冒険メシと新たな感情
「ったくレインはよぉ……なーにをそんなに改まってんだ〜? んじゃ、ひとつもらうぞ。いただきまーす!」
そう言ってレガードはジーナの隣に腰掛けた。自分の手料理を幼なじみ達が頬張っている。そんな光景に俺は不思議な安堵感を覚えた。
「これ美味しい〜! レインくん凄いね」
「いやマジで、めっちゃ旨ぇよぉぉッ!! ……っ……んぐっ、ゲホッ」
「レグくん、焦って食べすぎ! よく噛んで」
夢中でかぶりついて咽せてしまったレガードの背中をジーナがさすっている。するとノア先生がため息をついて呆れながらも、何だかとても優しい表情で呟いた。
「しかしお前達3人は、昔から変わらんな」
俺達は顔を見合わせた。すると何とか咽せを治めたレガードが俺の肩を掴み、これまでにない程に力強く俺の目を見た。
……レガード?
「レイン。オレの方こそ、やっとお前と一緒に冒険ができて最高すぎるよ。さすがにこの先の戦いは、オレなんか連れてってもらえねーと思うけどさ! ……なぁレイン、聞いてくれ。オレ達は大人になっても一緒に遊ぶんだ! な? だからよ……絶対に生きて帰れよ」
今、物凄く目頭が熱い。レガードが急に真剣な顔で伝えてくるから……俺、言葉が出てこないよ……。
「レイン……俺からも頼む。無理はしないで」
アシュにもそんな風に言ってもらって……前世の悲しみを、今世の嬉しさや幸せが上回っていく。心がほぐされて、温かい気持ちになって。“これからもずっと、大人になっても、皆と笑って過ごしたい”――そんなことを強く思った。大粒の涙が頬を伝う。
命懸けの戦いになるかもなんて、王都ではそんな覚悟もしたけど……死んでたまるか。ずっと皆と居たいんだ。まだだ。もっと強くならないといけない。
あれこれと頭の中を巡らせていたその時、先生の手がスッと触れた。
「レイン、そんな難しい顔をするな」
ノア先生が俺の頭をグシャッと撫でながら、ピーネを1口かじる。
「美味いな、これ」
ラスタやケレムもそれに頷き、皆が笑顔でピーネを食べている。アシュも俺の100年ぶりの料理に満足してくれたようだ。
ジーナが作った草花のスープも皆でいただく。たわいない話で盛り上がりながら自然の恵みを享受する。これぞ冒険中の食事の醍醐味だ!!
って、あれ……?
いつの間にかこの冒険を楽しめている自分に気付いた俺は、改めてこの気持ちを噛みしめると、自然と顔がほころんでいくのを感じた。




