レベル70の賢者
『多くの学問と様々な術を極め、人々からその能力を求められる者』――広義ではこれが賢者であり、研鑽を積んだレベル50以上の高位魔術師であれば賢者と名乗っていいと思う。
だが、こと魔王討伐においては、”レベル70以上、かつ『賢者紋』を持つ者”でないと、賢者とは呼べないのである。
なぜなら、紋なしでは『賢者の剣』に認められないからだ。もちろん、聖剣へのエンハンスもできない。
剣に認めてもらうという意味では、勇者と同じくらいの価値がある職業だ。
しかし、今は廃れてしまっている。
100年間平和が続いたことで不要な職業となっているのだから、喜ばしいことだ。
賢者は他のどの職業よりも強くなくてはならない。
そのために常に研鑽を積み続ける。
運命によって選ばれる限定的な存在の勇者と違い、血の滲むような努力を続ければ、多くの人が賢者になれるチャンスがある。
だけど、それがどれほど辛いことか……。
前世でこの紋を得たのは27歳の時だった。
9歳で賢者を志し、これでも早い方だった。
今世は、前世の記憶のお陰で4歳半から鍛練に取り組むことができた。学術知識もそのまま残っている。
どう考えても俺が紋を得るのが今この国で最速だから、俺がやらなければならない。
騎士とか冒険者とかパーティーとか、考えたくない聞きたくない思い出したくない言葉だったから、ずっと逃げて来たけど、それでも、いざという時には自分が『賢者』でありたい、あらねば、という気持ちは常にあった。
ノア様との特訓を経て、魔法の出力を上手くコントロールできるようになった俺は、以降も順調にレベルを上げて行き、10歳の今この瞬間、俺はレベル70を手にした。
65からなかなか上がらず、70の壁を越えるのに苦労したけど、ついにその時が来たんだ。
パーティーを組んで、逃げない決意をしたことで、この壁を破れたんだと思う。
俺はあの森に眠る”俺のための剣”を再び手にするために、どうしても賢者紋を取り戻さねばならない。
――「賢者の星よ、その紋を我が手に示せ」




