保護と言う名の囚人
一時間後・・・
自分の記憶の中にあるうっすらとした面影が・・・確かにある。
有るのだが、若い。若すぎる。若杉ダヨ。
いやいや、現代のロリ信者がもし未来の俺の言葉を聞いたらおれもその時代に生きたかったと答えるだろう。
俺の目の前にいるのは、確かに俺の親にも見えるけど全く違う種でコスプレかドッキリカメラでも仕掛けてあるのかってレベル。
目の前にはロリエルフ(♀)だった。
母の遺伝子と想像上の生き物を合成したキメラなのかって疑うレベル。
しかもコレ、厚生省が国策で長寿命化を推し進めた結果だって。
おいおい、この国の医療は間違っていないか?
出会いは衝撃的で未知の刺激にあふれていて唖然としている満にロリエルフが話しかけてきた。
ロリの口撃> 「満、体は大丈夫?記憶はしっかりしてる?私が誰だか判る?お母さんよ」捲し立てるように話してくる。
ロリの連撃> 「お父さんね、仕事の打ち合わせで今日は来れないの。楽しみにしてたのにどうしても外せないみたいで」
ロリの時間> 「偉くなったら遊んで暮らすって言ってた人が、勲章なんてもらっちゃうし関係者から引っ張りだこで」
ロリの冗談> 「連日公演で国内旅行、夜は政府のバッチと食事、たまの休みは芝刈りで、亭主元気で留守がイイ」
エルフの魔法詠唱か?ってくらいに矢継ぎ早にしかも10倍速くらいの速さで飛び出す言葉はまさに呪文詠唱で言葉が返せない。
聞き取りもできなかった。
これも薬の副作用なのだろうか・・・・合掌
僕が寝ている間の事を母に聞いたが(早くて聞き取れないので病室内のカメラに保存したデータの速度を落として確認した。)
要約するとこんな感じだった。
そう、僕が眠っていた間に、この国の政府は国民に「イレブンコード」と呼ばれる薬を義務化したのだ。
少子高齢化対策の一環として、テロメアの寿命が大幅に伸びる「イレブンコード」の接種を40歳以上の国民に義務付け高齢化対策として導入された。
効果は劇的で高齢化を食い止めるにとどまらず、肉体の若返りが確認された。劇的なルックスの変化は国民に大いに受けことで国策の転換が図られ全国民が対象となった。
夢のような技術には思いもよらぬ欠陥があった。ただでさえ低い出生率が接種後大幅に低下した。副作用の発覚だ。
勿論接種した全員に平等に副作用が発生したわけではない。
「生殖能力低下」や、極一部の人には身体的特徴の変化が見られ女性は耳殻に、男性は鼻が大きく長く変化していた。
(鼻の大きさは何の大きさ・・・って聞くが本当だろうか?)
西洋では、接種した日本人で100歳にも達した接種者が老衰や痴呆から若返ったり、身体的特徴の変化の発現者が見られた事から、「Elf」とか「天狗」と呼んだ。
中国では「東に蓬莱が具現化し仙人が住まう国が現れた」と絶賛した。
そして僕のように「イレブンコード」を持たない日本人は、「希少な絶滅種」であり種の保存と繁殖の為に国から保護対象となった。
ちなみに少子化ゆえか、子供ができないからか婚姻制度はすでに崩壊していて行きずりの恋愛は日常事なんだって。
普通の日本人が「国の宝」的扱いって・・・何か狂ってるよね。。
(国と)交わしたはずのない約束が僕から未来を奪おうとする。
薬に頼らない長寿を手にした未来は、いびつな世界を作り出していた。
僕は、「保護と言う名の囚人」になった。