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Fate of the Flowering Fairies  作者: ソナタ♪
第一輪:ユメヘノトビラ
5/11

5


ルフナに付き合って湯当たり気味のミヤとマヤが、湯気が立ち上る星空の下をヨロヨロとテントまで戻っていく




草原からは虫の声

風に揺れる草の音

川の水が木の葉をゆっくりと運んでいく


そんな開放的な河原の露天風呂にクロリスとルフナの二人の姿があった






「あの…、クロリスちゃん、て呼んでいいですか??」




双子がいなくなり静かになった露天風呂

その空気に耐えられなくなったのか、鉄球娘が私に話かけてきた


この娘はジンと動いていたから、今日は私とはあまり会話をしていない


チーム内でのコミュニケーションは大事だと思う

だけど私は元々あまり会話が得意ではない






「あたし、堅苦しいの苦手で…」


ナハハと苦笑いを浮かべる




「それにジン君って呼ばせて貰ってるのに、クロリスさん、だとなんか違う気がして」


苦笑いを深くし、今度は人差し指で頬を掻く




…初日からアイツが「君」呼びを許した事にちょっと驚く


アイツが女の子に甘いのか

この鉄球娘が懐に飛び込むのが上手なのか

あるいはその両方か


なんだろう

少し心がチクチクする




「えっと…ダメ?…ですか?」



そんな私の表情を深読みしたのか、不安そうな表情を向ける


大人しくしてれば令嬢

そんなのに顔を覗き込まれたたら同性の私でもドキッとしてしまう


ちょっとズルいと思う






「…好きに呼んで」


「やったぁー!!」


先程の不安そうな表情から一転、底抜けに明るい表情を見せる鉄球娘



私とは正反対だ

感情が表情に出てコロコロ変わる

踏み込んで来ても何故か許せてしまう愛嬌と無邪気さ

賑やかでお喋りで明るくて

私から見ても凄く魅力的だと思う


…だとしても、アイツがあっさり君呼びを許した事は引っかかるけど




薬草を集める最中に兎角が現れた事

トゲ鉄球で挽肉にしてしまった事

トゲの無い鉄球に変えたら上手く捕まえられた事

兎角を二人で捌いた事




「で、ジン君が凄っく上手で、いっぱい教えてもらったんだ〜」


先程の沈黙分を取り戻す勢いで鉄球娘が今日あった事を喋る

方向性は違うが、この人懐っこさに古い友人を少し思い出す


あれからもう1年か…








「なはは…一人で話し過ぎちゃった…」



自身の話したい事を語り尽くした鉄球娘

なんだかんだで時間も経過していた

そろそろアイツも風呂に入らないと就寝時間が遅くなってしまう

冒険者の朝は早い






「…今話した事、もう少し要点をまとめておいてね」




今夜は夕飯の後にお互いの成果を報告し合う

それに依頼の結果は報告書で商工会に提出する必要がある


要点を端的にまとめる事は冒険者の必須技能だ






「うわぁ、これが冒険者の洗礼ってやつかぁ…」


頭を抱える鉄球娘

これも冒険者の務めだからがんばれ




「…さあ、そろそろ上がろう」

「は〜い」



暖まった体に夜風が心地良かった








「「おかえりナさ〜い」」

「…ごめん、遅くなったわね」

「お?大丈夫、3人で雑談してたから」




クロリスがテントから戻ると、ジンとミヤとマヤが兎角の肉を焦げないように焼いていた



「…料理代わる。あと、ハイこれ」



テントの荷物から彼のタオルを持ち出していたクロリスは、それを普段通りジンに手渡す


1年近く二人で旅した仲

お互いに勝手知ったるである




「…着替えもテントに用意しておいたから」

「悪い、いつもありがとな」



ジンの言葉にクロリスは表情を緩める


「…ゆっくりでいいからね」

「おーよ」




ジンは背中越しに手を振りテントに歩いていった






な〜んか、雰囲気いいなぁ


その様子を自分達用のテントから見ていたルフナ


幼い頃、商工会で若い男女ペアの駆け出し冒険者に会った事があるけど、こんな感じで旅をしていたのかなぁ




「ウチのお父さんとお母さんみたいダ!」

「二人は婚約者ナの?」




ルフナが焚き火まで戻ると、ミヤとマヤがキャーキャー言いながらクロリスを質問攻めにしていた



冒険者ではあるが年相応の乙女

【浮いた話】

は、ガールズトークのネタになるのだ




夫婦、婚約者…


一方ルフナはその言葉に、チクッと心に引っかかりを覚えた


あたしのパパとママは昔、あの二人のような関係を築いていたのだろうか






「ちがっ…そんなのじゃないの…っ」




クールな雰囲気なクロリスが珍しく恥ずかしそうに慌て否定する




「でも二人だけデ旅をしているんダよね?」

「ネー?」


「あの…その…、そんなのじゃなくて…」


頬を赤くし目を逸らすクロリスの姿に、ルフナは既視感があった




幼い頃の記憶…



ママが星の海に還って、メアリーさんが家事の手伝いをしてくれるようになって、しばらく経った頃に…


『メアリーさんはパパのことスキなの?』


アタシのその一言でメアリーさんは頬を赤くして一瞬目を逸らした



ピコピコ動く耳

動くのをどうにか留めた尻尾


言葉に詰まったメアリーさんだったけど、すぐに笑顔になって




『ルフナちゃんも、ルフナちゃんのパパも、大切で、大好きですよ』






「夫婦…かぁ

なんか、いいなぁ」


ルフナの呟きが薪の燃える音に混じって、火の粉になって夜空に消えた










商工会の執務室にウバのくしゃみが響く


誰か自分の噂話をしている

そんな迷信が頭に浮かぶ


新緑の季節

昼間の気温は初夏の陽気だが、山岳に近いポットタウンの夜はそれなりに冷えるのだ




コンコン…


遠慮がちなこのノックはメアリーのもの


「遅くまでお疲れ様です」


彼女が持ってきたトレーにはティーカップ



「その香りは紅茶だね、いつもありがとう」



ウバの言葉にメアリーは表情を緩めて、ウバの机にそっとカップを置く




「あまり無理をなさると、ルフナちゃんが心配しますよ」


そしてわざとらしくため息をついてみせるメアリーに、ウバが苦笑いを浮かべる




「ははは、今日はこれで終わるよ」


「ええ、早く休んで下さいね」



では失礼します





執務室の扉を閉めたメアリーが肩の力を抜く

振り返ると、廊下の端に大きな窓がある


メアリーはゆっくりその窓まで歩み寄る

窓の外、夜空には大きな月


そっと窓を開ける

白く薄いカーテンが夜風に揺れる


雲の無い夜は冷える

野外なら尚更だろう



嗚呼、どうか無事でいますように



暖かくも冷たい月の光がツッカー平原とマルヘラの森を照らしていた



嫁氏との共同制作です


noteとpixivにも公開中

コチラは嫁氏の手描き挿絵が付いています


お耳ピコピコ〜♪

獣人/ケモ耳尻尾は正義(ジャスティス)ですw



note(本人アカウント)

https://note.com/sonate


pixiv(嫁氏アカウント)

https://www.pixiv.net/novel/series/12329720

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