面倒な兄達と公爵邸
20話になりました。
お読み下さりありがとうございます。
転移先はとりあえず……家だ!
ローネスト家の別邸に到着した。ここは、父上が王都で仕事をするときに泊まったり、貴族院に通う兄達が住んでいる屋敷だ。
「……」
自宅を前にして、レオ兄は無言で目を逸らす。
「えー、またぁ……!?」
俺は頭を抱えながら嘆いた。
これは……兄弟喧嘩で家出中に違いない。
次男レオ兄と三男レリド兄はいっつもそうだ。ひとつ違いのこの兄弟は、昔からしょっちゅう喧嘩している。
「あんのクソ弟がぁっ! せっかく参考になる本、貸してやったのによぉッ!!」
「レリド兄が人の教えを素直に受けないのは昔からでしょ……」
俺には2人ともめちゃくちゃ優しいのに。まぁ、喧嘩するほど仲がいい……のかな……。うん、そういうことにしとこう。
それにしても、この状況だと意地でも家に入らないよな……。
まぁいっか。レオ兄はどうでも。
「じゃ、レオ兄はこのまま置いといて、2人で入りましょうか。お茶でも飲みましょう」
「そうだね」
「おぉい! 置いてくな!」
「えー、じゃあどうするの? レリド兄と仲直りする?」
「まだしねぇ」
ケレムはこのやり取りを呆れているような楽しんでいるような……。
「なんかすみません、ケレム様……」
「じゃあ、うち来る?」
◆ ◆
――そんなこんなで、来てしまった。……公爵邸に。
「デカああああ……」
え? 家? どこまでが家??
4歳半でラストノフの記憶がよみがえったとき、前世は中の下くらいの平民だったから、改めてローネスト邸を見て、すごいところで暮らしてるんだなぁと思ったけど……
公爵邸はもはやお城だ。
いや……そんなことはどうでもいいんだよ!
それより、ここは――
アイツが暮らしてた家だ。憎きジェラルド・スミスが……!!
俺が斬られて動けなくなった後、アイツはルカを刺して殺し、その後俺もトドメを刺された。
傷は焼けるように痛くて、魔力が尽きて絶望的に身体が重く……あんなに苦しんだのに……。
俺はアイツに殺されたのに……なのにアイツはこんな立派な家で公爵として暮らし……ティアまで……。
涙が溢れて――
兄さん達が、俺を心配してるな……
……
◆ ◆
あれ……?
「……ん? レオ兄?」
レオ兄とケレムが俺を覗き込んでいる。
「はー! 良かったー!! もぉ〜、心配させんなよぉ!」
レオ兄が俺の頭をワシャワシャと撫でて抱き締めると、ケレムが俺に言った。
「レインくん。君は涙を流していた。……何があった?」
子孫のあなた方は何も悪くないんだけどね。いや、だからこそ、言えないよ……。
昨晩は遅くまで絵を描いてしまったし、最近はずっと賢者紋取得のために必死だった。10歳の生活としては無理をしていたかな。イアンさんに怒られるね。
あーあ。意識なくして公爵家で世話になるとは……不覚。
「昨日ちょっと寝不足だったかな……」
「それだけならいいが。転移で魔力も使ってるし……どこか痛いとか無いか? 大丈夫か?」
「大丈夫だよ、レオ兄。ケレム様もありがとうございます」
一呼吸おいて、俺は続ける。
「ところで、ケレム様。最近何か変わった出来事はありませんでしたか?」
「……」
ケレムが黙ってうつむいた時、誰かが部屋に入ってきた。
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