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シキガミ

前話を少し分割して合わせています。

 彼らは強くて勇ましい。俺も幾度も助けてもらった。幸いにも聖獣のペルルを連れていることで攻撃はされないみたいだし、何とか話を付けたい。


「テンとリン……」


 彼らは名を呼ばれて僅かな動揺を見せたが、すぐに警戒の目で俺を睨み付けると、男性シキガミのテンが剣を抜いた。


「この先へは何人なんびとたりとも通すことは出来ない」


「お前達と戦いたいとは思っていない。……我が名に覚えがあるならば、通してくれないか。俺は賢者ラストノフ・クワイヤ――勇者ルカ・ターナーの盟友だった男だ」


「……ラストノフだと!? 貴様、戯言たわごとを申すな!」


「『賢者紋解放クレスト』」


 右手に光る賢者紋を見せると、彼らは息を呑んで顔を見合わせた。


「この魔力とその紋……まさか生まれ変わりだとでも?」


「ああ、その通りだ」


「……ハッ。わざわざ己の死に場所に戻って来るとはな」


 テンの言葉に思わず顔をしかめて呼吸を乱す俺を見て、女性シキガミのリンは微笑んだ。


「お帰り、ラストノフ。まさかまた会えるなんて」


「リン、ありがとう」


「でも……ミュウを説得できるかは保証できないよ。だってきみ、そもそも彼女に嫌われてたよね!?」


「……うっ」


 否定できないのが悲しいし、それが一番の不安要素……って、いやいや!


「言っておくが、嫌われていた訳ではない! 怖がられていただけだ」


「あ〜、きみ、目つき悪かったもんねぇ。まあ、今はこんなに可愛らしい坊やだし、これなら大丈夫かもー?」


 そう言ってリンはニヤニヤしながら俺を見る。


 からかうようなリンの言動に苛立つ俺を横目に、テンが彼女の肩をつつく。するとリンはハッとして、俺に顔をグイッと近付けた。余りの勢いに後ずさりしながらった俺に向かい、目を輝かせて話を続けるリン。


「ねぇ、君さ! 何か知らない!? 新しい勇者様のこと!!」


「……え?」


「さっきテンが君に向かって偉そうにしてたけど……実を言うとね、私達も数日前に此処に顕現したばかりなの。ただならぬ霊力にばれて!」


 ……レイリョク、って何だ? 魔力とは違うのか? 顕現? ――そんな疑問だらけの俺の脳内を読むように、テンが語り出す。


「我々式神とはこの世界で言う従魔のようなものだが、術者から霊力という力を得て姿形を成す。しかし……その霊力源は永らく絶たれていた」


「ルカが……死んだからか……」


 俺の呟きにテンは深く頷いて話を続ける。


「ところがだ。我々を異界から喚ぶための式札しきふだが、強力な霊力を感知したのだ」


 ――異界!? ってまさか、ルカや父上はそこから……


「そ、それって……いつ頃?」


「こちらのときの感覚がまだハッキリしないのだが、そうだな……日は三度落ちた」


「……ちょうど俺達が森に入った頃だ。……あっ……ちょ、ちょっと待ってて!」


 俺は振り返り、来た道を駆け出した。


「ラストノフ!? おいっ!」

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