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Fate of the Flowering Fairies  作者: ソナタ♪
第一輪:ユメヘノトビラ
6/11

6

月の光の下

ツッカー平原のど真ん中で焚き火がパチパチと音を立てる

火に照らされた若い5人の冒険者の影が夜の草原に伸びる



串に刺さった兎角の肉と【パフの実】が、焼き網の上でじっくりと炙られ、香ばしい香りが辺りに立ち込める



古くは主食の代用として【南方大陸】から持ち込まれたパフの実

一定時間加熱するとポンッと弾け膨らむのが特徴で、イモのような味でパンのような食感と香りがする


正式名称はポップ・ブレッド

しかし「膨らむ」という古語由来の通称である「パフ」の方が俗称として通りが良い


ちなみに直火が禁止なのは、急激に加熱された際どこに弾け飛ぶか解らない為である



時代と共に主食も多様化し、食料全体としても安定的に供給されるようになった


収穫から日が経つとエグみが出てしまうパフは主食から一線を退いたが、野生化し新鮮な実が簡単に手に入る農村部では子供達のオヤツとして重宝されている



カリカリになるまで素揚げし香辛料を効かせた塩味

ふわふわのまま蜂蜜や果実ソースをかけた甘味

パフはどのような料理にも合う


しかし冒険者ならば、その日に狩った獲物の肉を焼き切込みを入れたパフに挟んで食べる、ワイルドなバーガーサンドが依頼遂行のお供に最適であろう



パフが弾けた頃に風呂から戻って来たジンが、料理の仕上げを行う


余分な油が落ちた肉に塩をふり、香草と一緒にパフに挟む


発汗で失われたミネラルを補う為に塩は岩塩にして少し多めに

香草も疲労で働きが悪くなりがちな消化を助けるものだ


ジンの料理の知識と鮮やかな手際は、王都の下町で料理人をしていた彼の父親に仕込まれたものである



飲み物はルフナがメアリーに持たせてもらったポットタウン名物の紅茶


ルフナのお茶の淹れ方はメアリー直伝の上品なもので、貴族のお茶会に出したとしても恥ずかしくないものである



冒険者の現場での食事は、メンバーの出身地や育ちにより千差万別


状況によっては保存食のみでやり過ごす状況もある中で、今日の夕食は「宴」といっても過言ではないだろう




いただきます!


異口同音、草原に5人の声が響く



「遅くなるし、食べながら今日あった事を報告しちゃおうか」



バーガーを半分程食べ進め、紅茶で一息ついたジンが提案した

空腹で全員が無心で食べていたために会話が無かったのだ


料理人としてはありがたい所ではあるのだが、冒険者としてはチームでの情報共有は必要だろう


その言葉に最初に反応がしたのはルフナだった


片手を上げてアピールの後、口いっぱいのバーガーを紅茶で流し込んだ


「「わー、力技ダ…」」


その様子にミヤマヤが関心する


「ね!あたしから!いいよね?」

「おう、簡単でいいからな」



ルフナはクロリスからのアドバイスを思い出し、頭の中で文章を組み立てる


表情をスッと外行きのそれに変えて語りだす




麦刈の月 14夜


◯拠点を中心に薬草集めと兎角退治を行う

◯薬草採取:17/40

◯兎角討伐:5(角の採取数)


・薬草はこのエリアだと他の人に取られてしまっていて成長してるものが少ないように思う

違う場所も探した方が良いだろう

・兎角を素材として狩る為に、鉄球をトゲの無いものに変更

・兎角の捌き方を習得

次からは自分で処理が可能である




うん、以上!


「ねっ!ねっ!どう!?どう!?」


すぐに表情を普段の通りに戻し、意見を確認するように全員の顔をぐるりと見渡す



クロリスは頷きサムズアップ

ミヤマヤは「るぅちゃん、凄〜イ!」と目を輝かせる

ジンも苦笑いで合格を出す


「アタシもやればできるのだー!」

ナハハハとルフナが笑う


なおジンの苦笑いの理由は、ルフナが咄嗟にまとめたその文が商工会の報告書の書式(テンプレート)であった為である

そのため合格を出さない訳にはいかないのだ


その一方で、書式が頭の中に入っていた事と、短時間で内容をまとめてみせた事に、ジンは舌を巻いていた


杜撰な報告は他の冒険者の命を脅かしかねない


実際、報告書で知っていたら避けられたはずの危険にジンは何度も遭遇している

それ故に報告書作成は冒険者にとって極めて重要な仕事なのだが、おざなりにする冒険者が後を絶たないのだ


そのためジンは端的で精度の高いものを書くように常に意識しているのだが、ルフナは難儀なその作業を頭の中でやってみせた


生まれ育った環境の差、教育環境の差、はそういった場面で大きいと改めてジンは実感した



「あ〜…でもね」

ルフナが恥ずかしそうに頬をかく


「一番最初、いつものやっちゃった」

今度のナハハ笑いには、ばつの悪さが滲む



ミヤとマヤが可笑しそうに笑う

「やっパりね〜」

「今回は一匹ダけデ済んデ良かったね〜」



「やっぱり毎回モンスターを木っ端微塵にしてるのか…」

表情に疑問符を浮かべていたクロリスだったが、ジンの呟きに反応する

「木っ端微塵…?」



「あの、ね?

いつもモンスターを倒す事しか考えて無かったから…」

「自慢のトゲトゲちゃんデ、」

「モンスターを粉砕しちゃうんダよ」


ナハハと笑って言葉を止めたルフナの台詞を双子が引き継いた




粉砕?

粉砕??

どうやらクロリスの理解の範疇を超えたらしい

表情から見て取れる疑問符の数が更に増えた


「実際に見て無きゃ、普通はそーゆー反応だよなぁ…」


ジンの脳裏で、モザイク処理された兎角(とにかく)惨劇(スプラッター)映像に、悪は滅びた!と高笑いするルフナの姿が鮮明に映し出される



「まあ、クロリスは深く考えなくて良いよ」

知らなくても見なくても良い事は、世の中に沢山転がっている

ジンはクロリスの肩にポンと手を置いた


まあいいけどね

と呟いた所でクロリスがある事に気が付いた


「…そっか、攻撃魔法を使う機会が無かった理由ってそういう事か」


魔法攻撃する前にルゥちゃんが粉々にしちゃう、という双子からの謎の訴えの意味をクロリスは理解した


「その様子だとそっちも色々あったみたいだな

よっし、じゃあ魔法チームも報告よろしく」


クロリスに促され、ミヤとマヤが語りだした


嫁氏との共同制作です

noteとpixivにも公開中

コチラは嫁氏の手描き挿絵が付いています


スープラッタ♪スープラッタ♪

ウサギのダンス〜♪


兎角(トニカク)がちょっと可愛そうな件について

どーでも良いですが兎角(トニカク)の鳴き声は「うー」です


note(本人アカウント)

https://note.com/sonate


pixiv(嫁氏アカウント)

https://www.pixiv.net/novel/series/12329720

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