表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

放課後

作者: akiyama
掲載日:2022/12/26

校舎内に残っている人のざわめきがかすかに聞こえるが、教室の中は静かだ。

帰宅組も部活動組も早々に消えたので、当然だが。

ろうそくの火は消える一瞬前に、大きくなるという話だかことわざがなかっただろうか。

夕焼けには早いこの時間、太陽が最後を惜しむように強い光を放つ。

窓の桟、机や椅子そして鞄や上着といったあらゆる物が自己主張しはじめるのだ。

あっというまにくっきりとした影がのびていき、日差しがあたったままの部分との対比がなんとも美しい。

時が過ぎれば赤みを帯びた後は、徐々に薄まりやがて薄暮につつまれる。

ものや人の姿が曖昧になる黄昏時というやつだ。

この頃になると一気にあたりが暗くなり、一人きりでいるのが心許なくなる。

入り口にある照明のスイッチを押せば、いいだけ。それだけで明るさを取り戻せるのにしない。

光と影の競演。続く夕焼けによるファンファーレを楽しんだ後は余韻にひたっていた。

だから教室にそっと入ってくる人影に本当に驚いた。

「黙って入ってこないで。声をかけてよ」

誰そ彼と問いたいところだったけど。付き合い始めて一ヶ月の体育会系男子には理解されまい。

「いやいやあんまりにも景色に見入っていたじゃんか。声もかけずらいって!それとも遠くから一人で騒げって?」

「夕焼けに入る前が好きなの。夕焼けも好きだけど。ここ特等席なのよ」

ロマンチストっぽく主張してみる。真っ暗闇というわけではないので、近づけば誰かわかる。そんな暗さ。

それでも照明をつけないままなので、互いの姿は明確とはいえない。


「ふうん?グラウンドもみえるね?もしかして俺の練習風景もみていたりして」

「ふふん、さあね。それよりも帰ろ。驚かした罰になにかごちそうしてもらうから」

「はいはい。俺の姫は厳しいな」

そう言いながら、私に上着を着せ鞄を持ち帰宅準備を終えていた。

「思っていたよりも、早く終わったのね?」

まさか勝手に切り上げて、サボってきたんじゃないのと暗に問いかけると。

「違うよ、コーチの都合で本日は全員が早じまいを強要されたんだよ」

だから一緒に帰ろうって誘ったんだしとつぶやかれた。

「はい、手をどうぞ」と差し出される。顔も体も薄暗い中では、ぼんやりとしてみえる。

同時に美しい影にもみえて、私はなんだかうっとりしながら手をのばす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ