父と子
ワーツを牢に残し、俺達は一旦ローネスト家の屋敷に移動することにした。
「お前はここから出せないが……悪いな。また折を見て訪ねるから、その時は力を貸してくれ」と鉄格子の中のワーツに語りかけると、彼は深々と頷いた。
「俺は誘拐犯なんですから当然です。気にしないで下さい。レイン様が強力な結界を張って下さったから、ここに居れば安全ですしね」
「……『様』はやめてくれないか」
「ははは。……いやはやしかし、賢者様の生まれ変わりだなんてなぁ! そりゃ古代魔術も使うし、強い訳だ。……貴方様なら本当に、オステン殿下とメラック様を破って、この国を救えるかもしれない」
ワーツは心からこの国の未来とハセンのことを案じてくれている。そんな彼に俺は小声で伝えた。
「俺は子供だから階級はないが、レベルだけなら前世同様『神位国家魔術師』だ。任せろ。必ず救ってみせる」
「…………」
俺のレベルを知って石のように固まったワーツに別れを告げ、俺は囚人舎を後にした。
表に出ると、馬車が大小1輌ずつ手配されていた。小さい方の馬車の前で父上が手招きする。
「レイン、ちょっといいか。お前と2人だけで乗りたい」
「あ、はい。父上」
まあ、そうなるよね。親としてはツッコミどころ満載の小一時間だったよね。
「お前は……私の息子……でいいんだよな?」
走り出した馬車の中で父上が尋ねる。
「もっ、もちろんです! 父上は優しくて宮廷画家でカッコいい……俺の憧れの父上ですっ!」
10歳の身体におっさんの感情が同居してるのは、自分で考えても気持ち悪いが、ちゃんと末っ子として家族に甘えたい自分もいる。別にレインを演じている訳じゃない。両方、素直な言動だ。どっちも自分自身だ。
幸い、死んだ時のラストノフは今の貴方よりギリ年下だ! セーフということにしてくれ、父上……!!
父上は「そうか……良かった」と優しく微笑むと、俺の頭を撫でながら話し始めた。
「実はな……私もそうなんだ」
えっ? 何が??
「私も、あるんだ。前世の記憶が……」
「えっ……??」
ええええ!??




