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魔力供給

 テラから突然『兄さま』と呼ばれて、末っ子として10年やってきた俺は照れまくり、挙動不審のまま思わず言ってしまった。


「てっ……手伝ってほしいことなら……あ、あるかもなぁ〜」


「何でしょうか!? にいさま!」


 食い気味に聞いてきたテラを見て、『気力が出てきたんなら良かった良かった』と俺は早くも兄貴気分で頷いた。


 そんなテラに応えるべく、俺は気を取り直し、彼の目を見て真剣に答えた。


「魔力供給をしてほしい。俺達はこれから、昨晩の瘴気に当てられた子供達の回復をしに行きたいんだ。彼らの状態は行ってみなきゃ分からないけど……もしも重症者多数だった場合、術者の魔力が持たない。だから同行して魔力を分けてくれないか」


 俺の提案を聞いたノア先生はエルフ達を指差し、俺と彼らを交互に見て顔をしかめながら言った。


「こいつらを王都中に同行させるっていうのか!? さすがに無理だ。バレる!」


「俺のじゅつで人間だと錯覚させます」


「おい、レイン……お前それって……」


「古代魔術は前世で研究しました。俺がこのたぐいの術を使えることは、絶対に誰にも言わないでください」


 前世の俺は興味ある物事に出会ったら、属性や固有性をも越えて幅広く研究していた。発動の仕組みさえ解き明かせれば、その実行をアシストしてくれるのが賢者紋だ。つまり俺は、先天性である光魔法も、特殊スキルである幻術も、何でも使える。


 古代帝国と共に滅びた職業『幻術士』――幻影を操るスキルを持つ彼らは、その特異性ゆえにおそれられ、非人道的な迫害を受けたそうだ。


 この悲劇の歴史は学校でも学ぶ。もしかしたら現代にもこの特殊スキルを持つ者は居るのかもしれないが、迫害を恐れて誰もそれを口にしない。


 迫害はあまりにも酷いと思うけど……まぁ幻術なんてもんが罰則もなくまかり通ったらどう考えても最強すぎるし、レベルすら関係ない混沌カオスがそこに生まれるだろう。これから幻術を使おうとしている奴がそんなことを語るなんて、甚だ矛盾しているがな。


「いやしかし、再び貴方様に魔力供給が出来るとは!」


 喜ぶユルゴスを見て改めて思い出した。100年前のあの日、勇者パーティー『リトス』だけで魔王を倒したんじゃない。エルフや仲間の魔族達と共に倒したんだ。


 魔族に比べて魔力が少なく回復の遅い、ある意味で下等生物ともいえる『人間』の俺らが魔王を倒せたのは、ユルゴス達の魔力供給あってのことだ。


「まるであの日のようで、胸が熱くなります。年取ってもなお無駄に多いこのじいやの魔力量……持ち腐れるくらいなら全て貴方様に!」


 そう言って涙を流すユルゴスを見て、俺の頬にも涙が伝った。

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