表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/67

小さな命

「そうか、医療団としてビフィカまで来てくれたのか」


「はい。スコットさんは昨夜、大丈夫でしたか?」


「僕ら夫婦は大丈夫だけど……」


 店先で立ち話をしていたら、俺達の声を聞いて顔を出した奥さんに声をかけられた。


「レイン様、少しよろしいでしょうか? あの……この子……」


 上向きに合わせた彼女の手のひらに横たわる小さな身体。


「小鳥? あっ……」


 両目は苦しそうに閉じかけ、もがいたのだろうか、羽根が擦り切れている。


「もしかして昨日ので?」と尋ねると、ご夫婦は辛そうに頷いた。治療拠点は人間対象だもんなぁ……。


「僕は貴族なのに、ろくに低級も使えないから……」とスコットさんが肩を落とす。


「回復なら俺やりますよ」


 レオにいが小鳥に手をかざす。


「『回復ヒール』!」


 小鳥はゆっくり起き上がると、元気にピィピィと鳴いた。


 ご夫婦に泣きながら感謝されたレオ兄は、照れくさそうにしながら俺の両頬をつまむ。……って、えー。何で俺つままれたの……。


「お前はどうせこの後また無茶するんだろ? だから簡単なのは俺らがやるから」


 頬をつままれながらレオ兄の言葉に頷く俺。ラスタ達も頷いていた。


 優しいこと言ってくれてるけど……長い、痛い! 喋れないんですけど……。俺はレオ兄の手を強引にどけて、スコットさんに尋ねた。


「あの小鳥って、スコットさんがよくモデルにしてる子ですよね? サインにも描いてる……」


「うん、そうだよ。名前はポポ。風景画とかも好きだけど、ポポの可愛い姿を描くのが一番楽しいんだ」


 笑顔でそう話すスコットさんを見て、助けられてよかったと皆で微笑み合った。小さな命を救えて本当によかった。


「レインくん、そろそろ行きますか」


 ラスタに促され、地図を見る。


「えーと、拠点のクスト広場は……これか。ここから1kmくらいかな。すぐ着くね」


 場所を確認していると、スコットさんが「スニ通りを抜けてちょっと行ったところにあるよ」と行き方を教えてくれた。


「……あ、レインくん。うちの向かいのケソンがね、娘さんとおばあちゃんの具合が悪いらしくて、さっき広場に向かったよ。よろしく頼むね」


 ケソンさんは画材屋さん。手()きの紙やオリジナルの絵の具とか面白いものが置いてあって、わくわくするお店だ。


 末っ子のポーラとおばあちゃんか。お年寄りも心配だよな……。


「了解です、スコットさん! 俺達に任せてください! では、行ってきます」


「行ってらっしゃい。気をつけて」


 手を振り数歩進んだ時、後ろでご夫婦が話しているのが聞こえてしまった。


「レイン様、何だか男らしくなりましたね」


「だね。マテオも手紙に書いてたよ。アハハ」


 ……!? うわぁ、父上に何て書かれたんだろ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ