悪役令嬢とお正月~婚約破棄された令嬢は、日本でお年玉をあげる人になる。
劇の演目で、婚約破棄ものが流行っているのじゃ。
平民出身のけなげなヒロインが、悪役令嬢のイジメにもめげずに頑張り。
殿下のハートを射止める?
アホらしいと思っていたが、いざ我身になったら分かったのじゃ。そんな階段から落とすとか噴水に落とすとかそんな生やさしいことをしないのじゃ。
聖女が転移してきたのじゃ。
天真爛漫という名の世間知らずの小娘、正直、脅威ではない。
しかし、敵対派閥が、担ぎ上げてきたのじゃ。婚約者交代の話がチラホラ出てきた。
妾が、悪役令嬢の立ち位置になったのじゃ。
聖女は傷物にすればよかろう。夜会の時に、裏組織に植え込みに連れ込ませ。ドレスをビリビリに破かせて・・・・破かせるだけで良いじゃろう。後は、宮廷雀どもが勝手に噂をしてくれよう。
「公爵は引退!エリザベータ・ローエングラム、いや、平民エリゼベータ、貴族籍剥奪!」
「聖女様暗殺の計画、義弟エリヒムが全て話したぞ!」
・・・そんな。馬鹿な。暗殺までしないぞえ?!
「義姉上。いや、罪人エリザベータ、お前とは義理とはいえ。姉弟だったのが恥ずかしい。僕が、公爵家を継いで、殿下と聖女を守るよ。堂々とね」
・・・無理じゃ。貧乏男爵家の六男、勉強ができるから、お父様が、引き取ったのじゃ。その恩を忘れて、財産管理ぐらいしか出来ないから家宰にして、
親戚筋から、養子をとって、公爵家を継がせようとなった決定を不満に思っておったのかえ?
「罪人エリザベータ、お前の話し方、古き貴族主義だよ。聖女様を見習って欲しいね」
「エリヒムの言うとおりだ。その表情の読めない顔、聖女殿の天真爛漫な笑顔、見ているだけで癒やされる」
・・・お母様は、元王女、娘が口調を似て、何が悪い!
お母様、生きていたら、何と言うだろうか・・・
☆
『エリザベータや。いつ、いかなる時も、表情から感情を読み取られてはいけないぞえ。国と民の利益を損なうからのう』
『え、お母様・・・グスン』
『でも、家族は別じゃ。ほれ、膝抱っこじゃ!』
・・・5才から、妾は、王妃教育を受けて来たのじゃ。殿下を支えるために、殿下は、友人たちと、交友を深めていたのう。遊んでいるとは、思いたくなかったが、王太子教育は芳しくないと、チラホラ聞く。
妾は・・・
「婚約破棄!魔の森に追放する!」
魔の森に置いていかれたのじゃ。つまり、死罪じゃ。
黒い霧が出てきたのじゃ。
あっという間に、包まれて、晴れたら、見知らぬ里に出たのじゃ。
お、川がある。
『ほお、川があるのじゃ。髪の毛を釣り糸にして、このピンを針にして、ミミズを探して』
魚を食していたら、原住民の母子に声を掛けられたのじゃ。
「お姉さん。ここでたき火はダメだよ!って、鯉を食っている?!」
「ほお、この世界の平民か?そなたは旅の途中に野営をしたことないのかえ?」
「日本語うまい。それどころじゃないよ。ここは、キャンプ場ではないよ。ダメだよ。何か分からないけど、すごくダメな感じがする。家に来なよ」
「ええ、母子家庭だから、安心よ。あら、翡翠の目に、腰まである髪の毛は、少し、紫かかっているわね。外国の方ね。ええ~と、コスプレの方かしら』
妾は、こうして、平民の家に厄介になることになったのじゃ。
☆現在、女神神社
ピ~ヒャラヒャラ~~~~
ドンドン!
「さあ、獅子舞だよ!かみつかれると、噛みつくだけに神様がつくよ!」
「ワー、やって、やって」
「うちの子、お願いします」
「はいよ!」
・・・何じゃ。ドラゴンかえ?今日は賃仕事で、異教の聖女として働いているのじゃ。
同輩のシオリ殿に、聞いてみるのじゃ。
「あれは、獅子舞と言って、中国、東南アジアの厄払いよ。インド発祥という説があるわ」
「・・・・・何?」
「獅子は日本にはいないし、インドの聖獣かもね。あら、お客様よ」
「うわ。外人さん?お綺麗ですね。おみくじを下さい」
「はい・・・」
「ほお、縁起ものだ。わしゃ火入を頼む」
「はい。どうぞ。こちらへ」
シャリン、シャリン、と鈴がついた木の枝をふって、シオリ殿は、大声で言ったのじゃ
「ヒール!」
「ナンマンダー、有りがたや。若い子にやってもらうと、生き返るわ」
「フフフフ、田崎のお爺ちゃん。有難う。長生きしてね」
「何じゃ。火入とは?」
「あ、これは、明治時代、山に、天女様が現れて、村人に火入!と叫んで、病気や肩こりを治していたのよ。この神社の縁起ね」
プルプルル~
・・・何じゃ。ここは、いろんなものが混じっているのじゃ。女神教も混じっているのじゃ。ナンマンダーって何じゃ。
じゃが、我慢じゃ。
あの母子は、貧しい平民、正月くらいは、親子水入らずで過ごさせてあげたいのじゃ。
「エリさーん」
「エリ姉さん。お弁当持ってきたよ!」
「母御殿、和樹殿・・・・」
「うわ、エリ姉さん。綺麗!似合う。あっ、詩織姉さん。明けましておめでとうございます。詩織姉さんも似合うよ」
「フフフフ、和樹君、おめでとう。佐々木さん。明けましておめでとうございます」
ペコ「おめでとうございます。まあ、すっかり、綺麗になって」
・・・何?妾の他に、「姉さん」呼び?!とな。和樹殿は年上の女なら、誰でも「姉さん」呼びするのかえ?節操がないのじゃ。
「なにゆえ?姉さん呼びするのじゃ!」
・・・何、何、シオリ殿は、短期アカデミーで、18才、和樹殿は、高等平民学校の一年、二人は遠い親戚で、子供の頃、良く遊んでもらった?
憧れのお姉さんだと!
何じゃと、妾は、コスプレ外人枠じゃ。素敵なお姉さん枠じゃなかったのかえ?
あれほど、一緒に釣りにいったりしたのに、
「ウヌ・・・」
何じゃ。この感情は!いかん。感情を表に出してはいけないのじゃ。
グスン
「あれ、エリ姉さん。お腹いたいの?悲しそうな顔・・・」
何?妾の表情を読み取っただと!
「まあ、和樹!あっちに甘酒あるわ。母さんの分も取ってきて」
「わかった」
何じゃ。母御殿が、小声で言うのじゃ。
「エリさん・・・月のもの?」
「エリザベータさん。休憩いいよ」
「違うのじゃ・・・」
・・・結局、和樹殿をエリヒムに見立てていたのじゃ。子供の頃、一緒に遊んだりしたのじゃ。
和樹殿はエリヒムの代わりにならないのじゃ。
エリヒムに悪いことをしたのじゃ。きっと、義姉を追放したことを後悔しているに違いないのじゃ。
ブンブンブン!
その時、爆音が響いた。
ナチス政権下のドイツでも不良はいた。不良はどこにでもいるものだ。
こんな、土田舎でも、珍走団がいた。一人だけの珍走団だ。
「おら、おら、めでてえな!」
「山崎の爺さん!耕運機で境内に入るなよ!バチ当たるぞ!」
「フン、俺には未来はねぇ、将来を心配する必要はねえんじゃ!」
「うわ、否定しづらいな」
ブン!ブン!ブン!
「おら、おら、神社フカシじゃ!・・・おろ?」
パシュとタイヤがとれ。爺さんは、耕運機の荷台から転び落ちた。
八の字タイヤのリヤカーは、やっぱり。安定性を欠いていたのだ。
「「「爺さん!」」」
「ヒィ、助けてくれ~~」
「誰か。救急箱を!」
何じゃ。話を聞くと、この爺さん。盆ぐらいからグレだした?
『お爺ちゃん。お口臭い!』
ガーーーーーン
お盆で遊びに来ていた孫に、そう言われて、ポリデールをしっかりやって、匂いを整えていたのじゃ。
しかしな。
正月、孫が病気で来られないと連絡が来てな。
「俺の口が臭いから来たくないに決まっているーーーー。俺は、孫から追放されたんだーーーー」
「追放じゃと?」
聞き捨てならない。
我は、爺さんを連れて、孫の家まで行ったのじゃ。
☆山崎の爺さんの孫の家
「ゴホゴホゴホ~」
「義父さんと巫女さん。風邪だから入っちゃだめです。あのね。お義父さん。病気のことで嘘はいわないわ。本当に病気だったのよ」
「面目ないの」
「よかったのう。ついでに、顔を見て、お年玉をあげるのじゃ!治ればよかろう。【ヒール!】」
「ゴホゴホ・・・あれ、急に楽になったよ。お爺ちゃん。口が臭いっていって、ごめんね」
「ええ、ええ、気にするな。入るでな。お年玉だ」
・・・・
妾は、静かに家を出た。
【飛翔!】
空を飛び。神社に帰ったのじゃ・・・しまったのじゃ。
休み時間、大幅に過ぎていたのじゃ。
謝るのじゃ
☆女神神社
帰ったらな。神主さんに謝罪したのじゃ。
「アハハハハ、氏子のお世話をしたのだから、いいですよ。この時間もバイト代を出します」
「面目ないのじゃ」
「・・・・で、エリザベータさん。実は、この世界の人じゃないでしょう?」
「そんなことないのじゃ。妾は、行き倒れのコスプレ外国人じゃ」
「・・・これを」
神主さんが渡したのじゃ。
古い型の魔道通信機じゃ。小さいバックぐらいの大きさじゃ。魔力は切れておるのう。
・・・これは、エリヒムに通信出来るかもしれないのじゃ。
子供の頃、エリヒムに、贈ったペンダント型の魔道通信機があるのじゃ。
家から離されて、寂しいと言っておったから、こっそり家族と連絡するようにしたのじゃ。
「分かっていますよ。この里は、時々、異世界の人が現れる場所です。隠れ里でもあったのですよ。これは、明治時代に現れたテニョ様のものです。この神社の由来になった人物です」
「な、何と。ここは、女神様を祀っておるのかえ?」
・・・妾は魔力を込めた。あちらの世界に連動するかわからんが、連絡を取りたい。
妾の・・・
ビビビビビ!
「ガガガガ・・・エリザベータ!」
「エリヒム、義姉じゃ。妾は・・」
「一体、どこに行っていたの?ずっと、連絡していたよ!
公爵家、王国は大変なことになっているんだ!
僕がサポートした聖女様が出席した国際会議で、隣国のハゲール王のこと。ハゲで脂ぎっているからと、あからさまに、嫌そうな態度が出て、会議が紛糾したんだ!
公爵家当主として、命令する。殿下を支えろよ。働き次第で、側妃にしてやるって・・・」
「・・・・エリヒム」
「公爵と呼べよ!」
・・・苛立っておるのう。
あの幼い日は・・・・幻だったのかのう。
いや、地位が悪い方に変えたのじゃ。
プツン!
妾は、通信を切ったのじゃ。
「・・・お心察します。また、来て下さいな」
「ありがとうじゃ・・」
こうして、妾は、女神神社を訪れるようになったのじゃ。
行く道すがら、山崎のご老体の宣伝のおかげで、老人仲間に評判になったのじゃ。
「エリザベータしゃん!大根だ。この前のお礼だ」
「有難うなのじゃ」
「悩みあるの?相談にのるで」
「アメちゃんお食べ」
「ありがとうじゃ」
☆
「ただいまなのじゃ」
「エリ姉さん。お帰りなさい。え、大根もらったの?エリ姉さんモテるね」
「皆で食べるのじゃ」
「なあ。和樹殿」
「何?エリ姉さん」
「和樹殿」
「え、エリ姉さん。少し、すっきりした顔をしているけど、何か良いことあった?」
「和樹殿・・」
「はい。エリ姉さん」
妾は、大きく深呼吸をして、言ったのじゃ。
受け取ってくれるかのう。
「和樹殿、バイト代が出たから、お年玉じゃ」
「うわー有難う!」
・・・和樹殿とエリヒムとは別人なのじゃ。当たり前じゃのう
「わー、エリ姉さん有難う!ねえ、ねえ、一緒にゲームやろう『皆でゴロフじゃん6』手に入ったよ。
GS3で、一番ナンバーが大きいゲームだね」
「うむ。やるのじゃ」
もう少し、ここにいてもいいのじゃ
「なあ、和樹殿」
「何?」
「紳士たるもの。婚約破棄をしてはいけないのじゃ」
「え、アニメの話?分かったよ」
「うむ、ところで、アニメとかコスプレとか何じゃ」
しばらくは、ここにいてもいいじゃろう。父上は、楽隠居しておるだろうし。
次の日、空を飛ぶ巫女が現れたとニュースになったが、合成だろで片付いた。
最後までお読み頂き有難うございました。