勇者の秘宝 2
「先生、それは……魔王を討伐するには聖剣だけじゃダメってことなんですか?」
ジーナが尋ねた。
「ああ。3つのアイテムの力が揃って初めて、真の力を発揮するらしい。まあ、聖剣以外の2つに関しては一体何なのかすら明かされていないんだがな……。聖剣に関しても、伝説の騎士ジェラルド様が持ち帰ったもののほか数本が王宮に保管されているが……扱える勇者を見つけないとな……」
ノア先生がため息混じりに話した答え。大枠は当たっている。だけど、俺は……その騎士の名前に苛立ちを隠せなかった。
「全く……国家魔術師達のレベルも大したことないな……。偽物の聖剣を大事に保管しているとは。それに……あのクソ野郎が伝説の騎士とか、虫唾が走る!! 畜生……!!」
俺はレガード顔負けの大声を出して号泣し、過呼吸気味になった。
「レインくん……大丈夫! ジーナがここにいるよ。落ち着いて、呼吸を整えよう? ね?」
倒れかけた俺をジーナが抱き止めてくれる。
こんな突然別人になる二重人格みたいなヤバい奴を、昔からいつも優しく包み込んでくれるジーナ……俺は……たぶん君のことが……。
ジーナの温もりを全身に感じながら、俺は徐々に落ち着きを取り戻した。
ノア先生は全てを知っていた訳ではないものの、今のできっと察しただろう。
アシュが困惑し、レガードがうろたえているのが、ジーナの背中越しにぼんやりと見える。
「みんな……きいてくれ……」
俺は声を震わせて、彼らに全てを話す決意をした。
これも賢者の能力だ。信頼に足る人間達かどうかくらい分かる。
「秘宝の在処は……分かってる……。それは俺の、俺達の最期の地……。アイツに、ジェラルドに殺られた場所だ……」