急襲された学園
午後の授業は魔法学だ。校舎裏にある訓練場で、A組・B組合同の実技演習が行われる。
レイン達は成績優秀者が集まるA組で、エミリアはその下のB組だ。更に下のC組とD組もある。
エミリアとの早々の再会に、レガードは苛立ちを隠せず、思わず彼女を睨み付けた。
第一学年のクラスは、入学(編入)試験の成績で分けられている。身分は関係なく完全な実力主義であるが、幼少時から家庭教師などをつけて学んできた貴族達が成績上位者の大半を占めているのはある意味仕方がないと言える。レガードの家は平民ではあるが国内有数の商家で、古くからローネスト家と取引をしている名家だ。
「さぁ、訓練を始めるぞ! まずはクラスメイトと2人組になれ!」
魔法学教授のノアが号令をかけ、授業がスタートした。
ノアは魔術師階級・中位二級『ルコル』の称号を持つ国家魔術師。ノアとレインは古くから家同士の付き合いがあり、気心知れた仲だ。
青い髪に碧眼のカッコいい女性教授は生徒人気が高く、ジーナも憧れている。
「あいつどうしたんだ?」
広い訓練場の隅にしゃがみ込んでいるレインを見て、ノアがジーナに尋ねた。
「朝ちょっと色々ありまして……」とジーナがため息混じりに答えるとほぼ同時に、上空で爆発が起きた。
ノアは「無詠唱で命中か……」と呟くと、レインのもとへ向かった。
「レイン。今の、お前だろ? 今朝何があったのか知らないが、復活したんならさっさと立て。感じてると思うが……まだ来るぞ」
「ああ、分かってるよ。ただの雑魚だ。今ここにはあんたも居るし、俺達A組の敵じゃねえ」
立ち上がったレインは何か吹っ切れたのか、目には活力がみなぎっている。
ジーナは同級生達のもとへ走るレインを見つめながら、「ほんとレインくんって、戦闘になるとキャラ変わるよね」と呟き、ホッとした表情で微笑んだ。
「また来るよ! 皆、構えて!」
学年2位のアシュ・ナリッドが率先して指揮を取る。
空から次々と魔物が舞い降り、実戦経験が少ないB組生徒の中には怯えたり腰を抜かす者も居た。
レイン達A組が彼らを守ったり避難させながら戦い、無事に35体を殲滅したものの、放心しているB組生徒達を考慮して授業は座学に変更になった。
校舎に戻っていくレインを少し離れた場所から目で追っていたエミリアは、「あ、あれが……レイン・ローネスト……。つ、強い……」と呟いた。