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転生者

 僕の名前はレイン・ローネスト。


 アリタルテ王国ザラス領・パルムの町に住む、ザラス伯爵家の四男だ。


 領主の息子とは言え、末の四男の僕は、兄上達のように王都の貴族院には行かずに、幼なじみ達と一緒にザラス領内のグライフ総合学園に通わせてもらって、のんびり暮らしている。


 学園が急襲された日の放課後、僕は魔法学のノア・ロール先生の教授室を訪ねた。


 彼女はザラスの隣にあるツリード領を治める辺境伯のご令嬢だ。ツリード領はアリタルテ王国の東端に位置し、隣国モトワールに接している。


「失礼します」


「ああ、お前か」


「国内各所での魔物の急襲……。先生はどうお考えですか?」


「考えたくはないが……モトワールかもしれないな。父上も動いているようだ」



 ◆ ◆



 モトワールは魔族の国だ。


 レインはあの国に行ったことはないが、俺自身は行ったことがある。


 矛盾する言い方だな。


 自分が転生者だと気付いたのは、4歳半の時だった。


 レインは高熱で数日間寝込んでいたらしい。


 目が覚めた時は自分が誰だか分からず混乱していて、生きていて良かったとホッとするレインの心のその上から、別の誰かの感情と記憶が……波のように重なってきた。


(これは……一体誰?)


 だけど不思議と、そのどちらも自分自身であると感じたんだ。


(そうだ、僕自身だ……)


 レインには魔法や戦闘の才能はほとんど無く、傷や血を見ることさえも恐怖する子供。いつも強くて優しい兄達に守られ、自身は『戦う』ということが本当に嫌いだった。


 そんな弱々しい末っ子があの日、一人で魔物を倒したものだから、周囲は腰を抜かした。


 出掛けていたローネスト家の使用人に魔物が近付くのを探知したんだ。


 眠りから覚めたばかりの病み上がりの状態でよろけながらも自室を飛び出した僕は、『助けたい!』って思った瞬間、前世の記憶がより鮮明になった。



 ――“俺”は、『賢者』ラストノフ・クワイヤ――



 先刻まで寝込んでいた身体での魔法使用は少しばかり苦痛だったが、あんな下級の魔物なんぞ、俺にとっては秒殺だった。

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