家督争い
「そ、それはつまり……家督争いってことか?」
「恐らく……」
「だけど、男子はお前とケレムしか居ないだろ?」
「現時点ではそうですけど。もし、スクナ側に……男子が居たら?」
「何言って……」
「曽祖父がそんな人なら……子孫だって色々やってるんじゃないですか……」
「だからってお前、憶測で身内を疑うなよ。しかもお前もその子孫だからな……」
「父はスミス家の者には誰にも頼らず、密偵を使って極秘で調べていて……しかもその人が護衛までしてるっぽくて! それが全てを物語ってます。この家の、誰のことも信用してないんです!」
てか、何でラスタは急に敬語になったの? まさか俺、助け求められてんのかな……。
現公爵は、タテス公爵ムユル・スミス。
タテスとスクナ。これは領地の名前だ。
スミスという名字が気になり、公爵家の家系図を見たことがある。
ジェラルドの正妻は当時の国王の次女・マリア。第2夫人の名前は伏せられていたが、ティア。
マリアは2男1女、ティアは1男をもうけた。
ジェラルドの跡はもちろんマリアの長男が継ぎ、公爵家の本家としてスクナ領を治めていた。
次男は早死にし、ティアの息子である三男は、分家としてタテス領を治める伯爵となった。
ところが、その後スクナ側には男子が1人も生まれていない。
そのため、次の世代ではタテス側のムユルが公爵を継ぐことになり、現在に至っている。
それなのに……スクナ側に男子が居たら、だと!?
つーか、どゆこと? 隠し子ってこと?
うーん……。何にせよ、家督の相続順位を変えるために、タテス側の男子を消そうとしているかもしれないってことか。たしかに恐ろしい血だな……。怒り通り越して、なんか震えるわ……。
ムユルのことはあの狙撃手に任せるとして、相手の年齢にもよるけど相続順位が低いケレムはひとまず大丈夫だろう。危ないのはラスタだ。
「よし! 今から俺はお前の護衛だ。……100年前のティアの分まで守らせてほしい」
「レイン様……」
「家に戻ったらその呼び方絶対やめろよ……。言っとくけど、時間止まってるからな。さっきお前が俺にしつこく問い詰めてたところから続くぞ」
「え。ここまでの流れ無かった感じで話すんですか……? 演技とか無理……」
「あー、下手そう」
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