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Fate of the Flowering Fairies  作者: ソナタ♪
第一輪:ユメヘノトビラ

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11

日が暮れかけたマルヘラの森の中。


ピリィを頭に乗せて、鬱蒼と茂るマルヘラの森の奥へと進む歩々(ポポム)

そして、それについていく若い冒険者5人の姿があった。


傾いていく太陽。

伸びて薄くなっていく影。

徐々に光が弱くなっていく森の中。


疲れからか口数が少なくなって来た冒険者達からは、先行きの見えない不安が滲み始めていた。


特に新人冒険者チームの双子、ミヤとマヤは、自分達の決断に自信を失いつつあった。

なによりも、森が深くなるにつれ不思議な光景を目にする事が増えたのだ。


反魅了(アンチチャーム)の魔法を自分達にかけた筈だから、恐らくこれは魔法的な幻覚では無いはずだ。

だからこれは見間違いで、よく見えない闇の中の何かをアタマが勝手に補完した結果に過ぎない筈。

そう、その筈である。


「ねェ、マー…」

「なァに、ミー…」


恐る恐るかける言葉もその返事も、声が震えていた。


「子供ノ頃にお婆さんかラ聞いた歌みたいナのを見てる気がスるんだけド…」


「ミーも?わたしも、ソんな気がしテた…」


それは真っ暗な不思議な森の歌。

お婆さんが好きでよくうたっていた歌。

その歌は、美しい旋律の奥に不思議な歌詞を隠し、幼い二人に言葉にできない不安を刻みつけていたのだった。


そしてマルヘラの深い森の闇が、それを思い出させているのだった。


その歌の最後は、深い森の中に一人取り残されて彷徨うというものだった。

初めてその歌を聞いた夜は、暗い夜の森に取り残される不安を忘れるために、二人は同じベッドで眠った。

お互いの存在を確かめ合うように。


そんな幼い日の思い出だが、今でも思い出すだけで心を冷やす。


今度は現実だ。


暗くなっていく深い森の中にいるのは、まさに自分たち自身。

イメージと現実。

年を重ねたとはいえ、どちらがより強い恐怖を与えるかは言わずもがなだった。


「…怖い?」


青ざめた双子に、見かねたクロリスが声をかけた。

ミヤとマヤは振り返り、顔を見合わせてから小さく頷く。


「…大丈夫よ。」


クロリスの視線を追えば、前を行くルフナの背中が見える。

武器を構え、口を閉ざし、集中している彼女の体力は確実に削られているはずだった。


「…不安になるとね、見えないものが見えてしまうの。

…でも、あの子が先陣を切ってる限り、大丈夫。

…怪しいモノはきっと排除するし、危険も見逃さない筈だから。」


「とはいえ、あいつ(ルフナ)は前ばかり見てる。」

ジンも声をかけてきた。


「精神耐性は人それぞれだからな。辛い時はちゃんと自分達で伝えないとだぞ。」


苦手な物事やストレス耐性は人それぞれである。

自分達の決断によるものでも無理は禁物で、特に結果を求める強行は良い結果を生まない事が多い。


冒険者は、転んで出来た傷の痛みに見合う何かを得ようとするべきではない。

無理した分だけ損をする。

むしろ、傷だけで済んだことに、命があることに、感謝した方が良い場面が多いのだ。


「まあでも、さっきクロリスが言った通り、今のところあいつ(ルフナ)がすっ飛んで行くような脅威は現れてないからな。


もし2人が“何か”を見たとしても、ほぼ見間違いだと思って大丈夫だ。」


そう言ってニッと笑うジンに、ミヤとマヤの2人はようやく安堵の表情を見せた。




「みんな!早くー!」


視線の先、頭にピリィを乗せた歩々(ポポム)とルフナが飛び跳ねていた。


逆光で表情は見えないが声が弾んでいる。

ルフナのシルエットが見える緩い上り坂の獣道の先には、空が見えた。

どうやら開けた場所にたどり着いたようだ。






木々を抜けると、色付いた空が眩しかった。

ざぁ、と風が吹き抜け、オリーブ色の背の高い草が波打つ。


草の海の中央には、樹齢を想像できないほどの巨木が空へ向かってそびえている。


その周囲には、いつ崩れたのか分からない石造りの小屋や、草が石を割って呑み込んだ土台の跡が点々と残っていた。

その一角は花壇の跡だろうか、石の囲いから大きくはみ出して紫色の花が群生していた。

そのすぐ傍には、崩れた井戸の残骸も覗いている。



しかし、静かだ。

風に揺れる草の音以外に音がない。

鳥や動物や虫の声も無い。




人間さん、ここなら大丈夫?

ちゃんと案内したよ。褒めて。


――とでも言いたげに、ピリィを頭に乗せた歩々(ポポム)が5人の周りをぴょんぴょんと跳ねる。


その様子に、最初は歩々(ポポム)を怖がっていたミヤとマヤが微笑んだ。

身を屈めて視線をあわせ「「ありがとう」」と声をかけると、歩々(ポポム)は嬉しそうに何度も飛び跳ねて脚をパタパタと動かした。





ジンが草を刈り払い、広い建物の土台を見つけ出した。

水捌けも良さそうだ。

そこを今夜の野営地に決める。


ルフナは崩れた小屋の石をトゲ鉄球で破壊しながら、まだ使える竈門を掘り出した。

これで山火事を気にせずに火を焚ける。


クロリスは朽ちかけた井戸を覗き込み、慎重に魔法を使って水を汲み上げた。

幸いにも水はまだ生きていて、数度の浄化で澄んだ飲水が確保できそうだ。


クロリスはミヤとマヤが慎重に井戸へ教えたばかりの浄化魔法をかけるのを見守っていた。


二人の杖に魔力の光が宿り、古びた石組みの井戸から澄んだ水が少しずつ汲み上がっていく。


「…いいわ、その調子」


声をかけて小さく笑むと、二人もほっとしたように笑顔を見せた。


井戸の水はもう大丈夫。そう思ったとき――


ふと、森を渡る風がクロリスの頬をかすめる。



…花の匂いだ。



振り返ると、すぐ傍に花壇跡があった。


朽ちた石組みを越えて溢れるように咲く紫の花々が、風に揺れながらこちらを誘っているように見えた。


(少しだけ…見てこようかしら。)


誰に言うでもなく思い、そっと歩を進める。

背後では、ミヤとマヤがまだ試行錯誤しながら魔法をかけ続けていた。


クロリスは花壇の端にしゃがみ込み、群生する花の一輪にそっと手を伸ばした。


それはスミレだった。


風に揺れるスミレの花に指が触れた瞬間ーー


鞄にしまっていた“花の魔導書”から光が漏れ、強い光に包まれた。






気がつくと、私は知らない男の人と並んでスミレを見ていた。


(…誰だろう?)


けれど嫌な感じはしない。

不思議と怖くもなかった。

それに、なぜか身体も動かない。

まるで自分自身ではないような感覚…。


戸惑っていると、その男の人はそっと私の頭を撫でた。

何かを伝えるように、優しく。


けれど顔はぼやけていて、どうしてもはっきりしない。


(誰…なんだろう…。

でも…温かい…。嬉しい…。)


次の瞬間ーー


また強い光に包まれた。






「クロリス…!おい…!クロリス……っ!」


私を呼ぶ声が届く。


視界が開くと、そこには驚きと心配に染まったジンの顔があった。

その瞳が真剣に私を覗き込んでいる。


「大丈夫か…!?怪我はないか?」


私は小さく頷き、そっと瞬いた。

どうやらその場に倒れていたようだ。


(…あの人は誰だったんだろう。

あの優しさは…いったい…。)


胸に残っているのは、花と風、そして誰かの優しい手の記憶だけ。


「…ごめんなさい。もう大丈夫よ。」


「そうか…。無理しなくていい。急に倒れたから…焦ったぞ。」


何事かとルフナとミヤマヤ、蝶を追いかけていた歩々茸とピリィまでクロリスに駆け寄ってきた。


(…なんだったんだろう、あれは…。

誰かの記憶?

でも…どうして私に…?

…わからない。)


皆に促され座り休むクロリスは、しかしどこか放心しているようだった。




掘り出した石の竈門で静かに火が灯されていた。

魔法の光球がいくつか周囲に浮かび、草の海を淡く照らしている。

空は燃えるように染まり、巨木の影が長く伸びる。


クロリスはまだ皆から少し離れた場所で、花の方を振り返ったままだった。


火の粉は舞わない。

竈門に焚べられた薪が小さく弾ける音だけが響く。


疲れ果てた若い冒険者たちは声を失くし、静寂が辺りを包む。


だが、現実は無情だ。


――草の波の向こうで、風の流れが変わった。


ルフナが何かを感じて立ち上がり、ジンが熾狼牙(シズリング・ファング)を掴む。


歩々(ポポム)とピリィが竈門の火を怖がりながらも、クロリスの側に身を寄せた。


ミヤとマヤが空を見上げると、




音の無い突風。





遠方から何かが高速で飛来し、彼らを威嚇するように低空で通り過ぎる。


その気配は空に夜を纏わせるかのように切り返し、ゆっくりと戻ってくる。


燃える夕日の向こうに、

夜を纏った巨影が静かに降り立つ。


公爵木兎デューク・グラークス


森を守る番人が、その瞳に静かな怒りを映し、人間を見つめる。



――夜が、降りてくる。



巨影がゆっくりと息を吸い込むと、次の瞬間には森の空気を震わせる烈風の如き鳴き声をあげた。


離れた場所にある竈門の火が一瞬で吹き散りそうになるほどの風が、野営地を撫で抜けた。



おまたせしました

Fate of the Flowering Fairies

ようやくタイトルが絡んできます(笑)


嫁氏との共同制作です


noteとpixivにも公開中

コチラは嫁氏の手描き挿絵が付いています



note(本人アカウント)

https://note.com/sonate


pixiv(嫁氏アカウント)

https://www.pixiv.net/novel/series/12329720

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