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15)祝勝会

 祝勝会には多くの貴族が参加していた。リヒャルトにはわからなかったが、普段は王都に来ない辺境の貴族も参加しているとのことだった。王国の竜騎士団を引退した後、地方貴族の私設の竜騎士団に雇われる竜騎士もいる。武を重んじる気風の貴族では、ヨハンのように親族の男子が竜騎士となることも珍しくない。


 王都竜騎士団の礼服に身を包んだルートヴィッヒ副団長は、同じように礼服を着た数人の竜騎士達と会場に居た。全員が鋭い視線を周囲に放ち、一種異様な雰囲気を漂わせていた。


 会場の警備は騎士の仕事だと聞いていた。何食わぬ顔で壁際に立っていたヨハンは、礼服を来ていなかった。警備担当らしい。リヒャルトが目礼すると、目礼を返してくれた。


 残念ながら参加しなければならないと言っていたわりに、ルートヴィッヒは周囲の賓客たちに丁寧に挨拶し、会話に応じていた。ただ、手にした酒には一切口をつけず、料理に関しては一切触れてもいなかった。


 リヒャルトの隣に立つ本日の準優勝者、東方竜騎士団団長も同じようにしていた。少しだけ参加してみたいといったリヒャルトに、自分から一瞬たりとも離れないという条件をつけて、参加を許してくれた。準優勝者のところにも、次々と貴族達は挨拶にやってくる。同行させてもらった以上、付き人としてリヒャルトは彼らに対応していった。

 

 団長と一緒に、なんとか宴を辞して、宴会場を脱出したころにはリヒャルトは疲れ果てていた。無駄に笑顔を張り付けていた顔が痛い。仕事中、笑顔を絶やさない父親へ、リヒャルトは軽く尊敬を覚えた。


「あー、帰るぞ。疲れた、疲れた。俺は試合より、こっちのほうが疲れるよ」

「この辺りだと、どなたかに聞かれますよ」

思いっきり伸びをした団長は、突然聞こえてきた声に、慌てて姿勢を正した。


「申し訳ありません。驚かせてしまったようですね」

既に礼服を脱いだルートヴィッヒが、見習い竜騎士の双子を連れて立っていた。

「これは、ルートヴィッヒ副団長、どうされました」

団長が驚くのも無理はない。宴会場に礼服をきて立つ姿を、先ほどリヒャルトも見ていた。


「警備です。お帰りはあちらの方がよいでしょう。庭の通り抜けはお勧めできません。警備上は万全を期しております。今日のような晩は、貴いご身分の方も羽目を外されるようでして」


 逢引きである。というより、その先もあると匂わせるルートヴィッヒの言葉にリヒャルトは赤面した。

「それはそれは、お勤めも大変ですな。同じ竜騎士でありながら客人として過ごさせていただき、誠に申し訳ない。今日はよい試合ができた。また帰ったら、指導を新たにする予定だ。ゲオルグ団長にもそうお伝えください。御前試合を、王都竜騎士団竜騎士と、各竜騎士団の団長あるいは副団長の試合に、いつまでもさせておきませんとね。あと、ハインリッヒ殿も腕を上げたな。以前お会いしたときのままであれば、リヒャルトも、もう少し良い試合ができたろうに」

「彼も鍛錬に励んでおりますから。お褒めのお言葉、彼へ伝えておきましょう」

「ところで、もう一人、去年お会いした竜騎士が、たしか、ヤーコブ殿は」


ルートヴィッヒはゆっくりと首を振った。


「では、私は警備中ですので、失礼いたします。どうか、お気をつけてお帰り下さい」

ルートヴィッヒは、双子たちを引き連れ、会場の方へと向かっていった。


 いずれ私のものとなるかもしれない。静かに語ったヤーコブの声が、リヒャルトの耳にまた聞こえた。

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