街角の伝達板
定期市で賑わう街角。
伝達板に次々と新しい掲示物が貼られていくのを一人の少年がじっと見つめている。
――『第35期 秘宝調査隊』
「うおおおー!! ついに、ついに来たぜ、次期の募集!」
真新しい衣服に身を包んだ少年は、傷だらけの拳を高らかに突き上げると猛スピードで市場通りを駆け抜け、駐めていた馬にまたがり急いで出発した。
いくつか角を曲がった先の屋敷で馬から降りて、顔馴染みの門番に元気よく挨拶する。
メイドの案内で屋敷の中を進み、目的の一室の扉が開くと、鼻の穴を膨らませて顔を真っ赤にしながら言った。
「レイン! ついに秘宝調査隊の募集が開始されたぞ!! 今伝達板を見て飛んできた!」
「あーもー。今日もうるさいな、レガードは。そんなに大きな声出さなくても聞こえるってば」
「だってよ、やーっとオレ達も調査に参加できる年齢になったんだぞ! ハァ〜長かったなあ〜、ここまで」と言いながら腕を組んだレガードは、目を閉じて感慨深げにしている。
「だから何でそれを僕に言いに来るんだよ……」
レインが耳を塞ぎながら面倒くさそうにしている横で、エメラルド色の髪の侍女は紅茶を二杯淹れると、焼き菓子を添えて彼らの前に置いた。
「レガード様、どうぞごゆっくり」
侍女はにっこり微笑み、主人の友人を歓迎した。
「アローナ……。僕はレガードにゆっくりされちゃ困るの!」
「まあまあ。せっかくご友人がお訪ねくださってるんですから」
「せっかくも何も、いっつも居るじゃん……」
レインは頭を抱えてため息をついた。
――ここは、アリタルテ王国ザラス領ローネスト邸。
伯爵家の四男レイン・ローネスト10歳は、同級生のレガード・シュタインと今日も騒がしい時間を過ごしていた。
「募集そろそろかなと思って、冒険用の服を新調したんだぜ。ほら、カッケーだろ? だからさ〜頼むよ、ひ・ほ・う・ちょ・う・さ!! 一緒にパーティー組もうぜー」
「断る」
「何のための学年5位だよ」
「僕の上に4人もいるだろ。アシュが興味あるって言ってたじゃん。何度も言ってるけど、僕は冒険者とかには一切興味ないの!」
「それは知ってるけどよー。……てかお前、ホントに宮廷画家目指すの?」
「もちろんだよ。父上みたいな宮廷画家になるんだ!」




