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悪役令嬢にお似合い

作者: 辻 ミモザ

「カチェリーナ ビスコンテ公爵令嬢 貴女との婚約は破棄したい、君は王太子の妃には似合わない。私は真実の愛を知ってしまったんだ。」


やっとこのセリフに辿りついた。私は口角の上がりを扇で隠したわ。

王立学院の卒業パーティーでの悪役令嬢への弾劾婚約破棄、私の婚約者トリスタン王太子は溺愛するエレン ワイズ男爵令嬢の腰を抱き、彼女の淡いピンクのカールした髪が綺麗だとか、水色の瞳が愛らしいとか、あまり良くない頭で、一生懸命勉強するのがけなげだとか。そう惚気た後に、それなのにカチェリーナ公爵令嬢は所作が美しくない、だの、顔色をすぐに変えるな、地理の勉強をしろと、エレン嬢に小姑の様な言い掛かりをつけて苦しめた。と私を弾劾する。


長々ととした話の間エレン嬢はあざとい瞳で王太子を見上げながら、放漫な胸を彼の腕に押し付ける。その柔らかさににやけながら話を続けられるのが、段々苦痛になってきた、望んだ状況なのに、そのにやけ顔はむかつく。

さっさとこの状況を終わりにして次に進みましょう。


私はかねてからの計画通り、平手で軽く王太子のほほをたたくつもりで近づいた。

その時にエレン嬢と目が合った。勝ち誇った意地の悪そうな目。


よりにもよってなんでこんな女を選ぶのよ、趣味悪すぎよ。

平手はグーパンになっていた、右ストレートは王太子のほほにクリティカルヒットし、彼は壁まで吹っ飛んだ。



日頃の鍛錬の結果がこんなに早く出るとは思わなかったわ、確かに腹筋は割れてるし腕の筋肉を隠すためのドレスの腕周りのレースを増やしていた。

トリスタン王太子は口をモゴモゴさせて何かを吐いた。歯だ、そこまで強力なパンチとは思わなかった、私も強くなったもの、遠距離魔法使いを目指してたけど、案外戦士もできるかしら、でもここは、こっそり私は治癒魔法で殿下を治し衛兵に囲まれてパーティー会場を後にしたわ。


「何てお似合いなんでしょう。」

王宮の花咲き誇る庭で私とトリスタン王子が初めてあった時、その場の侍女達、私のお母様、そして王妃様も声を揃えてそういった。金髪で深い碧の瞳の8歳の王太子と、銀髪で薄い水色の瞳の7歳の私が並ぶとそう見えたらしい。

大人達の第一印象は良かったらしいけど、私は最悪だったわ。王子様と結婚なんかしたら、私の夢は叶えられない、7歳の子供でもわかっていた。

庭で二人きりになった時幼い私はつい言ってしまったわ

「私はあなたのお嫁さんになると困るのです」

「なぜなんだい」トリスタン王子は優しく私の話を聞いてくださった

「私は魔法を使うのが好きなんです。でも王妃になると、魔法はそれを仕事として使う者がやる事で、王妃の仕事ではありません、とお母様に言われました」

「魔法は主に騎士隊の攻撃魔法として使われるな、あとは建設省の土木工事に、土魔法、教会の治癒魔法か、確かに王太子妃や王妃の仕事ではないね、ところで、どのくらい魔法が使えるんだい」

まだ7歳の子供の話、少し得意な事を大げさですに言ってるのかとトリスタン王子は思ったのだろう

「ファイアボール」私はまずは得意の火魔法で背丈ほどの火球を作りそれをウィンドカッターで切刻んで見せた

「凄いよ、前に王宮騎士隊の攻撃魔法もこの位だったはずだ しかも1人で2種の魔法が使えるのも少ない」目をキラキラとさせながら王子が私を見て言ってくれた。

今まで私の魔法を見た家族はみんな眉をひそめ、魔法を鍛えようとする努力を否定し、そんな能力はお前を不幸にするだけだよと言われた。

だから私の魔法を褒めてくれるトリスタン王子に私は恋をした。


「防御魔法は使えるかい」「バリア」幾つもの盾を浮かび上がらせる

「私の攻撃を受けてみてくれ」王子は落ちていた木の枝を振りかぶって打ち込んでくる、私はバリアの盾を使って枝の攻撃を防ぐ、木の枝の剣なのに王子は真剣に打ち込んでくる

「トリスタン王子様は剣術が好きなんですか」

「そうだよ、だから僕も父上からそれは王の仕事ではないと言われたんだ」


それから私は足繫く王宮に出かけて、トリスタン王子の婚約者となった。幼いけれど二人は自分達の運命を受け入れる事にした、共に手を携えて国の為に立派な王と王妃になる。

でもそれまでの時間だったら有効活用してもいいんじゃない。私は魔法の研究、トリスタン王子は剣の稽古。

もちろん大人達には内緒で。私は王宮に行き優雅にお茶会をし、楽しく談笑して、二人で図書室で歴史や地理の勉強をする。本に囲まれ静かに話している婚約者達は私の幻影魔法だ。薄暗い室内は従者では気づかない。

{精神と時間の部屋}という宝物庫の魔道具を持ち出したのはトリスタン王子、それを使うと、異空間に入り、時間は10倍になり、どんな怪我も落命さえもリセットされる。王家の人間を秘密裏に鍛える物だが、平和が続く現在では使う者はいない。

そうして、鍛錬の日々は殿下が貴族学院に入学するまでつづいた。



婚約破棄の場から衛兵に囲まれて、私はとりあえず公爵邸で謹慎し処分を待つ事になった。お父様もお母様も婚約破棄は理不尽だと抗議してくださったけど、王太子への暴力は重罪、私の処分は辺境の修道院に入ると決まったわ。

辺境 隣は魔の大森林と呼ばれる魔獣の生息地、冒険者くらいしか立ち入らない未開の地。私は場所を聞いて、拳を握りしめた。


腕がなるわ。


馬車は早朝に公爵邸を出発した。お父様とお母様はくれぐれも体に気をつけて、と何度も言われ、5つ上のお兄様は今後の公爵家の事を考えてか沈痛な顔で、でも暖かく抱きしめてくれた。私は公爵令嬢の矜持を崩さず別れの挨拶を家族と使用人たちにして、10日以上かかる辺境の地へと旅立ったわ。


馬車に揺られながら私は考えていた、どうしてトリスタン殿下は変わってしまったのだろうと。15歳で入学する王立学院に王太子が入学してから、ぱたりとお茶会の招きがなくなり、学院生活を訪ねる手紙の返事は明らかに代筆の当たり障りのない物だった。きっと学生生活が忙しいんだ、新しい環境に慣れるのに時間がかかるんだ、不安な気持ちを隠すように私は考えるようにしていた。


そうして、1年後やっと私も王立学院に入学し、久しぶりに見たトリスタン王太子は傍らに淡いピンクの髪が可愛く揺れ、大きな水色の目がキラキラと豊かな表情な少女を置き、私に見せたことのないとろけるような笑顔をしていた。二人は声をかけるのを躊躇した私に気づかず、前を通り過ぎていった。

私はトリスタン王太子の婚約者、思わずその事実を確かめに、お父様に確認をとったわ。

その時、お父様は学院に入ってからの王太子の変化を苦い口調で教えてくれた。


王太子の横にいたのはエレン ワイズ男爵令嬢、彼女は何かのきっかけで王太子のお気に入りになりいつも側にいるようになった、側近が婚約者の話で注意しても、婚約は王命だから理解している、それとこれとは関係ないと

「大丈夫だよカチェリーナ、王太子妃になるのはお前なんだから、愛妾の一人や二人気にしてはいけないよ。」

その言葉に私は絶望した。

形だけの王太子妃、人前や儀式の時にだけ隣に立ち、それが終わればそそくさと離れ愛する人のもとへ行く夫、人前では不仲を隠す為ににこやかに話すかもしれない、それがよけいに残酷だ。

私は何日も泣いて泣いて途方にくれた。

そんな時、悪役令嬢というものを知った。巷で流行っている恋愛小説の中に出てくる存在だ。低い身分だが、美しく性格のいいヒロイン、彼女に恋する王子様、それに怒る王子の婚約者の気が強く性格の悪い貴族の令嬢、それが悪役令嬢。ヒロインをいじめ、命さえも奪おうとし、最後はその悪行がバレて、婚約破棄そして追放。

私はこれに一縷の望みをかけたわ。


まず髪を縦ロールにし、扇を手に持つ。友達数人に後を歩いてもらい威厳をだす。そして王太子の横にいるエレン嬢にはっきりとこう言い放った

「そのしぐさは美しくございませんわ、マナーをしっかりとお学びになられたほうがよろしくてよ。」「私の事を気に入らないかもしれませんが、顔色をすぐに替えては貴族らしくございませんわよ。」

「王族と親しくなりたいのでしたら、もう少し地理の勉強をなさいませ」

私の反撃にエレン嬢は王太子に弱者感を訴え、ウルウルした目でいじめられている下位貴族の健気な少女を演じてた。そして影では、私が、彼女の持物を隠しただの、階段から突き落として殺そうとしただの、と噂をふりまいていた。

彼はそれを信じたのかしら、私の魔法なら、証拠も残さず命を奪うのは簡単だと知ってるはずなのに。

私は学院生活は悪役令嬢、家では筋トレ、魔法は基本の4種類と、治癒魔法の勉強もした、アイテムボックスに必要物資を保管して、冒険者への夢をかなえる為に卒業式を迎えた。



辺境の修道院の手前で馬車から抜け出して、1年くらいか。魔の大森林を攻略しながらもうすぐ群小国家群と呼ばれる地帯に入る所まで来た。

これでようやくギルドで冒険者登録できるわ。魔の大森林は冒険者相手の最小限の商店や宿屋はあったけど、ギルドはここまでこないとない、故郷の国でギルド登録は身バレがするのでできなかったのでやっと夢にまで見た冒険者カードを手にすることができるわ。


思ったよりも早く魔の大森林を抜けられたのは、アイテムボックスの中にあった魔の大森林の地図のおかげだ。侯爵家の倉庫から食料や服、日用品、ポーションを密に入れている時に入ったようだ、でもこれわざとだよね、まだ攻略されてない冒険者しか入らない所の今わかるだけの情報が書かれた地図、こんな貴重な物が食料品に紛れてあるはずがない、ありがとう、お父様お母様私が冒険者になるのを応援してくれて。


「殲滅の悪役令嬢カチェリーナ様ですね、ご高名はお聞きしてました。当ギルドで登録していただき光栄に存じます」

愛らしい受付嬢の女の子はキラキラとした目で新人の私を見てこう言った

この恥ずかしい二つ名の理由はこうだ。

まず最初の宝箱がミミックでやっと抜け出した時に髪が縦ロールになってしまった、家から持ち出した服は簡素な物を選んだけど全部ワンピース、新しい服は森の中では売ってない。そして令嬢言葉が抜けなかった。もっとも着慣れたワンピースは動き易いわよ。そこは令嬢部分で、殲滅の悪役は戦闘方法だ。

まず私は敵の魔物を囲う四角の土壁を作る、逃げられないようにして、私の得意な炎撃魔法で攻撃、グロいのを見たくないので骨まできれいに焼き尽くし、ゾンビ化しないように浄化し、水魔法で埃を洗い流す。終わるまで時間がそれなりにかかるけれど、私は暇なので、その間にティータイム、阿鼻叫喚の土塀の中をよそに、高価な茶器でお茶を楽しむ姿は、魔物は勿論、歴戦の冒険者も震え上がったんだって、私にすれば時間の有効活用だったのに。


いくら魔物を倒していてもギルド登録はFランクから、薄っぺらい紙のカードも私の幼いころからの夢が実現した証、うっとりと眺めていると、受付嬢の女の子が

「これからもソロで活動されるんですか、今しがた登録された新人の方がいらっしゃるんですが、剣士でとてもお似合いだと思うんですよ。」

この1年一人で頑張ってきたけれど、確かにパーティーを組んだほうが大物を狩れる。私は数は多いけれど戦闘力がそれほど高くないオークの群れなんかを得意としていたけど、単体で強力なドラゴン系は狩りずらかった。

「雷撃の貴公子と呼ばれてますが、本当に紳士で素敵な方なんです」受付嬢は頬を染めている。

窓際に座っている金髪で大剣を背にしている、受付嬢に教えてもらった冒険者は後から見ていても清潔そうで好感がもてる、一年たってもむさくるしい冒険者は苦手なの。

「少しよろしいかしら」

振り向いた冒険者の顔を見て私は叫んでしまった

「トリスタン殿下、どうしてこのような所にいらっしゃるのです」

殿下は私を見て少し驚いたようだけど

「きっと会えると思っていたが、案外早く出会えたね、どう、順調にやってるかい」

まるで夜会で話す様な気楽さで、魔物だらけの森を抜けた困難さを感じさせずに話しかける。事態を呑み込めない私に殿下は説明してくれた

「廃嫡になったんだよ、エレン嬢を紹介したら陛下も后妃様も激怒してね、結婚したかったら廃嫡して平民になれといわれたんだ。それで平民になって、冒険者になったんだ。」

そんな犠牲を払うほどの恋だったんだ、私はエレンを見損なっていた、でもエレンはどこ

「エレン嬢はどうしてるの、国で殿下、あトリスタン様を待ってらっしゃるの」

「いや、僕が平民になったとたん、あなたには興味がないて言って別れられたよ、なんでも、金持ちの商人を見つけて嫁いだらしい」

何それ、「真実の愛はどうなったんでしょうね。」私はちょっと皮肉に言ってやった、するとトリスタン様は私をしっかりと見て

「僕の真実の愛は昔も今もかわらないよ」

彼の瞳は最初に出会い、秘密を共有し、魔法を勉強して、剣の稽古に付き合い、笑ったり、励まし合い、夢を話した時のものだ。

私は思い出した、あの言葉を{君は王太子妃に似合わない、私は真実の愛を知ってしまったんだ}涙が出てくる、何これ、ずっとあなたの愛は、私を思い、支え、導いてくれていたんだ。

「僕に用があるんだよね」私は真っ赤になりながら言ったわ

「あの、パーティーを一緒に組みませんか。先ほど受付嬢の方に言われましたの、

私達はお似合いだと。」




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