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Fate of the Flowering Fairies  作者: ソナタ♪
第一輪:ユメヘノトビラ
3/11

3



そんなこんなでジンとクロリスは、ルフナ率いる駆け出しチームに同行する事になった



ポットの街とマルヘラの森との中間、おおよそ6500アルク(1alk≒だいたい1歩)の地点

クラーラ川にも近いツッカー草原の一角にテントを張って拠点にし、依頼達成を目指す


ジンは同じ戦士系スキルを持つルフナの補助に

クロリスは魔法系スキルを持つ双子のミヤとマヤの補助に

二人はあくまでも同行、当人達の依頼の達成は当人達で行う




− そして今しがた



依頼の薬草集めの最中、ルフナの前に現れた哀れな兎角(とにかく)は次の瞬間に挽肉になった




「0点」

兎角を粉砕したルフナに、呆れ顔のジンが容赦無い採点を下す


「ちょっと待った〜!」



件のルフナは顔を真っ赤にしながら抗議する



「異議あり〜!!なんで!?どうして!?」



「加減せずにやり過ぎだ」


兎角は優秀な資源である

毛皮は撥水防寒に優れ、丈夫だが加工しやすい

肉は脂肪も少なく筋肉質で保存食に最適


また変異種である【羽兎角】の兎毛は、その保温性の高さから高値で取引きされる

よって羽の有無の確認も必要だ



自身の命を危険に晒す仕事なのだから、得られるものは無駄なく得るべし

命を粗末にするな

その資源を木っ端微塵にするなど言語道断である




「そもそもだ」

ジンはルフナに指をビシッと突きつける



「あのトゲ鉄球は金属鎧とか硬いモノをぶち抜く為のもの

純粋な戦闘じゃない限り、生き物には高火力過ぎるんだ

あと単純に鋭くて危ない」



「あのトゲトゲが可愛いのにぃ…」

ルフナは軽く頬を膨らませる




まあ、でも、そっか、そうだよね


ルフナはテントに戻り、鎖の先の鉄球を小さくトゲの無いものに変えた


ルフナはその言動の印象よりも遥かに思慮深い

行動原理は理屈である

納得出来る説明があれば素直に従うが、納得出来ない場合には反発する

権威的な王都の学舎ではそれが反抗的に見えてしまい、不良扱いの末に退学されられてしまったのだ



帰宅後は部屋に引き籠もってしまったものの、心配した幼馴染の魔法使い二人が手を引き連れ出し、冒険者として再出発をした経緯がある



「これで生け捕りにして、気絶させればいいのよね」



納得出来る事象に対してはルフナは本当に素直だ

そしてそれは彼女の長所であり、他人の言葉を鵜呑みにせず自身の検証と照らし合わせ、必要ならば判断を修正するという、冒険者として必要な事でもあった




その結果として、今度は数匹の兎角を損傷なく気絶状態で捕縛する事に成功した







「君のお父さんには冒険者の現実を見せるように言われてるんだけど…

これはいけるか??」


クラーラ川の河原

山から転がり落ちて来た程よい大きさの岩に動かなくなった兎角が並べられる



先程の通り兎角は肉も毛皮も資源だ

生け捕りのまま加工業者に引き渡す事も可能だが、それが様々な理由によって現実的ではない場合は加工も冒険者の仕事になる


つまるところ解体作業である



「鶏なら〆た事あるよ」

ジンの心配を余所にルフナは片手をあげて軽く返事をした


分業化が進み田舎でも肉は肉屋となった昨今、家畜を〆る経験があるというのは珍しい

特に裕福な家庭ではほぼ無い事だろう



「冒険者になった時に役に立つかなって…

それに、箱入りって言われたく無かったから」


ルフナは小さなナイフを取り出し、得意げな笑みを浮かべた





一番最初に刃を入れる場所が重要なので、そこは丁寧に教える

拙いナイフ捌きのルフナだが、その経験が嘘ではない証拠に躊躇がない



…箱入り娘と呼ばないで、か

そりゃ貴族様と一緒のお上品な学舎生活は無理だわな



実際に令嬢であり【黙っていれば、落ち着きがあれば】その雰囲気もあるルフナだが、ドレスで着飾った姿よりも汚れながらナイフを扱う生活感溢れる姿の方がしっくり来るような気がした


【才能のある者はそれを活かすべき】

過保護(おやばか)親父が愛娘に向ける視線はどこまでも優しい




三羽目の兎角は完全にルフナ1人で処理する事が出来た

なかなか飲み込みが良い

後は回数を重ねれば大丈夫だろう



困ったり気になる事があれば声をかけるように伝えると、ジンも自分で狩った兎角を捌く



作業に没頭し無言の二人

どこか似通った気質があるのだろう、気まずい沈黙ではなかった






日が傾き夕暮れが近い時間二人は汚れた道具を川の水で洗っていた


「本当は身体も洗い流したいところだがな」

「うぅー、生臭いし汗臭いよ…」




ジン1人なら汚れた服を全て脱ぎ捨て川に飛び込むところだが、ルフナがいる手前やめた

一方のルフナも見られても全然平気と脱ごうとしたので、君のお父さんに殺されると言って止めた


ひとまず身体を濡れタオルで拭き、汚れた服は洗濯という判断をする




ルフナが着替えと洗濯桶を取りに行っているその間、ジンは河原に溝を堀り、深い水溜りまで繋げる

ちょっとした水路だ


クロリス達も汗を流したがるだろう

この水溜りに魔法で加熱した焼石を放り込めば簡単な天然の露天風呂になるはずだ



案の定、夕焼け空に一番星が出た頃に帰って来た泥だらけのクロリス達はジンの提案に乗った


風呂を強く所望する女魔法使い三人の手によって、石はあっというまに加熱されたのだった



嫁氏との共同制作です


noteとpixivにも公開中

コチラは嫁氏の手描き挿絵が付いています


ルフナの「異議あり!」

を某裁判ゲームのパロディのように描いて貰う予定だったのですが、某ギターな侍のポーズになってしまったそうですw


note(本人アカウント)

https://note.com/sonate


pixiv(嫁氏アカウント)

https://www.pixiv.net/novel/series/12329720

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