています、クロヴィス殿下」


こうして私たちは、ハッピーエンドに辿り着いた。























一回目の人生でゾエがクロヴィスと仲良くなったのは、バグではなく〝バグへの解決策〟です。


聖女である精霊の愛し子の中に「転生者」という異物が混入してしまったため世界そのものがバグを起こしたと解釈したため、世界そのものの意思で解決策を打ち出しました。


それが本来精霊の愛し子の中に入るはずだった魂を悪役令嬢の中に宿すという方法。


本物ヒロインの魂なのだから、メイン攻略対象と仲良くなるのは必然ですね。


二度目の人生が与えられたというのも、本物ヒロインの魂が宿った悪役令嬢がやられてしまったので「世界」が彼女にのみ記憶を残して「リスタート」した結果です。


あのままだと「精霊の愛し子」が世界を救うことはなく確実に滅ぶので…。


なお悪役令嬢に宿るはずだった魂は、大幅に「世界」による祝福を掛けられて新たに生まれています。


それが旅の途中で出会ったソフィア様ですね。


彼女は本来乙女ゲームでは登場しない「新たな存在」です。


本来乙女ゲームでは魔王の霊廟を管理する一族は子に恵まれず滅びていました。


でも今回はソフィア嬢がいて彼女にも愛おしい婚約者がいるので、滅びることもなさそうですね。


ちなみにこの世界は「乙女ゲームの元となった世界」の、数ある並行世界の一つです。


なお「精霊の愛し子」の資格をあの女から奪って他に与えるとなると、一度あの女を殺して能力を新しい身体に与えて育て直さないといけなくなるので魔王復活からしばらく人類が蹂躙されるので「世界」は〝面倒くさがって〟それを選びませんでした。


最初から主人公をソフィアとして誕生させれば良かったのでは?


それは言わないお約束です。


ここからは宣伝になりますが、


『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』


というお話が電子書籍として発売されています。


よろしければご覧ください!

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