秘宝調査隊と俺の勇者様
俺達がパーティーを結成した3日後、国から『第35期 秘宝調査隊』についての詳細が正式発表された。その内容は『勇者アイテムの緊急捜索および勇者の選定』。
そもそもこれまでの秘宝調査隊は、『100年前、王都に戻らなかった勇者パーティー”リトス”が大量ゲットしたはずの数々のドロップアイテム! これらの秘宝の行方を調査・発掘しよう!』という、ふざけた宝探しイベントだった。ドロップアイテムなんて大半はアイツが持ってったよ!
今回の調査隊はそういった娯楽イベントとは違うから、冒険者ギルド主導ではなく、公の調査隊本部が設置された。
本部の運営指揮はなんと公爵家だ。
本当は公爵家率いる調査隊なんかに登録したくはないんだが、調査隊活動の名目なら1週間丸々学校等を休めるという特例措置が発出されたから渋々登録する。
地方住民は各領地の冒険者ギルドで受付できることになり、翌日の学校帰りに秘宝調査隊の参加登録をしに行くことになった。
「ハァ〜いよいよだな〜〜!」
「そうだね。遂にって感じだよね」
レガードとアシュが嬉しそうにしている。
二人とも冒険が大好き。今年10歳の登録可能年齢になると、すぐにギルドに行って冒険者登録をしていた。それ以前も、相当幼い時から家族とダンジョンに潜ったりしているので、冒険者歴はかなりのものだ。幼年時には『キッズ探検隊』にも頻繁に参加していたらしい。
キッズ探検隊――それは冒険が好きな子にとっては最高の1日となり、そうじゃない子にとってはトラウマになる恐怖イベントだ。
内容は冒険者の職業体験といったところで、指示通りに動く契約獣や擬似魔物を配置した、安全な子供用ダンジョンに入れてもらえるのだ。
俺も4歳になったばかりの時に参加させられたのだが、あの頃の自分には辛い思い出だ。グループからはぐれてダンジョン内で迷子になり……うろたえる泣き虫の前に虎のような契約獣。
恐怖で力が抜けて、成す術なし。
そこへ颯爽と現れて助けてくれたのが、当日の即席グループでリーダーになったアシュ・ナリッドだった。
スッと俺の前に立つと、入場時に説明された退治方法を信じられないほど冷静にこなした。玩具の剣を構え、魔法のような決まり文句を流暢に述べて、契約獣の動きを止めてくれたんだ。
カッコいい俺の勇者様。
アシュが本当に勇者だったらいいのにと思う反面、魔王討伐にまで10歳の子供を連れて行くのは忍びないとも思っている。もちろん勇者に選ばれることになれば、その時は……今度は俺が支えたい。
「ところでさ。昔、キッズ探検隊で会ったことあるよね」
「!? えっ!? えっ……あっ、ああ……」
あんな俺のことは、正直忘れててほしい。
忘れてて!
「あの時はびっくりしたよ。後から領主様のご子息だって聞いてさ」
ばっちり覚えてるー!! 一般人だったら忘れてもらえたかもしれないのに……。
「恥ずかしいから忘れて……」
「何で? 俺達の大事な出会いじゃないか」
こういうちょっとクサいセリフを平然と言ってのけるところが何ともまた彼らしい。




