みんな支え合って生きている
「……っ」
目を開けると、ケレムが俺の顔を覗きこんでいた。
「レインくん、大丈夫?」
「ん……はい」
「あぁよかった」
そう言って柔和な笑顔を見せたケレムを見て、一言の破壊力がすごいというか、なんて慈悲深いんだと思った。
ジーナもだけど、光属性を持って生まれてきた人達って、持つべくして持っているというか……優しく包み込んでくれる、まるで神のような人格者だ。生まれつきでもないくせに、強引に光魔法を使っている俺とは全然違う……。
「そんなことないよ」
……!?
「小さな身体で懸命に戦うレインくんに……みんな心打たれているよ」
魔物達が黒炎輪目指して大人しく大移動を始めたので、騎士達も戦いの手を止めて俺の方を見ていた。俺に向かって手を合わせている人もいる……。
「君の心の中をのぞいているみたいでごめんね。
『聖なる光』を特定の人のために使った時って、対象者の心が伝わってくるんだ」
「俺はそんな、拝まれるような大層な人間じゃ……」
「ラス、俺はお前を誇りに思ってるよ。……上級とか闇魔法とか、心配かけやがって! お前見てると心配で心配で、気が休まらないけどよ……でもそんなのは、お前が『賢者になって魔王を倒しに行きたい』って言ったあの時に、こっちも覚悟は決まってんだ。
お前はいつだって人のために力を使ってきた。今も……止めたって、お前はやり切るんだろ? 俺もな、少しでもお前を支えられるように、そのために冒険者になって鍛えてきたんだ。低級も使えない庶民のオヤジで、お前の無事をただ祈るだけだったあの頃とは違うんだ。付き合うよ、どこまでも」
「魔法なんか使えなくたって、近所のガキ共が憧れる、カッコいい弓術の師範だったじゃんか。俺だって……今も弓を使う時には、親父の教えが心にあるよ」
そうして、2人で涙を流した。
レオ兄のことをすっかり忘れて……。
「っておい! そいつは一体何者なんだぁー! 『親父』ってどういうことだぁー!! レイン、説明しやがれっ!」
「ご、ごめん……レオ兄……」
「アハハ。ラス、良かったなぁ。温かい家庭で育ってくれて、父さん嬉しいよ」
変なタイミングで面倒なこと言わないでくれよ……。
「父さん!? 『ラス』っていうのも、一体何なんだよ!?」
「名前が似ていて、俺は嬉しいです!!」
「ラスタ様……ちょっと今はその絡み、面倒くさいです……」
名前ややこしいなと思ってはいたけど!
「……ラスタ様は色々とご存知のようだな。俺が知らないのに? どういうことなんだ!? レイン……」
ヒイィィッ! レオ兄が顔を寄せて睨んできてこわいぃぃ!
「あっあのさ、レオ兄! ラスタ様は成り行きなの! えーーっと……おっ、俺はねっ、前世の記憶があって……こ、この人は前世の俺の父親で……俺は賢者で……ま、魔王を倒したいのっ!」
うーん、なんか思わず色々言っちゃったなぁ。レオ兄、怒ると怖いんだもん。
「……魔王を倒す!? よく言った! レインの強さなら、本当にできるかもしれないなぁ〜♪ レインが賢者なら、俺が勇者になりたいなぁ〜」
あれ? 親父についての追及はもういいの? まぁ、いっか。
――ゾワッ……
「……え?」
今のおぞましい気配は一体……




