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黒い襲撃

 ラスタの部屋で、毎日夜中に来るという密偵を待ってみることにしたんだが――


「なんでレオにいまだ居るの……」


「可愛い弟を置いていけるわけがない! てゆーかさぁ、起きたらいきなりラスタ様とレインが超仲良くなってて、びっくりしたよぉ〜! しかも泊まってくなんて言うもんだからさぁ〜」


 ケレムは「うんうん」と頷いている。


虚室プライベートルーム』の魔術を解除した直後、カチコチにフリーズしたラスタが『あ……』しか言えずに事故ったから、申し訳ないけどレオ兄とケレムには一回寝てもらった。


「いやいや、レオ兄帰りなよ。明日学校でしょ!? 制服はどうするの……」


「お前忘れてないか? そもそも俺は家出中だぞ。学校の一式もちゃんとアイテムボックスに入れてるに決まってるじゃないか」


 無駄に用意周到だし、なんかドヤってるし……。家出中も学校休まないのは偉いと思うけど。


「レインも明日は貴族院に来るって言うからさぁ〜! このまま泊まれば、レインと一緒に登校できるんだろぉ〜♪ 最高じゃないか! レリドに自慢してやろーっと」


「俺を更なる喧嘩の火種にしないでよっ」


「レオとレインくんは本当に仲がいいね」


 俺達のやり取りを見ていたケレムが笑いながら言った。普段、感情表現が乏しい彼だけど、たまに笑うと癒し度が半端ない。そしてその柔らかな声が眠気を誘う……。


 夕方頃に馬車で帰宅した公爵はそのまま自室にこもり、昼間のことで疲れているのか、夕食にも顔を出さなかった。


 そんな大変な状況の公爵家に、揃って世話になる迷惑な兄弟……。お泊まりに大喜びのレオにいは、テンション高くずっと話し続けている。寝不足の俺は目をこすりながら耐えていた。待ち人も全然来ないし。


「ねぇレオぃ〜。まだ話す? 俺、もう無理……」


 目を閉じかけたその時――


 !?


 得体の知れない重い圧が、全身にのしかかる。


 何だこれ……


「レイン、どうした?」


 異様な感覚に顔をしかめた俺をレオ兄が心配そうに見つめたが、直後、彼もまた頭をおさえて苦しそうに言う。


「……っ! 何だこの感じ……」


 他の2人も同様の状態だ。窓越しに外を覗くと、無数の魔物と共に何か黒いものが地を這っているのが見えた。


「なに……これ……」


 王都は先の襲撃後に教会が張った結界で守られているはずだろ? 破られた? いや、今の魔物達は飛翔系じゃなかった。一体どうやって侵入……


 あれこれ考えながら、俺は走り出していた。


「……んっ、レインくん!? お待ちください! 俺も行きます!」


「あー、ラスタ様は俺と一緒に居てくれた方が安心か。行きましょう」


「はい!」


「と、その前に……」


 俺は床に両手をつき、公爵邸の全体像を思い浮かべた。


 ――『保護結界シールドバリアー』!


 淡い光が公爵邸を包む。


「結界を張ったから、とりあえず屋敷内には侵入されない」


「こ、これが貴方様の御力……。屋敷サイズの結界を無詠唱で瞬時にッ! 何と素晴らしい!!」


 うわぁ、都度この感じで来られたらやりにくい。貴様呼ばわりから始まって、あれこれ激しいなぁ……。中間はないの?


 って、そんなことを悠長に考えてる場合じゃないな……。


「使用人の皆さんは決して外に出ないでください! 結界を張ったので、屋敷の中は安全ですから!」


 屋敷の人達に声をかけながら外へ急ぐと、庭で警備の騎士達が戦っていた。


 背後からは魔法矢が放たれ、次々と魔物を倒していく。


 この魔力……。居るんですね、そこに。


 それにしても、この俺でも知らない魔物達って……コイツらは一体……


 まるでこの世のものではないような――。


「ラスタ様、俺の側を離れないでくださいね」


「は、はいっ」


 ……って、うわ!


「ラスタ様、危ないっ! 『火炎連弾ファイアーショット』!」


「な、何ですかそれは!! 4体同時て!」


「ゲホッ……ゲホッ……」


 なんで息苦しい?


 黒いのがさっきより増えてきてる……?


「レインくん!? 大丈夫ですか!?」


「ゲホッ……『防御盾シールド』!」


 パシュッ!


 むせて涙目になっている俺の横を、勢いよく矢が通り過ぎ、俺達に攻撃してくる魔物を倒してくれた。


 今日は珍しく魔法矢なんだな。数が多いからかな。


「今助けてくれた矢は、おそらく例の密偵だよ。今日ギルド前で犯人を捕らえたのと同じ人だ」


「ええっ!? これが!? 近くに居るってことですか!? ……ゲホッ」


 ラスタも咳込み始めたか。


 まさか……これは瘴気……? 『魔界の空気』と言われるものが何故?


 身体が小さい俺が一番不利だ。さっさと片付けないと――


 死ぬ。


 そっか、物理攻撃はダメなんだ。


 ――『保護結界シールドバリアー


 俺達2人の身体に結界を張り、瘴気から保護する。


「騎士の皆さん、聞いてください! この黒いものは瘴気です」


 ざわつく騎士達。俺は話を続けた。


「できるだけ吸い込まないように! それと、できるだけ、魔物を切り落とさないようにしてください! 腕などを切り落としたらそこから瘴気が溢れてきます!」


 切り落とすなって言ったって、騎士達には難しい戦いだ。今、一番有効なのが魔法なら、賢者である俺がやらなきゃ……!!

読んでくださりありがとうございます。

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