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勇者パーティーの光と影

「どういうことだよ……一体何の話なんだよ……」


 ようやく口を開いたレガードの顔が赤くない。むしろ顔面蒼白で震えている。


「レイン、一応確認するが……このメンバーに全てを話す覚悟ができているんだな?」


「はい、できています。ノア先生」


「分かった。ならば聞く。ずっと気にはなっていた。……お前は、一体何者だ?」


 さすがノア先生、単刀直入に聞いてくれる。それが今の俺には有難い。決心が揺らがずに済む。


「俺……は、『賢者』ラストノフ・クワイヤ……」


「「 ?? 」」


 ハハ……そういう反応になるよなぁ……。賢者なんてもん自体、最近じゃ伝説の中でしか聞かない職業だ。


「信じられない話だとは思うが、俺は賢者ラストノフの生まれ変わりだ」


「生まれ……変わり……?」


 ジーナがきょとんとした顔で呟く。


「100年前、俺は勇者パーティー『リトス』の一員だった。あの日、モトワールで魔王を倒した俺達は、魔王城から続くダンジョンを攻略して無事にアリタルテ王国に入った。

 数日間ろくに食べてなかったから、ツリード領の国境沿いの町『ブンガ』で食事をしたんだ。その時、町民に魔物退治を頼まれた。……魔物自体はなんてこと無かったんだ。だけど……ダンジョン攻略を経て、魔力も体力もギリギリだった。バレてたんだろうな、俺達が弱ってること……」


 静かに話を聞くジーナの目が潤んでいる。


「騎士ジェラルド・スミス。アイツが信用できない奴だってことはずっと感じてた。そういうのが分かるのも賢者の能力だ。

 けど……勇者ルカは一点の曇りもない良い奴で。ジェラルドのことも『頼りにしてるよっ!』って、いっつも笑顔で言ってた。ああ……懐かしいな、ルカの笑顔……。

 ジェラルドに『魔物退治引き受けようぜ』って言われて、ルカは『オッケー!』って、疲れてるのに笑って答えた。人を全く疑わず、いつでも人のために率先して動き、どんな苦労もいとわない。ルカは、本当に何もかも全てが、『勇者』だったよ」


「さすが勇者様、凄いな……。で、あの…… や、られたって言うのは?」


 恐る恐る核心に触れるアシュを、俺はじっと見つめた。アシュには、ルカと似たようなものを感じる。正義感が強く勇敢で、いつでも人の前に立つ。彼が勇者だったらいいのにな……。


 正直100年経った今でも……あの日を思い出すと悔しいし、許せなくて苦しい。でも、皆に話すと決めたんだ。誰も知らない歴史の真実を――


「魔力が減ってたって俺達は一流だ。雑魚の魔物どもは簡単に倒した。だけどその後、ブンガから続く森の中で……俺達はジェラルドに斬られた!! 普段なら俺達の方が強いが、曲がりなりにも勇者パーティーの一員であるアイツとは、あの時はもう戦える余力が無かった……。魔物退治をしていなければ、まだ多少は動けたんだがな……」

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